第2話 コボルト退治 その2

「ちょっとシゲさん! なにコボルト1匹に手こずってんのよ! さっさとこっちにきて手伝え!」

 

「由美か、お、おう悪りぃ。今いくわ」


 芥生があわてて返事をすると電話は勢いよくブチっと切れた。


「ったく、由美のやつ、人外対策課に入って一年の新人のくせに二十年以上先輩の俺をこき使いやがって」


 ブツブツと愚痴りながら芥生は坂を駆け足で上がっていくとホッとした表情で手を振っている南雲が見えた。芥生が南雲の元へと行くと近くにあるパトカーを指差す。


「おい南雲、パトカーでサミーマートまで連れてってくれ」


 サミーマートは先ほど芥生が走ってきた団地街の近くにある二階建ての大きなスーパーマーケットだ。


「え〜、サミーマート。走っていったほうが早いですよ〜」


 面倒くさそうに南雲が言うと芥生は目を吊り上げた。


「バカヤロウ、こっち走り疲れてヘトヘトなんだよ。由美が応援を頼んでんだ、さっさと連れてってくれ」


「え! 由美さん! シゲさん、それを先に行ってくださいよ〜 何やってるんですか! さっさと乗ってください」


 由美の名前を聞いて180度態度を変える南雲を芥生はあきれ顔で見る。


「おいおい、お前、まだ由美の事を諦めてなかったのかよ…… 脈ないぞ」

 

 南雲は聞く耳も持たず芥生が早くパトカーに乗るようにせり立てた。


「いいから乗ってください。置いてきますよ!」


「置いてくって…… お前が行ったって何もできねーだろうよ」


 芥生が文句を言いながらパトカーに乗ると南雲は車を急発進させた。驚いた芥生が注意する。


「おいおい、あっぶねーな。事故んなよ」


「大丈夫ですよ。任せてください。それよりも由美さん、大丈夫ですかね?」


「ああ、確か報告ではコボルトが五匹だったな。俺が一匹倒したから残り四匹か…… まあ、あいつなら大丈夫だろう。由美は人外対策課に配属されて半年で俺より強くなった魔法使いだからな。俺が着いた頃には全部倒しているかもしれねーよ」


「へぇ〜 やっぱ由美さんって凄いんですね。確か魔法学校を次席で卒業したんですよね?」


「ああ、いわゆるエリートってやつだ。だから俺みたいなロートルとは格が違うってわけよ。ふあぁ〜」


 南雲の質問に芥生は欠伸をしながら面倒くさそうに答えた。南雲はそれを気にした様子もなく構わず話を続ける。


「ところでシゲさんってお幾つなんですか?」


「年か? 45だ」


「へー、シゲさんってこの仕事、定年まで続けるんですか?」


 眠たそうな目でぼんやりと空を眺め質問に答えていた芥生だったが、その質問に少しだけ驚いた顔になり南雲の方を見て答えた。


「あん? 無理に決まってんだろう。こんな体力仕事、50、60になってまで続けられるわけねーだろ」

 

「ふーん、やっぱかなり大変な仕事なんですね〜。魔物退治って」


「ったりめーだよ。おっと、そこで停めていいぞ」


 どうやらスーパーマーケットの近くに到着したようで南雲に車を停めさせると芥生はパトカーから降りた。


「シゲさん、由美さんは大丈夫ですか?」


 芥生はスーパーマーケットの広い駐車場を見ると一人の女性がコボルト二匹と戦ってるのが見えた。そして近くに二匹のコボルトの首なし胴体が転がっている。どうやらもうすでに二匹のコボルトを倒しているようだ。


「ああ、大丈夫だ。スーパーの駐車場で戦ってるよ。ちょっと加勢してくるからここで待ってろ」


 そう言うと芥生は駆け足で駐車場へと向かった。

 



 



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