第6話 キラーウルフ退治③
芥生は走ってキラーウルフに向かっていく。
「うぉぉぉぉ」
キラーウルフは牙を剥き出して迎え撃つ気満々だ。芥生に飛びかかろうと体を沈めタメを作る。だが、突如、目の前まで近づいてきた芥生が消えた。
驚いたキラーウルフは沈めた体を起こすと自分の左横に人の気配を感じ顔を向ける。が、その瞬間、顔面に衝撃が走った。
ドゴン!
倒れながら吹っ飛ぶキラーウルフ。しかしさほどダメージがないようですぐに立ち上がる。
そして先ほど気配を感じた場所を睨むと右手を突き出した芥生がいた。どうやら彼が放った右ストレートを顔面に受けて吹っ飛んだようだ。
キラーウルフは怒りに満ちた目で芥生に向かって走り出すと口を大きく開け牙をつきたてようと飛びかかる。
ヴォルルル!
芥生の顔面に向かって恐ろしく大きな牙が飛んでくる。キラーウルフは芥生の顔面を捉えたと思ったと同時に口を思いっきり閉じた。
口を閉じると、ガキン!と大きな音がなりキラーウルフは地面に着地する。キラーウルフは芥生の頭を噛みちぎったそう思った。だが手応えがない。どうやら仕留め損なったようだ、それがわかると慌てて振り返った。
すると先ほどいた場所に芥生の姿がなくまたも見失う。と、今度は頭部に衝撃が走った。
ドン!
芥生のかかと落としが決まった。キラーウルフは衝撃で顎を地面にぶつけると目の前に星が飛んだ。どうやら今度はそれなりにダメージを受けたようでヨロヨロとフラついていた。
(はぁはぁ、イケる! 魔法で強化した俺の攻撃はこいつにダメージを与える事ができる。だいぶ体は衰えちまってるがまだまだ俺は戦える!)
息を大きく吐きながら芥生はファイティングポーズをとる。
(後、1発、こいつに攻撃をぶつけてやって弱った所を
芥生はギュっと拳を握ると横目で牧野の方をチラリと見た。牧野を腰を抜かし地面にへたり込んでいる。
どうやら恐怖で漏らしてしまったようだ、股間の部分を見ると地面が濡れているのがわかった。
(チッ 今の攻防で隙を見て逃げてくれればよかったのに……)
キラーウルフが牧野に意識がいかないよう芥生は牧野から離れるように横に移動する。
牙を剥き出しながらゆっくりとキラーウルフは芥生に近づいてくる。
(こいつ、やたら慎重に動きやがる。戦い慣れてるな…… 油断は禁物ってか)
芥生はキラーウルフの慎重な動きを見て改めて気を引き締めるとジリジリと少しずつ間を詰めていく。またキラーウルフの方も少しずつ芥生との間を詰める。
芥生とキラーウルフの間に緊張が走りしばらく沈黙が続く。が、堰を切ったようにお互いが同時に動いた。
「おりゃーー!」
「グガーー!」
芥生は右ストレート、キラーウルフは口を開け牙で互いを攻撃する。
ドン!
両者の間で大きな音がなる。どちらかの攻撃が当たった音だ。そして大きな影が後方に吹っ飛ぶ。影はガタガタと震えながら立ち上がった。
「これで終わりだ!」
影はキラーウルフだった。芥生の右ストレートが先に当たっていた。すぐに魔法の詠唱を始めた芥生は両手を前方に突き出す。
ゴウ!
燃え盛る轟音と共にボーリングの玉ほどの大きさの火の玉が芥生の両手から飛び出す。火の玉は弾丸のようなスピードでキラーウルフに激突した。
ゴウゴウと音をたて燃え盛るキラーウルフ。
「やったか……」
芥生はほっと安堵の色を浮かべると牧野の方へと向かった。
「牧野さん、大丈夫ですか?」
「……ああ、大丈夫じゃ」
牧野を立ち上がらせ腕を肩にかけると芥生は由美がいる方向へと向かった。が、その時、芥生は背中に衝撃を受けて吹っ飛ぶ。
地面にゴロゴロと転がる芥生はその衝撃に少しだけ気を失う。
「うう……」
目覚めた芥生は後ろを見ると驚くことにさっき倒したと思ったキラーウルフが牧野の首に噛み付いているのが見えた。
キラーウルフの体の周りが紫色のオーラが包んでいる。
「な…… なんだと……」
芥生は牧野を見ると彼は首から大量の血を流して虚ろな目をしていた。そしてキラーウルフは何度か口を動かすと牧野の首がボトッと落ちた。
「ま、牧野さ……ん」
芥生はなんとか起き上がって牧野を助けようとした。だが牧野の首が落ちるのを見た衝撃で動けなくなるとそのまま再度、気を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます