第15話 選択肢

 

 一点の曇りもない、辺りは見渡す限り白妙。

 細かな水粒や氷片の水分が空気中に浮かんでいる。

 1m先が模索出来ない程深い雲だ。


 浮遊ー

 裸足に白のワンピースを着た女性。

 黒髪ロングの靡かせながら雲の中を飛行していた。

 静代だ。


 清々しい表情。

 浮遊する楽しさを表すように回転や上昇、急降下を繰り返す。


 飛行を楽しむ最中、強風が。

 雲が風で巻き上げられ、辺りが晴れて行く。


 静代は強風に押し戻されるように動きが止まり、

 身体中を大きな影が覆った。


 頭上を確認すると、純白の鱗に鋭い目、巨大な口に牙

 気高き龍が飛行していた。

 一部の鱗を巻き飛ばしながら、長いひげを奮い立たせる圧倒感。


 真上に飛行する龍を見上げ神秘的な出会いに感動している静代。


「おー、もしかしてあれが古くから伝書に伝わる龍というものか!?」

「美しき!!」


 頭上を通り過ぎる龍に手を振って見送った。


 それから静代は飛行を数分楽しんだ後、ホップするように地へ降り立った。

 青、白、青、白。

 一面2色の色彩。

 晴天の青。雲の白。


 浅瀬の海に見渡す限りの広大な大地。

 青と白がいい比率に並び、地面が鏡のように空の色が反響して上下対照の不思議な光景を生み出している。

 自身の顔もまるで鏡のように映し出し。

 幻想的な世界を映し出していた。


 静代は眼前の光景に瞳を輝かせ跳ね回る。

 かつて、生前の静代とは違う、まるで無邪気な子供のように緊張感や責任感が心の底から抜けていた。

 前世で見たことも無いことばかり、静代的にそれがストレスの解消になっているのかもしれない。


 自身が絶命したことは覚えているだろう。

 ここがサムライの国、元のいた世界ではないということは歴然なこと。


 笑顔ー


 律儀で真面目その一辺倒だった。


 彼女にはやはり笑顔が似合う。


 そんな刹那は一瞬だった。


 静代は目眩いたー


 頭上に掲げられたネオン文字。


「あれはなんじゃ?」



 Σας έχουν ανατεθεί επιλογές

 Παρακαλώ επιλέξτε


 ①Σώμα ικανότητα

 ②Ματαίωση πειθαρχίας



「見たこと無い文字じゃ」

「・・・読めぬ・・・」 


 静代は前世では見たことの無い文字。

 なんとか文字を解読しようとするが見たことも無い文字に悪戦不当ー


 すると、天の声が聞こえた。


「すまない」


「誰??」


 静代のクエスチョンを無視。

 男の言葉にネオン文字は翻訳化されたいった。


【翻訳】

 あなたは選択肢を託されています

 選択してください


 ①幽体

 ②死者の操り


 静代は何度も言葉を掛けるが再び応答が無い。

 諦めて文字に目を通した。

 そして読み上げる。


 静代の頭に中は?だらけ


「天の声さん!? これは私に言っているのですか?」


 無視ー


「あの、なぜ質問に応答がないのですか?」


 無視ー


 沈黙が続いたことで静代は苛立ち始め、口調が強くなっていく。


「あのー! このまま無視し続ける気ですかー?」


 無視ー


 更に苛立ち。


「さようならー」


 静代は不貞腐れながら反対方向へ進行を進めた。

 流し目でネオンの文字を確認。


「これだから気の強い女は・・」


 怒り。


「何なんですかその言い方は!」

「気の強い女って・・!!」

「私はそんな野蛮な女じゃありません!」

「それに、無視をするわ、姿を現さないわ。非常識過ぎません!?」

「終いにはどちらか選べって、こんなの分かるわけないじゃないですか!」

「あなたこそ野蛮なんじゃないんですか?」


「・・・・・」

 無視ー


「カーー!!」

「もう知りません!」


 静代は再び反対方向へ歩き出した。


「・・・・・静代。お前は死んだ。本当にこのままでいいのか?」


 静代は足を止めた。


「あなた何か知っているのですね?」


「・・・」


「目が覚めた時、誰しも思うことでしょう。ここがどこなのか」

「私は自称、物事に気にしない女です。ここが何処なのかなど、どうでも良いこと」

「ただ私が既に亡くなっていることは認識しています」


「・・・」


「それでも無視を続けるようなら私もあなたを無視致しますが・・・」


「・・・いいだろう」

「シンプルに話すが、まず、非常識な対応悪かった。無視した理由は名前を明かせなかったから。気さくに話すことでリークする可能性があった為だ」


「いいでしょう」

「では、いくつか質問致します。話せる範囲で結構です」

「この世界で見かけない生き物、風景が存在します。ここは何処ですか?」


「教えられない」


「では、なぜ私のことをご存知で?」


「教えられない」


「私はあなたに一度お会いしたことは?」


「教えられない」


 静代は再び苛ついてきた。


「あなたは今何処にいるのです」


「教えられない」


「あなたのお名前は?」


「バカかお前、教えられないと一度話したろ」


「ではあなたの年齢は?」


「教えられない」


「顔立ち」


「教えられない」


「髪型」


「教えられない」


「目の色」


「教えられない」


「どんなお顔を?」


「教えられない」


「カーーー!!」

「あなた、一体なんなのですか!!」


「やはり気が強い女だな」

「お前が教えられないことを聞いてくるからだ」


「確かにそうですけど、一つも答えられないって酷いんじゃないですか?」


「お前が話せる範囲で良いと言っただろう!?」


「ああ言えば、こう言う。本当に何なんですかあなたは!」


「だから答えられないと言っただろう」

「知能が低いのか?」


「カーーー!」

「そう言う意味で聞いたんじゃありません!」


「そんなことはどうでもいい。とりあえず選べ!」

「お前の今後に関わることだ」


「今後?」


「そうだ」


 静代は再びネオン文字を確認した。


 ①幽体

 ②死者の操り


 静代はあっさり答えた。


「死者の操り・・・言葉の具体性は分かりませんが、あまり好きではない言葉です」


「なら幽体か?」


「ええ、どちらかというと幽体を選びます」


「分かった」

「では、お前には幽体の能力を授ける。そしてこれからシズと言う名前で生きろ」

「目が覚めたらまず、帝都56番街の路地裏にある古びた武具店へ行け」


「私はもう死んでいます。そんなことあなたもお分かりでしょう!?」

「どういうことなのです!? 」


「だから言ったろ。幽体の能力を授けると」

「もう一度生きろ。そして俺にその実力を見せつけてみろ」


 理解しようとするが理解できていない。

 本当にこのようなことが事実なのか?

 既に死んでいるこの身に再び生命が宿るなどあるのか?


 目映い光がシズを包み込んだー



 《シズ(静代) プロフィール》

 シズ(静代)(20)ランク外

 サムライの国 出身

 所属ラン集:なし

 役割:元将軍

 能力:プネウマシック・・・能力:霊体

 座右の銘:私はシズどす。



【NEXT】



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