第6話 終幕と出会い

 

 2日後ー


 〈城内・大広間〉

 金や大理石でコーティングされた広すぎる室内。

 床や壁までも、全てが豪華に装飾され、広さは1200坪ほど。まさに、王の宮殿内。

 何本もの太い大理石の柱が立て並び、この豪華な建物を支えているのが窺える。


 1番奥の壇上に、神々しくこれまた派手に黄金で装飾された椅子。

 言うなれば、玉座。

 その玉座から出入り口まで、1枚で出来たワインレッド色の絨毯が、伸び続いている。


 玉座には、腰の高さまで伸びる白ひげを生やし、丈や袖が長すぎる白い衣装、頭に黄金の王冠を乗せた老人が座っていた。

 9代だ。9代は、椅子の手摺に肘をつき、貫禄を見せつける。

 王の背後上には、直径50mほどの透明なプレートで出来たプロンプターが吊るされている。

 そこには、ランキング上位10名のランキングと名前が記されていた。

 その中に、ランキング9位・・・沢渡工の名前が記されている。


 玉座に座る9代の前には、跪くミイがいた。

 薄暗く、顔の認識が難しい中、

 静観で重々しい空気の中で王は発した。


「最近、上位ランキングの変動が著しい。先日、帝都スカウトコロシアムにて、ランキング9位の称号を得たものが現れた。それが原因で、2日前までランキング10位であった、シレッセンが後退した」


「9代様 彼の名前は沢渡工でございます」


「知っておるのか?」


「ええ、森林の奥地で出会い、私がコロシアムへ参加させました」


「そうじゃったか」

「はてしかし、ここらでは見かけない名前じゃなあ」


「彼の前では恍けていましたが、工はこの世界の人間ではありません」


「どういうことじゃ!?」


「私の能力で確認致しました。異世界から転移された人間です」


「異世界!? そんなことがあり得るのか?」


「わかりません。ただ、事実と言えるでしょう」


「・・・」


 9代は頭を抱える素ぶりを見せる。


「工の実力は確かな物です」

「コロシアムを拝見していましたが、あの荒ましい覚醒は初めて見ました。ランキング9位に値する人物でしょう」


「ほほう・・それで、その工とやらをどうするつもりじゃ?」


「メラースへ入団させます」


「それは良いが、国内はその話題で持ち切りじゃ。どこの誰かも分からん人物なのは変わらん」 


「それなら大丈夫です。私が面倒を見ます」


 9代は少し考えて、


「・・・わかった。ではミイ、今日からおぬしが工とやらの教育係じゃ」


「かしこまりました」


 この世界にいる全て生き物が、ランキング対象となり、1位〜100位の者は身体のどこかにナンバーが刻まれ、力の大小によって自然と順位が入れ替わる。

 この世界の道理にて掟だ。




 〈城内・部屋〉

 カーテンの隙間からわずかに差し込む太陽光。

 11畳ほどの部屋を、ベッドが3分の1を占める。

 部屋内は、中世ヨーロッパを思わせる装飾。


 そのベッドに、工はぐっすり寝ていた。

 ヨダレを垂らし、気持ち良さそうに。

 服装は、黒を基調としたスウェット姿。


 工は目を覚まし、身体を起こした。


「ここは・・・」


 2日間も寝ていた工はこの状況を理解しようとしていた。



 〈城内・廊下〉

 工は廊下に出ると、


「なんだここは・・・」


 大理石や金が主な原料となって建造された建物なため、煌びやかに廊下に工は口を開けた。


 視線を光る廊下に視線を何度も向けながらも、城内を散策した。

 階段を上り、数十mほど歩くと一際輝く扉があった。

 工は気になり、その扉を開けた。

 その部屋は、自身が寝ていた部屋とほぼ同じ広さの部屋、だが、違う所と言えば、見た感じ女の子の部屋というのが窺える、ピンク色の装飾品に女の子の香り。

 さらに、鏡台には写真立てがあり、部屋の3分の1を占めるベッドがあった。


 ベッドには誰かが布団を被っているのが見え、工はなぜだか、ミイがベッドで寝ている。そう確信し、布団を捲った。


 工は、目を丸くしたー


 そこには、裸の女性が寝ている。

 セミロングの茶色い髪の毛に、Dカップ程の胸、スラッとした身体ー


 工は顔を赤くし、頭の中で可愛いという言葉が駆け巡ったー


 すると、寝ている女性は目を覚ました。

 女性は工と目が合い、一瞬時が止まったかのように、静かな時間が流れた。


 工は冷や汗に焦り顔ー


 女性は布団を身体に巻き、頬を赤くしながら、


「誰です! 人を呼びますよ!」


「ごめんなさい! 違うんです。道に迷ったというか、ここがどこなのか・・」


「ここは帝都の城です!」


「ご、ごめんなさい・・・」


 女性はいきなりの侵入者に、悲鳴を上げようと考えたが、その女性の優しさなのか、とりあえず目の前にいる男性の足先から顔まで、視線をパンアップした。


 女性は、右手の甲にあるランキングナンバーを確認した。


「あなたは・・確か、ランキング9位の沢渡工さん?」


「え・・なぜ俺の名前を?」


 工は不思議そうに聞いた。


 女性は、工だと認識したとたん、顔の表情が笑顔になっていった。


「当たり前ですよ! コロシアムでの試合、拝見しました! もう私、ファンになっちゃいました」


 ランキングを上げ有名になると、ファンが増えることも稀じゃないそうだ。


 工は2日前のコロシアムについて、脳を振る回転させて鮮明に思い出した。

 ジャブラーという牛頭人身ミノタウロスを斬り殺したこと。

 だが、この世界では当たり前なことで、コロシアムを観戦していた観客ですら、敗者に視線すら浴びせない世界だということを改めて認知した。


「工さんのこと、帝都中に広まっていますよ」

「いきなりランキング9位なんて前例がないですからね!」


「えっと・・・」


「私は帝都の王、9代の娘 アデリナと申します」


「えっ 姫様!!?」


 工は慌てふためいたー


 アデリナはその言動に笑顔で笑った。


 穏やかな時間と会話が続く中、アデリナは自身が全裸であることを忘れ、身体から布団がずれ落ち、胸が露になっていた。


 その事に気がついた工は頬を赤くし、流し目でアデリナを見ていた。


 工の異変に気づいたアデリナは、再び布団を巻いたー


 2人が照れくさそうにしている時間が続き、そして、アデリナは唐突に言った。


「あの・・・工さん・・・」

「抱きしめても宜しいですか・・・?」



【NEXT】


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