第2章 禁固364年目
第6話 364年目、如月
季節は巡り、俺は364年生き抜いた。
「いやいやいやいやいやいや!ちょ、え、待て待て待て、はしょり過ぎ、何もかもはしょり過ぎ!」
そもそも、何で364年も生き抜いてんの?俺の体はどーした!?何があった!?確かに、確かに30年経った時に老けてねーなーとか呑気に考えた時期もあったわ、あ、因みに看守さんから色々交渉して、鉛筆、消しゴム、小さな鏡とか衣類など必要最低限な物を貰ったりした。
って、脱線したが、簡潔に伝えるとするならば、俺は364年生きている。
と言う事は禁固365年と言い渡された俺は後一年でこの場所を出て外に行けると言う訳だ。
「外に出れるのは嬉しい、が、いや、もう364年って俺の知り合い生きてる訳ねーし、そもそも戸籍とかどうなんの?出たら出たで化け物扱いじゃね?」
この364年、独房内でそりゃあ色々あった。50年経ったくらいに、あれ、まじで若々しいな俺、とこの時点でも呑気に考えていた。俺の罪についての進展、妹、神宮司や幼馴染に、看守さん、他にも色々、ほんと色々あったが語るには何十年もかかりそうだ。
100年経ったくらいに、流石にあれ?と思い、200年で気が狂い、300年で無気力、350年で一周回っての無の境地、今はもうある意味、生きるのに疲れた感じには発展している。死にたい、訳ではないけど、いや全うに生を終わらせたいと、かなり思うが。
それでも生きてるのは、約束がある、想いがある、そして意地もある。罪が何だったのかも、解決は結局してはいねーし。364年経って解決してねェとか、諦められりゃあ楽になるだろうがここまで生きたなら解決はしてーよな。捕まった場所で少ない情報の中、出来る事は限られていた、なら出れたら出来る事もあるかも知れねェ。出れたら楽しいとか考えれば生きるのも楽しくなるかもなァ。
「よし、後…一年」
自分の両方の頬を強く叩いて、自分なりの気合いを入れる、生きる為の気合いを。気合いを入れたと同時に、朝飯が出された。364年生きてる場所は変わらず独房で、食事の出し方も物を受け取るやり方も相変わらずだ。数百年前に一度、ある看守さんと話したが、その一人だけで後は紙でのやり取り。今の現状の看守さんは歴代で良い方の部類に入るだろうと思う。
食事を受け取り、毛布の置かれた定位置に戻り、変わらずの食事方法で食べる。パンを千切ってはスープに浸け、千切っては浸けの繰り返し。…外に出たら米を食おう、こうやって楽しみな事を増やせばポジティブな思考になるだろうしな。
そう考えながら俺は食事を進めた。
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