惰熟大睦 ”スーパーボランティアおばあちゃん” の正体

(オープニング)

キラ☆キラ☆キラ☆キラ〜☆


(本人の立ち姿。フェードイン)

夜摩田夜詩絵やまだよしえ 

(テロップ)

ボランティア Vol. 3088


テーレーテッテッテー♪

テーレーテッテレッテレー♫


(CM)

ドゥラァァァァァァアイィィィィ!!!


(Aパート)

 彼女は神出鬼没だった。そして正体不明である。


 ケータイやスマホの類をもたないから、すぐには居場所がわからない。


 手がかりはひとつだけ。

 日本国内で発生した災害の現場──被災地にあらわれるということ。


 どこへ行けば会えるのか。


 たとえ会えたとしても、我々のようなテレビ局のドキュメンタリー取材に応じてくれるのか。


 今年はじめ、日本中で報道された「感動的な顛末」に注目が集まったとき──善行を施したはずの彼女を不審者扱いしていた一部マスコミもあったからだ。


 彼女は、マスコミに対して不信感を募らせているのではないか。もしかするとドキュメンタリー取材に応じてもらえないかもしれない。


 われわれドキュメンタリー取材班は、ようやく彼女の居場所をつきとめた。ことし夏の記録的大雨による水害の爪痕が痛々しく残る、山陽地方の自治体。XX県黒谷町。


 話題の人だ。彼女のまわりには人だかりができる。だから被災地に足を踏み入れさえすれば、すぐに居場所がわかった。


 彼女──スーパーボランティア・夜摩田夜詩絵やまだよしえは、テレビで見るよりも、かなり小柄な女性だった。


 98歳。どこからどうみて死にかけているババアだった。

 まさに骨と皮。おなじ二本脚ならば「工事中」の立て看板よりも役に立ちそうにない。はたして、こんなクソババアに被災地ボランティアなどが務まるものか。ましてや「スーパーボランティア」と称賛を受けるほどの働きなんて。半信半疑のまま声をかけた。


「はじめまして。惰熟大睦と申します」

「はい、こんにちは」

「あのう、取材にうかがったのですが──」

「──はいはい。いいですけど、これから作業がありますから、夕方五時以降だったら、またここに戻ってきますから」


 廃校になった小学校。そのグラウンドの隅に、彼女の軽自動車が停まっていた。


「町役場のご厚意により、お許しをもらって使わせてもらっとるんです。ありがたいですね」


 被災地入りした夜摩田は──ホテルや旅館に宿を取らずに、車中泊に徹する。

 走行距離20万キロメートル。古びているがよく手入れされているように見えるこの軽自動車こそが、スーパーボランティア夜摩田夜詩絵やまだよしえの拠点だった。


(CM)

ドゥラァァァァァァアイィィィィ!!!


(Bパート)

 増水のあげく決壊してしまった河川に足を踏み入れて、漂流物をさらう夜摩田夜詩絵やまだよしえ 。記録的大雨による被災が報じられた翌日から現地入りした夜摩田は、この作業を朝8時から夕方5時までおこなっているらしい。


 作業を終えると、自家用車が停まっている廃校グラウンドに戻ってきた。


「ちょっと汗やら泥やらを流させてもらいますね」


 われわれ取材班にひとこと断りを告げるやいなや──夜摩田夜詩絵やまだよしえは躊躇うことなく着ていたTシャツを脱いで、グラウンドの水道設備で「水浴び」をはじめた。


 今回の放送ではお見せできないが──98歳の女性とはおもえない健康的な肉体美を惜しげもなく披露していた。夜摩田夜詩絵やまだよしえは骨と皮だけの外見とは裏腹に「脱いだらすごい」系の老婆だった。乳輪は艶がかっていて、ヘアは黒々としている。われわれドキュメンタリー取材班のなかには勃起する者もいた。木陰ではマスターベーションをしている者もあった。夜摩田の「追っかけ」だという。


(ここからは夜摩田夜詩絵やまだよしえの生い立ちやら、現在までの遍歴がダイジェスト方式で紹介される)

※ごめんなさい。書くのが面倒になりました。あなたもそろそろ読むのが面倒になってきましたよね? ディール! 利害の一致! by作者


(CM)

ドゥラァァァァァァアイィィィィ!!!


(エンディング)

アーアーアアー♪

アーアーアアー♪

とぅるーりーららー♪

とぅるーりーるーりゅーららー♫


「命が続くかぎり、これからもやらせてもらいます。あたし、死ぬ気がしないんですよね。はい」


 だれに請われるわけでもなく被災地に足を踏み入れ、まるで命を使い尽くすように働いて、風のように去っていく。


 夜摩田夜詩絵やまだよしえは、来月で99歳になる──


(テロップ)

製作著作:NBS

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