第14話 決着

 

 燃え盛る黒炎ー

 右腕を取り巻くその黒炎は、腕と一体化した刀剣。

 もはや刀剣の原型すら無いだろう。

 その刀剣を眺めながら自身の力の広大さを感じている。


 一体化した刀剣を一度上下に払うと建物内に強風が舞った。

 重みがあるようで刀剣に力の大きさがはっきりと分かる。


 嘴の面は歴然なる力のオーラが身体を震慴。


 工は身体を嘴の面に向けると刀剣を真上に掲げた。

 すると、黒炎の槍が工の周囲を取り巻き、嘴の面へ狙いを定める。


 そして、高速で黒炎の槍が嘴の面へと飛ばされていく。

 不意、そして高速のあまり、擦りはするが全ての槍を躱した。


 立て続けに工は地に刀剣を突き刺すと、嘴の面の真下から黒炎の火柱が上がる。

 これも躱すが、躱す場所へ次々と真下から黒炎の火柱の山。

 連続なる火柱に左足が巻き込まれる。

 足が止まる。


 火柱が上がるごとに、天井に穴が空いていき、

 ダメージを受け続けるとともに、天井の強度が衰え、天井が嘴の面へめがけて降り注ぐ。


 工の真上に瓦礫が落ちるが、黒炎のシールドがガードし、瓦礫を灰としていく。


 嘴の面は瓦礫の下敷きになってしまった。

 身体以上の大きさの瓦礫は、その小さな身体では、ビクともしないだろう。


 嘴の面へと近づき歩くー


「哀れだ・・」

「これが貴様のEnd of life」

「あっぱれ且つ残念」

「騙し、殺害、操作」

「能力の使い様ではいい能力だが、お前は人を殺めすぎた・・・」

「ここで死ぬ」

「全くもって無様・・・」

「終わりだ・・・」


「・・・」


 嘴の面は怒りの表情を滲ませる。


「スタッスタッ・・」

 足音ー


「いや・・まだだね・・」


 歩み寄る影ー


 工の背後へ立つ少女。

 静代だった。

 表情がまるで無い。

 肌の色は白く、生気を感じられない。

 戦闘で暖められた空気によって部屋は高温となっていた為、身体の一部が腐敗し、異臭も漂う。


 静代の持っている刀剣がゆっくりと工へ向けられた。

 刀剣の刃先がと工の腹から現れてくる。


 グロく汚い音。


 工は吐血した。


 マリオネットのようにかたつく動き。

 人間ではない。

 工はあえて攻撃を躱さなかった。

 失態と償いを込めて、避けてはいけない物と認識したのだった。

 自身が奪ったとも言える命。

 決して償いにはならないだろう。

 ただ、せめてもの、せめてもの償い。


 嘴の面は自身尾の握力で面を割り、素顔をオープンした。

 セミロングの髪型に毛先は外ハネ

 パッチリした赤目に頬に一筋の刃傷。

 女の子だった。


 ニタリと不気味に微笑むその笑顔からは恨みと殺ししか無い。

 感情すらまともに纏めきれない女の子は発狂しているように窺える。


「一緒に死のうぜ! ハッハー!」


 天井が崩れ降りる中、


 ベコラス、スアレス、シュテーゲンは今にも崩れ始める城に危機感。


「工!! 城が保たない! 脱出だ!」


 再び吐血ー


 突き刺さった刀剣が鍔までしっかり刺さった所で工は小さな声で言った。


「せめてものだ」

「すまなかった・・・」


 工は膝を落とした。

 すると静代は落ちていたもう一つの刀を手に取り再び身体へ突き刺した。


 2本刀剣が工の背から腹へ。


「(形勢逆転?)」

「いや、訂正だ! お前が死ね!」

「やれ! 静代!」

「今度はそいつの首を切り落とせ!」


 静代は工に突き刺さっている刀を1本抜くと、上段の構え。


「やれーー!」


 静代は動かない。

 地に倒れたー


「どうした!?」


 黒炎が足から静代に纏い燃え盛る。


 死人は痛みなど感じず、ただひたすらに命令の服従。

 元は人間の身体、足を負傷すれば当然身体は動かないだろう。


 その黒炎が徐々に上半身へと渡っていくー


 工は刺さっている刀剣の刃を折り、刀剣を抜いた。


 燃え、灰となっていく静代をじっと眺めたー


「チッ、使えねー人形だ!」


 人間を人間と思わず、ただ自身の能力で掌握し人形の様に消費していく非人道的な行為に工の沸点を超えていた。


 工は左手に黒炎を纏わせ、黒炎のアームを作ると、そのアームで小さな女の子の首を握り、自身の目線まで持ち上げた。


「ハッハー!! 戦いは終わらねー! ここからなんだよ!」


 勢い良くしゃべる女の子からは、唾とともに罵声。

 工の顔面に付着していく。


「ここで殺したとて収まらねー! 既に始まっている!」

「貴様は震撼するぞ! ハッハー!!!」


 動じない工。


「選択肢をやる・・・」

「俺は静代の刀で2度死んだと言っていい。そして貴虎に静代は死んだ」

「この代償は大きいぞ」


「代償? 何をわけわかんねーこと言ってやがる!?」


「親兄弟子供親族それくらい賭けないと償えないだろう・・・」

「改めて問う。貴様は何を賭ける?」


「何を言ってやがんのかわかんねーが」

「俺にそんなやつは1人もいねーんだよ!」


「煢然・・・孤児か・・・」

「全くもって寂しいやつだ」


「だまれー!!」


「グサッ・・」


 工の黒炎刀が小さな女の子の腹部へ突き刺さった。


「孤独に免じてお前の命だけで勘弁してやる」

「死ね」


 心臓をひとつき

 小さな女の子は苦しみ息絶えた。


「次はもう少し品がある子に生まれ変われ」


 工はその小さな女の子から黒炎刀を抜くと、遺体をぶん投げた。


 地に伏す無惨な残骸が横たわっていたー


【NEXT】

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