第4話 快適な独房
「普通に考えて、たいして生活変わらなくね?」
変わったとすれば、学校に通わなくなったぐらいしか考え付かねェんだが。学校が休みの時は部屋に引きこもり、何かする訳でもなく寝て過ごす。この俺に恋人は居ないから出掛ける事も無し。今の現状は休みの時の俺の過ごし方と一緒だ。
「トイレも風呂もある、飯は勝手に三食出てくるだろ?作らなくて良いし、まじで快適じゃね?捕まってるけど」
毛布を肩までかけ、冷たい地面に横になったまま目を瞑りぐうたらな動作。妹の美月が見たらお兄ちゃんだらしない、ぷんぷんっ!なんて言葉が出そうな表情を俺に見せそうだ。
美月の表情を思い出し、自然な笑みを浮かべる。周りからは見たら悪魔な笑みかも知れないが。
365年間、生きるなんて出来ねーから、一生独房過ごし。まあ、快適快適……、
「じゃ、ねーよ!快適快適、じゃ、ねーよ!危ねェ、危ねェ…納得する所だった」
思わず起き上がり一人突っ込みを入れる、余り不自由さがない環境で、納得しかけたが、無罪な俺が納得するのが可笑しい。ちゃんと、ない頭だが使ってその罪について考えるか…俺の為に。
「………罪、俺の……」
とても真面目な表情で考える…………………が、全然、ほんと、全然、微塵も、ミジンコ程も考え付かず。考えるに打ってつけな静かな場所、考えるに快適でもある筈だが、頭は空っぽ状態。
真面目に考えれば考えるだけで、俺は眠くなる。飯食ったばかりだし、育ち盛りの俺にあの量は足りねェが、腹が満たされたのは確かだ。紙やペンがないのが困る、あれば色々書きなぐって時間軸考えたり出来ると思うんだけど。
ふと、視線を小さな食事が出るドアへと向けた。俺の見張り役が居るのは確かで、ちらっと見えた手の感じからすると女……だと。ま、まァ、童貞の俺が女語るのもちゃんちゃら可笑しいけど!
いや、俺の童貞話は一旦置いておく。俺の罪が何かを考えるのは確かに大事だが、先ずはこの独房生活において、何かしらの情報源や味方とか必要だと俺は思うわけだ。ない頭を使う割には、マトモな考えだと思いたい。
「そーいや、今は何時だ?」
目線を上げうっすらと光が射す鉄格子へ。夕焼け色に染められた空が見える、多分時間にして16時くらいか?神宮司に断罪されたのが昼食う前だろ、式典した部屋に一部生徒が呼び出されてあの茶番。
「時計、カレンダー……た、頼んだらくれたりするもん?」
上げた視線を再び、あの小さなドアへと向けた。
「物は試しに、聞いてみるか」
じゃらじゃらと音をさせ、俺は入り口が一つしかない独房ドアへと足を進めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます