第25話 環境適応能力

 

 凄まじい吸引音が木霊する。


 およそ20玉の黒い球が素早い動きで、直角に曲がりながら進んだ。

 意識が無くなり倒れたエルシャの周りを取り囲んだ。


 すると、黒い玉に徐々に割れ目が発生し、割れ目と割れ目が繋がっていく。

 その割れ目の間から白い光が立ち込めると、周囲100mを包む凄まじいが包み込んだ。


 それは一瞬の出来事であった。


 その玉はおよそ直径70mまで巻き込む爆発だった。

 急激に熱しられた周囲に、小ぶりのキノコ雲が発生。

 爆発の威力を物語る。

 人間であれば、一瞬で木っ端微塵だ。


 ***


 ミイが翼を羽ばたかせ空から舞い降りる。

 一言も話さず、その場の状況を細かく確認していった。


 次第に覆う煙が晴れていく。

 雨は降っているが、爆発の衝撃で周囲に散らばる炎。

 爆発で黒く変色した地面。


 エルシャがいると思われる所には、まだ白い煙がたちこもり、目視できない。

 爆発の証拠だ。


 ***


「環境適応力」とは、

 環境の変化によって生じるストレスに素早く対応し、自分自身においてのストレスを克服する能力。


 どんな状況下においても、自身の身体を変貌させ、瞬時に身を守る力。

 ただ、この能力は自身が目視し、口にした物でないとその姿に変貌することはできない。


 ***


 火成岩。

 身体から内部まで、至る所が火成岩で構成された人間。


 ジェームズ(元ジェントルマン)がエルシャ、そして、共に駆けつけた執事を覆いかぶさるように爆破から守っていた。


 覆いかぶさる火成岩を解くと、いまだに気を失っているエルシャを抱え込む執事が見えてきた。


 執事はジェームズの変貌姿と、勇気ある行動に驚きと戸惑いを見せていた。


「あなたは一体・・・」


 ジェームズは、疲れ果てた表情で執事の問いに答えた。


「そいつだけじゃねーんだよ」

「俺だってやる時はやるてんだ」

「まあ、無傷じゃいられなかったが・・」


 ジェームズの身体は爆破の衝撃に耐えられていない。

 火成岩は近距離爆破で腕や足から火成岩のカケラが零れ落ちる。ボロボロだ。


 瞬時の打開策。

 口にした物に姿を変貌させられる能力。

 ダイアモンドでも口にしていれば、ここまで被害はなかったか、と自身に問いかけるが、こんな所にダイアモンドが落ちていることが、まずないだろう。

 たとえ、自身が強化な身体でも、耐え切れる限度というものがある。

 単純な話で、爆破と火成岩では火成岩の強度が劣っていたと言うこと。

 それが現状の姿だ。


 今にも意識が途絶えそうなジェームズだが根気よく自身に問いかける。

 まだ倒れるなと。


 この短い間で心の変化がおとずれたような言いぶりだ。


 だが、ジェームズの言葉とは反対に身体が地に落ちた。

 自身の火成岩が崩れ落ちた。



 《ジェームズ プロフィール》

 ジェー・ジェームズ(元ジェントルマン)(35)

 所属ラン集:なし

 役割:家の主人(一般鬼)

 能力:カスタマイズ・・・能力:環境適応

 座右の銘:悪魔族になりたーい



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