第12話 亡者と結論

 

 〈城・周辺〉

 薙ぎ払い音ー

 血しぶきー


 生気がまるで無いサムライが工と静代に襲いかかる。


 周囲を城壁が囲む城の外部。

 工が静代を庇いながら、サムライから奪った刀で次々と迫り来るサムライを切っていった。


「ドシン ドシン」と大きな足音をならしながら、工の前に立ちふさがる。

 体長5mほどの肉のかたまり。

 生気のないサムライの集合体が幾つも重なり、5メートルという大きな巨人化としていた。

 腐敗した肉のかたまりから漂う悪臭を、周囲の生気のないサムライを引き寄せ、さらに混成し巨大化。


 その巨大化した肉のかたまりから幾つも振り下ろされる太刀を交わす工。

 肉が行動力を阻害をしているのも関わらず俊敏性、攻撃速度がとてつもなく早い。

 ただ交わす一方の工。

 工は肉のかたまりの動き、一太刀までの間隔スピードを何度も一瞥。


 肉のかたまりが太刀を振り下ろしたタイミングを計り、工の一片の太刀筋を肉のかたまりの首元にかました。


 太刀の入りが浅かったー

 首筋に入った刀が肉のかたまりにめり込み、刃が抜けない。

 肉のかたまりの巨大な腕が工の身体を掴み離さない。

 首の切り筋から紫煙が発生。

 瘴気だ。

 辺りに充満する瘴気を工と静代は吸い込んだ。

 意識朦朧とする静代。

 もちろん工も瘴気を吸い込んでいた。


 肉のかたまりは工を外壁へ投げ飛ばし、外壁が崩れ壊れた。


 肉のかたまりは倒れ込む静代を手に抱え、握り殺したー

 骨は砕け散り身体が歪む。



 〈工の心の中〉

 周囲は真っ暗。

 工に手を引かれる静代。


「ここはいずこです?」


 動きを止めた工。

 その反動で工の背中にぶつかる。


 静代は感じた。

 工から発する死人の生霊。

 その背中は寂しそうで切ない。


 静代はゆっくり身体を工へ寄せた。


「どうした?」


「いえ、寂しそうなお背中をしておりましたから」


「・・・」


「あなたの外側は寂しそう。でも心の中は暖かい」

「こんな方初めてです・・・」


「・・・」


「あなたは悩み苦しんでいる。背中はそうおっしゃっております」

「この先、幾つもの試練が待ち受け、いくつかの選択をしなければなりません」


「分かるのか?」


「ええ、私にはわかります」


「選択とはなんだ?」


「それは分かりません」


「・・・」


「今にも出たい出たいと嘆く心髄が、力によって被覆しています」

「ただ、あなたには強い心をお持ちになっております」


「・・・」


「だから気にする事はありません。思うままに行くと良いです」


「・・・ああ・・精進する・・」




〈城・周辺〉

 工は瓦礫から這い上がると、正面に小さな漆黒のホールを生成。

 ホールから刀を抜き出すと霞の構えにー

 手で刃の根元から先まで撫でるように触れると、黒く黒刀に変貌していった。


 傾注ー


 怒り狂う事も無く冷徹に淡々と、工は自身の力を試すように一太刀


 漆黒の斬撃ー


 巨大化した肉のかたまりが木っ端微塵に分解された。

 周囲にいる生気のないサムライまで連鎖するように木っ端みじんに

 外壁を通り越し、遠くに見える城の一部を破壊した。


 自身の力に自身を持つように頷く。


 地に倒れる静代の残骸。


 工はおもむろに感じていたー



 〈部屋〉

 嘴の面の2人は貴虎の生首をかかげ愉悦。


「この国も落ちた。次はどこの国を凌駕するねええ!?」


 身長120cmの嘴の面は羽衣の中から巻物を取り出し広げると、デジタル化した地図を眺めた。


「次はこことかどうっすか・・・?」


 地図に被るモヤ。

 迫り来る剣先ー


 揺るがない眼差し

 透明化したベコラスの刀だった。


 間一髪交わしたが、身長120cmの嘴の面をかすめた。


「あっぶねー」

「いきなりっすか?」


 立て続けにスアレスの大剣を炎のシールドでカバー。


「これヤバいんじゃねーっすか?」


「余裕だねええ」


「あいつらよく見るとメラースの団員じゃないっすか?」

「ヤバいんじゃないっすか?」


「近いうちメラースが構える国も滅ぼす予定ねええ」

「今のうちに少しでも数を減らすねええ」


「じゃあここで殺るってことですか?」


「やるねええ。やるしかないねええ」


 ベコラス、スアレス、シュテーゲンは無惨な隆景を確認すると、皆目付きが統一するように鋭い。


 怒りに徹したスアレスは怒り狂っていた。


「この行いを恥じるべきだ」

「お前らを楽には殺さねえ。覚悟しとけよこの野郎!」


 スアレスは唇を噛み締め、血が垂れ落ちる。


「うるさいねええ 帝都に牛耳られた犬どもが」


 炎の嘴の面は炎を繰り出し、自身の身体から2頭の珍獣が出現。

 全身炎で包まれたその珍獣は、身体の全ての素材が炎。

 3人を威嚇し、猛突進。

 応戦。


 立て続けに3人を囲う炎の渦。

 炎の渦から火だるまになったサムライが出現し3人へ襲いかかった。


「コイツら人間を何だと思ってやがる!」


 スアレスは火だるまのサムライを切るが瘴気が発生した。


 鼻の良いシュテーゲンは意識を崩す。



「さて、頃合いだねええ」

「ずらかるねええ」


「えっ! 結局ずらかるんですか?」


「メラース相手にしてたら大怪我じゃすまないねええ」

「ちゃんと準備してまた戦うねええ」


 嘴の面の2人は出口の扉へと歩き出したー


「スタッ」


 微量な足音。

 賭剣士が嘴の面の前に舞い降りた。

 一瞬の素早さ。

 面の2人は気づくのが一歩遅れ、賭剣士は炎の使い手の懐へ入り、刀で一刺し。

 続いて、左手を相手の胸に掲げると、そこから漆黒の光芒。


 全てを無にする波動。

 炎の使い手の上半身が跡形も無く消え去り、下半身だけが地に倒れた。


 同じくして炎の渦は消え去った。


【NEXT】

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