其の2
水道橋に着く頃には車内の通勤客もかなり増えていて、ホームでも数多くのサラリーマンが慌ただしく行ったり来たりしておったが、これでも同時刻の都内の他の駅に比べればまだ少ないほうであろう。周一はまず売店に寄ってそこにあるのは34号ではなく33号であるのをちゃんと確かめた後、念のため売り子に「『ヤンチャプ』の発売日ってもう明後日だよね?ね?ね?」と訪ねると「でぇ~すねぇ……」という答えが返ってきたので(ちっ、何がでぇ~すねぇだっ!!)といまいましく思いながらがっかりして改札をくぐり抜け外堀通りへと出たのだった。
一週間後には梅雨明けの予報が出ているに相応しい気配で、一晩降り続いていた雨も先刻にはあがってどんよりした雲の隙間から青い空が垣間見えてきており、朝の新鮮な日差しが眩しく周囲の街並みを映し出していた。彼が通りをお茶の水方面へに少し歩いてみると、足早の通勤者たちとは裏腹な極彩色のギャルの集団がファストフード店からゾロゾロ出てくるのを見て、そういえばかなり長い時間お腹に何も入れていないのを思い出し空腹を感じて店に寄ろうかどうか一瞬躊躇したのだが、やはりいまは馬車馬的目的達成使命感のほうが脳内を占領してしまっていたので、『ヤンチャプ』34号追求の旅という或る種の自己発見の旅を優先することにした。しかし彼は、このような切羽詰まった思いに囚われている時、よくそのあせりを弄ぶかのように余裕綽々の態度で無駄な時間を過ごす癖があるのだが、そうするゆとりもないくらいに今回の馬車馬的目的達成使命感は、彼にとって急を要するものであった。
外堀通りを東へ100メートルばかり進むと、大通りの向かい側に朝日に照らされて綺麗に光る白亜の如き経堂印刷本社ビルが見えてきた。無論彼がそのビルが経堂印刷であることを知っていたわけではなく、単に看板を見てたったいま知っただけにすぎないのだが。そしてその斜め向かい、つまり道路のいま周一がいる側には日本最大手で知られるコンビニチェーンの一つがひょいと認知できた。『ヤングチャンプ』を実際に刷っている場所と、その場所に日本で最も近いコンビニ…この二つで必要充分だろうか?彼は少し考えて、ポケットからスマホを取り出しナビで集塵社の場所を検索してみた。周一の記憶通り集塵社は経堂印刷の二本裏通りである春日通りに位置しているようであった。生来が行動的でない彼はそこまで歩かずとも、印刷屋とコンビニだけで当初の目的が達せられることを願った。
するとコンビニの前に立った途端にさっきまでの期待感が薄れていき、入る前から何だかがっかりしたような気分が鎌首をもたげてくるのを感じた。確かにここは日本で一番『ヤンチャプ』を刷っている場所に一番近いコンビニであろう。だがそれがどうした?さっき自分は『ヤンチャプ』を実際に刷っている場所に一番近い駅売店に行ってそこに34号がまだ置いてないのをこの目でしっかりと確認したばかりではないか。一番近い駅売店になければ、一番近いコンビニにだってないと考えるのが自然というものだろう。彼は様々な角度からこのコンビニに34号が置いてある可能性があるかないかについて検討してみた。(そうだっ!!ここは印刷屋から歩いて一分もかからない…。すると映画のフーテンの寅さんに出てくるみたいな印刷屋のおやじが『おーい、にーちゃーん、ちょっとこれ出来たから手運びで持って来ちゃったよぉ~。で、ここ置いとくからね♪』と言って青年誌コーナーに立て掛けていった可能性だってあるかもしれない…いや、それはないか…。そ、それとも…?)彼は現実を先送りするかのように、ウジウジと考えを巡らしていたが、唐突にほぼ無意識的に店内へと入った瞬間にどっと疲れが増して「はあ…っ!!」と思わず溜息をつきながら、フラフラと漫画週刊誌のコーナーへと向かったのだった。
そして漫画週刊誌のコーナーを見て33号を確認すると再び「はあ…っ!!」と溜息をつきそこを離れ、首を癇癪起こしたようにぶるぶる振り回して、タイトスカートにケツの二山が充満しきった大柄のキリンみたいなOLがドリンク棚のガラス戸を開いているのを見たので、敵意を込めて幅寄せし女が開いているガラス戸の隙間から手を突っ込んでそのままジョージアのコーヒー缶を二本引ったくり何気ない風にレジに持って行って力強くバンと置いた。
「いらっしゃいませ、246円です。ポイントカードはお持ちですか?」
「はい、これお願いします」
「カードマネーはお使いになりますか?」
「いやいや、現金でお願いしときます…」
「袋にお入れしますか?」
「、あ、袋はお願いします…」
幾分ヤンキーっぽい目付きで接客する茶髪の若い男性店員は、一度メンチを切るように周一の顔を見た後二本の缶を袋に入れた。店員の仕草に触発され堪らず周一は大声で質問した。
「ねえ君っ!!『ヤンチャプ』34号の発売日は明後日だっけ?なあっ?今日はまだここには置いてないのか?ねえ、ちょっと…」
「あん!?」店員はじろり と周一を睨みつけ、舐め回すように彼を上から下まで見回した。「お客さん、そうだけど…。34号の発売日って明後日で今日はまだ店には置いてないけど…。ってあ、あれれれれれれれれれれれれれえええっ?」突如として彼は大声を張り上げ周一をビクつかせた。周一の身が竦んだ。「お客さん、どうしてそんなに34号が読みたいかなあ…?ああっ!!あああああっ!!もしかしてあれの続きが読みたかったりするの?あれの続きが」彼は天と地がちょうど逆さまに反転した如き目眩に襲われた。全身の力がなくなり平衡感覚も狂って転倒しそうになり、やっとレジのテーブルにしがみついた。そんな彼の心を見透かしてか男はゲラゲラとあざ笑った。(あ、あれって何だ…?あれって…!?い…一体どうしてあれって言葉などがいまここで出てくる!?)呼吸困難にもがき苦しみながら彼は目まぐるしく考えた。(どうしてこの男は、あの恥ずかしいあれって言葉などいまここで出すんだ?ど、どうしてっ……!!まるでボクが『ヤングダム』を読みたがっているのを知っているかのように!?そ、そしてまさかとは想うが、ボクが妓王と仏御前の勝負の結末を知りたがってるのをまるで知っているかのように…?そ、そして絶対まさかとは想うんだが、妓王と仏御前の戦いでは、ボクがちんちんにムラムラ感を感じながら妓王のほうが勝つことを願っていることを知っているかのように…?もしも、もしも…この大秘密を他人に知られたら、ボクは発狂してもはやそれこそ生きてはいられないぞ!!あっ…、そ、そうかっ!!そうだったのかあああああっ!!)周一はひとつのごく単純な理由に思い当たった。(そうだ。多分顔に表れていたのだ。ボクはいかにも『ヤンチャプ』の34号が待ち遠しいといった表情で若い店員に質問した。それで奴はこの客が『ヤンチャプ』の34号がそんなに読みたいのは何故だろう?と考えたのだ。そして、さらにこの客は一体どの漫画が読みたいのだろうか?と考えた。しかしよもや超能力者でもない限りそこまでボクの脳内のことを知りうるはずはないからな。従ってだからどれにも当てはまるあれという言葉で牽制を掛けてきたに過ぎないのだ!うん、うん、うん…この説明ならば至極合理的でまず納得いくものだ)
周一は幾ばくかの安心感を取り戻して、わざと落ち着きを見せながら答えた。
「うん、実はボクね…どうしても『ナノフォーマーズ』の続きが読みたくて堪らなかったの。あははっ…!!」(そうだ。ボクはれっきとした『ナノフォーマーズ』のファンなのだよ。嘘だけど。あは、あははっ…これなら誰もも文句のつけようがあるまい?わはははははははははーーーーーーーっ…!!)彼はそう言って茶髪男を睨み返し、釣り銭をポケットに入れながら悠然とレジを後にするのだった。
「ホントかな?お客さん『ナノフォーマーズ』のファンのようには見えないけど…。もしかしてぇホントはお前、『ヤングダム』のファンなんだろおおおっ?妓王のねエエエッ!?ぶあっああああああっはっはっはっはっはああああああああああああっはっはっはーーーーーーーーーっ!!」
「ひ…、ひゃゃあああああ!!」彼は女のような悲鳴を上げて逃げ出した。ちらと振り返ると茶髪が悪鬼のような形相で笑い転げながら猛然と追い掛けてこようとしていたので、彼は泣き喚きながら歩道の固い路面にしこたま尻餅をついた。だが突然レジが足りなくなったらしく、「木村くん、レジお願いしますっ!」という店長らしき男の叱責するような声が茶髪にかけられたので、彼は残念無念そうに空缶を蹴飛ばして店内に戻った。
歩道にへたり込んだまま、もうこれは人生最大の危機であったなと周一は感じた。(間違いない!やつは超能力者だ!!そ、そうでなければ…な、何故、どうしてボクが『ヤングダム』のファンであるってことが、そしてしかも妓王のファンであるってことまでが、何故わかる?単に『ヤンチャプ』の続きが読みたいって情報だけで、その推理を20本近い連載漫画の中から『ヤングダム』に特化してずばり到達させるのって絶対不可能だ!!は!?あ、あっ、或いは…はっ!!ぼ、ボク同様奴も熱烈な『ヤングダム』のファンであり、しかも自分と同種の女子の好みを持っていて、同類相憎むというか…そのための激しい義憤と憎しみ、さらにはまた激しい侮蔑の念を抱いて、さっきの悪魔じみた言動をとってしまったってことも一方で考えられる。その可能性もある…。い、いやそうに違いないが…、しかし或いは…?)
そしてもう一度店内を覗き見ると、茶髪男は何事もなかったようにレジ対応をしていて、いや…一瞬先程の奴の発言が聞き違いではないかと彼はこうキツネにつままれたのだった。それでしばらくドアのガラス越に用心深く茶髪の動作を注視していたが、男が周一のほうを振り向く気配は全然なく、ようやく彼は危機のピークがちょっと過ぎ去ったことにフ~ッと安堵の胸を撫で下ろすのだった。(ふん…たとえ奴がボクと同様に「仏御前」と「妓王」の戦いに性的なものを感じておったとしても、それで一体何ができるっていうんだ?あいつは、あの茶髪は…見た目から判断して半グレヤンキーのプーちゃんか、それともせいぜい三流私大の学生といったところだろう…。するとそれら諸々の世界一恥ずかしい思想はやつの脳内だけで完結しそしてやがては人生の終わりとともに脳内マッチ箱の世界の中で消えゆく運命なのである。だがボクは違うぞっ!ボクは違う。このボクは、脳内のこれら諸々のことをこの世に発表するための場を持っているのだから。ボクはそうするに足る職業に、職場に会社に従事しているのであるから!!ふふふ、たとえ日本…いや世界にボクと同じ嗜好を持つ人間が何人いや何十人何百人かもしかしていたとしても、ボクはその中の最高峰に君臨する帝王様なのであるぞ!!なにせボクが働いているのは、まだ世界に一つしかない、アイドルやタレントの身体データのスキャン、3Dプリント、フィギュア製作会社なんからなあああああああああああっ!!バカクソがッ!!)周一はバックにやくざがついているとの噂がある自己の職場で昨晩一晩がかりで作成した人気アイドル・佐藤明梨のデータ販売用広告写真に使う3Dプリンターで造ったフィギュアの出来映えを、しみじみと満足気に想い返した。無論そのような月並みアイドルが周一の好みであろうはずはなく、そのことに関してはまあ単なるクリエーターとしての満足だった。
周一が表向きは堅気の芸能プロダクションであるこのいかがわしい会社に入社したのは2年前で、新聞の『求むコンピュータ技術者。芸能人、アイドル、モデル等の身体をスキャンしそれをもとに3Dモデリングする仕事!!』という求人広告を見て応募し、面接でいかにもその筋系の臭いを纏った危なっかそうな社長の顔を見て尻込みしかけたが、彼の内に密かに眠っている或る種の自己実現を果たすためには世のあらゆる仕事の中でもうこれこそが一番近い仕事のようにも脳内直感で感じ取ったし、給料も彼の年齢にしては相当破格のものであって、また恐そうなのはその社長だけであり他の社員は周一と同じいたってごく普通の堅気の人間の様子だったので、まさか犯罪に手を染めさせられるようなことにはなりはしないだろうと軽く見積もって、入社を決意したのであった。入社してみると恐らく組関係者であるその社長はある一点を除いては仕事の内容に口を出すこともなく、まあ職場の雰囲気は世間並みのそこら辺りの職場とほとんど大差ないたものであったので、いまでは世ごく普通のサラリーマンとそう変わらない堅気の感覚で毎日を送っているというわけなのである。
そしてそのある一点というのは、3Dデータをスキャンする少女モデルの選定に限っては、何故かこの仕事のみ社長が独断で自らの趣味で行って、それに関しては誰であろうが一切の反論は許されないという点なのであった。この点において周一がデータを採取したい少女モデルの好みと社長の趣味は決定的に異なっており、ここが己の自己実現のためには最大の障壁になっていると彼は感じていた。その社長の趣味というのが、『涼宮ハルヒの憂鬱』や『けいおん!』などに出てきそうな典型的な萌え系なのであり、その系の少女などにはまさに一点の愛着すら感じることのできない周一にとってこれは非常に憤懣やる方ないことであった…。だが反対意見はもちろんのこと自分の好みを口にしただけで、その社員がどういう運命を辿るか…、「あの実はボク、クイズの『Pさま』にレギュラー出演してる室井美樹ちゃん萌えなんでありまして、彼女の身体を3Dデータ化したらどうかと思うんすけど…。それって姫川さんどうですか?」と以前社長に直訴した石黒という男は、次の日から姿を見せなくなってしまったのだが、まず消されてしまっに違いないと周一は推測している。
社長姫川の趣味の押しつけにより日々魅力ない3Dデータ造りばかりに追われている周一ではあるが、彼の嗜好とは裏腹に会社の作る3Dデータは意外にも非常な売れ行きを見せているのであった。彼の入社以前にはこの会社、3Dデータからおこしたフィギュア自体を販売しておったのだが、その時には意外にも売れ行きは芳しくなかったらしい…。一見3Dプリンターがなければ全然意味を持たない3Dデータよりも、むしろそのデータからおこしたフィギュア自体を直接販売したほうが売れ行きも上がりそうに思えるのだが、まあ価格が最低でも一体一万円前後とかなり値が張ったものであったのと、本当にコンピュータでアイドルの身体を正確に再現したものなのか?どこかに人の手による加工が加わっているのではないか?という消費者たちの懐疑心もやはり根強くあったことがその理由だと思われる。その点データ販売ならばアイドルの数百にも及ぶポーズをパック化したものであっても、せいぜい3千円くらいで購入できるし、モデリングに使う材料も最近は割と低価格のものが出回ってきているので、プリンターさえ持っておればその中から自分の気に入ったポーズのフィギュアを何体でもモデリングできるというメリットもあったのである。重ねて最近ではそれに加えてアイドルたちの3D動画も販売していて、この基本動画からコマ割り感覚で一体一体アイドルをプリントしてゆけば、ユーチューブなどに投稿するような、面白動画の撮影がまさに可能なわけなのである。また多数のポーズからパック化されていないポーズを非常に正確に再現することのできるソフトもちゃんと別途販売しておって、それを使うことによってそのアイドルたちのどんなポーズでも作成することができ、これによってユーザーはまるで映画監督にでもなったようにアイドルにやらせたい放題どのような役でも演じさせることができるのである。このデータ販売当初は購入者のほとんどがオタクばかりでありそれでも非常な売れ行きを見せていたが、徐々に顧客層が一般消費者のほうへと拡がっていって品切れによる再生産まで相次ぐようなことにもなった。また数年前起こった局部の3Dデータ販売による逮捕事件をきっかけに、抜け目ない姫川は当局の目もそこの所はしっかりと計算に入れており、3Dデータ測定の際にはアイドルたちの局部に薄いペールオレンジのフィルムを貼るという用意周到さなのであった。
顧客層が増大したもう一つの理由には、元コンピュータエンジニアであった周一の功績も大きく関与していて、別売ソフトに『リアル破壊シミュレーション』というすこぶる斬新かつ画期的な機能をつけたことによる功績大である。この機能というのは、コンピュータ中の仮想フィギュアに対してまるでリアル人体破壊を行っているが如き破壊を加えるものであり、マニアの間では本物と寸分変わらぬ仮想アイドルたちを切ったりバラバラにしたりすることのできるこの機能はそれこそもう熱狂的に受け入れられ、間もなく『斉木麗奈ちゃん』を手榴弾で爆破させる動画とか『佐伯ふわりちゃん』の股を引き裂く動画などが次々とユーチューブにアップされるようになっていったのである。中でも周一がこのソフトを開発するに当たって一番苦心したのは人体の股のリアル破壊に於いてである。当然人間の股がどのように引き裂けるのかそれまでまったく知らなかった周一は 蛙やヤモリの股を数千回ほど繰り返ししつこく引き千切って試してみて、生き物の股が裂ける際に共通したある独特の法則を見い出し、人体破壊のシミュレーションに実戦応用したというわけであった。周一は数多くのそれらアイドル破壊の動画がユーチューブに投稿されているのを見ては内心得意げにほくそ笑む一方で、何かまたすごい物足りなさで心が空虚になるのを禁じ得なかった。(萌え系の股なんかを引き裂いてみたところで一体何が面白いというんだ!!あいつらどれもこれもみんな同じ顔をしていて、男の下腹部を野獣の如くたぎらせる性的魅力など微塵もないではないか!そもそもふわりちゃんとこのみちゃんの間に一体どんな差があるっていうんだ?だけどよくわからんが、オタクに言わせると、「ふわりちゃんステキ萌え~♪このみはバカちょんの腐女子」といった差があるらしいからホントのビックリ仰天だ。そんな顕微鏡で見なければわからんような細かなニュアンスをネチネチ問題にしているオタクってやつら、すっかりバカげてるぜっ!!)さらには、投稿されているそのソフトでつくられたアイドル破壊動画の全てが単に破壊するだけのものであって、壊し較べたものが見られないことも不満であった!なんで人体の壊し較べに誰も思い当たらないんだろうと考えてみるに、それは単純にやつらの想像力の欠如から来るものであると、周一は世のオタクどもの脳内世界の貧困さに激しい侮蔑の念を抱くのであった。
実際周一が夢にすら見る対決は萠系ギャルたちの対決などでは無論なく、言ってみれば『ヤングダム』の妓王と仏御前の対決に典型的に代表される妓王系女子と仏御前系女子の対決なのであった!ああ…もう、これこそがこの世で最もシリアスな救いようのない劇的対決であり、さらにはこれこそが彼が究極的に意図しているる人類文化にとってのエポックメーキングとなりうるかも知れない途方もないパワーを持ったものであると周一の脳内は確信に満ちているのであった。
意外なことにこのような周一にもいま一名の恋人とでもいえるであろう女性がおって、本日は里帰りのため彼女は自宅のマンションには不在の結果であるが、普段ならばこのような残業開けの日などは彼女の部屋に直行で泊まり込みに行って、日々の仕事からの束の間の乖離を図るのが常であった。加川稚絵という名のその恋人は、もちろん妓王系の範疇に彼が分類するのにやぶさかでない外見的特徴を充分備えた女子であり、彼は初めて稚絵に出会った時、実に彼女を妓王度79%と査定したのであった。そのようなわけだから、その後徐々に親密さが増していって初デートをした折りなどには、すっかり有頂天になってしまってもう他者に対して鼻高々の絶頂であった!!何しろ妓王度79%の女性と親しくなれるなんて、彼には何か現実離れしすぎていて実感がわかないほどのすごい経験だったのである。何しろ妓王度79%の女性というものは彼の市井での狭い見聞によれば、およそ1万人に一人いるかいないというほどの希少価値であったのだ!!もちろん彼の永きに渡る行き当たりばったり的な見聞の中にはこれまで2度3度妓王度80%超えの目撃体験があったのだが、そのような街でチラッと見ただけの女性と周一などがよもや仲良くなれるはずもなく、稚絵はもう彼が男女の仲になること可能な、限界ぎりぎり一杯の最高の女子であることは間違いなかったので、稚絵に対しては交際のあらゆる面に於いてちっとも不満がないのであった。ただ稚絵に対する周一の気持ちには純粋な恋愛感情ばかりとはいいきれず、願わくば仏御前との対決という奇妙な自己実現のために利用してやろうという隠れた打算も、心の中に見え隠れしていたわけであったが…。
まあそのことは別にしても彼は稚絵と一緒に街歩きするのが大いなる愉しみであった。何しろ稚絵ってのは他ならぬ妓王系の女子なのである!つまり彼にとっては女子中の帝王といえる!そうした周一の優越感は街で見かける他の女性と稚絵を比較する時こそ最も顕著に顕れたのだった。そしてその比較には彼の思考特性から3つのパターンがあり、まず第一に約99%の女性は、彼にとって何とも形のいびつな人型をした豚肉の塊の如く見えるということであった。そのような稚絵との比較によって街行く女性たちを上から目線で眺める時、稚絵の顔に何となく優越感のようなオーラが立ち籠めていることを周一は見逃さなかった。二つ目は妓王度80%超えの女性であるが、運のいいことにこれまで稚絵を連れてのデート中にそのような女性と出くわしたことはなくて、その比較はあくまで周一の脳内可能性の中に於いて留まっていた。そして三つ目だが、これは他ならぬ仏御前的な女性との遭遇およびその際に無意識的に彼がやってしまう稚絵との露骨な比較であり、ごく稀にそのような状況に陥った時、ついオーバーアクションになってしまって振り子の如く頭を動かしながら大袈裟に両者を見較べてしまう彼の癖に対して、それは稚絵にも敏感に感じ取られたのであろう…彼に対して何やら不審の眼差しが向けられるのであった。そしてその時の彼の挙動から、自分との比較対象となった女性たちに敏感に何かある種の共通点を見出して、それは相手が仏御前であるだけに、稚絵の目にある種いじけたものが宿っていないか、恐れのような色彩が見え隠れしていないか?ということに彼は最も注意をそそいで見ていたが、そのような感じは微塵も見受けられず、自分の妓王的なるものと仏御前的なるものとの比較の仕方の中に何らかの勘違いがあるのではないか?と自信疑問を問い掛けることもしばしばであった。
既に大通りは通勤の人通りもとっくに絶え、梅雨明けの明るい日差しが正午間近を告げるようにほぼ真上から照りつけて、うだるような午後からの暑さを予感させるかのように街並みに眩しい輝きを与えていた。出し抜けに周一の目の前を一般的には美女の範疇に分類されるであろうアパレル系らしき美女が足早に通り過ぎていったが、そのような有象無象なんぞには目もくれず、彼はは道路の向いに建つ経堂印刷本社ビルの正面出入り口にただ一点視線を注いでいた。先程からかなりの時間コンビニ前の空缶ボックスにもたれかかって、頻繁に煙草を吸いながら人の出入りを注視していて、印刷会社の社員らしき作業服や背広姿の男たちの顔を一人一人見定めては、何か心に引っかかるものがあるかのように、うじうじオドオドした感じで首を横に振っていた。どの顔も彼の用意している「『ヤングチャンプ』34号はもう出ていますか?」或いは「『ヤングチャンプ』34号の発売って確か明日でしたよね?ところが今朝何とボクはそれを読む者を電車の車内で見かけたのですが。それって校正刷りのようなものなんですかねェ?」という類いの唐突な質問に対しての受け入れ体制が出来ている善人顔(?)にはとても見えなかったので、声を掛ける勇気が何とも出ずにウジウジしていたというわけである。周一はそんな優柔不断な自分が実に情けなくもなりはしたが、一方では考えてみればこんな恥ずかしい質問をいきなり赤の他人の他人にぶつけてみることって、彼に限らず誰だって相当勇気のいることではあるだろう。と自分を慰めた。またおそらく周一の『ヤンチャプ』34号が読みたい理由というのは、百人いれば百様あろう理由の中でも最も恥ずかしい部類に入るものに違いなく、彼の異常な躊躇ぶりも致し方ないことなのである。
不意に彼は、街中であるのも忘れたかのように己が下腹部を思わず強く押さえながら、いままでに読んだ漫画に登場してきた妓王的傾向を持つ女子キャラたちのその作中でのポジションを一人一人思い起こしていった。ここで重要なのは、この妓王的な視覚傾向を持つ女子キャラたちに共通して言えることが、みなそこそこに強いということなのであった。だがあくまでもそこそこでありうんと強くはないのだ。したがって仏御前以外の系で妓王をおびやかす女子キャラの視覚特徴は実にさまざまな漫画に点在して見られはしたが、作中での展開はどうあれ、周一の脳内対決シミュレーションに於いては仏御前ほどの絶対的圧迫感を持つものではなかったがために、それらに妓王を以て周一の脳内ではどうにか打ち勝つことができたのであった。ではこのうんとではなくそこそこに強いということであるが、一体どういうことなのか?まあそれはある時にはヒロイン或いはうんと強い女性キャラとの真剣勝負にてほぼ互角のいい戦いぷりを見せていながら、 あと一歩というところで最後の一踏ん張りがきかずに敗れ去ってしまうという展開、またある時に於いては格闘の達人という触れ込みで登場しているにも拘わらず 迂闊にもほんのちょっとした油断から他愛のないザコキャラ如きの敵からすらもピンチに陥れられてしまい、男性主人公つまりヒーローに危機を救われるという実にだらしなくもおそまつな展開によって示される類いのものなのである。一般的には漫画で描かれる妓王的なキャラの役どころとはまあ概ねこのようなもので、少なくともメジャーな作品に於いてはこのポジションから外れて描かれていたケースは一例もないといってもいいくらいだった。具体的にいくつかの例を挙げるならば『はるひとネコ』での拳法達人墓守日輪がほんのちょっとした油断からほとんど雑魚キャラに近い家政婦の霊如きに身体を乗っ取られてピンチに陥る「しまった!」で表される例、『ハレルヤ』の最強ヤンキー女エバとアケミのタイマンに於いてアケミは圧倒的に有利なマウントポジションを取りながら、見開きページで描かれるほどのエバのパワーに満ちた死に物狂いの抵抗に跳ね返されぎりぎり紙一重土性骨の差で敗れてしまったというもの物悲しい例、『明後日輝け!』の異種格闘技戦でヒロインが「こういうやつが一番強いんだ…」と最初内心感じていたはずの軽量級キックボクサー戸川順子が、飛び入りで参加した謎の覆面女に寝技に入るや否や為す術もなく子供扱いの如くシメオとされてしまった、それはそれは…哀愁を誘う例など、キリがないので他は割愛するが、要するに周一は日本の全商業漫画における妓王的傾向のキャラがうんとではなくそこそこに強い例を一つ残らず脳内にインプットしているのだった。
もちろん彼が日本の全漫画作品を読んでいるなんてことは全くなくて、例の書店やコンビニでの高速パラパラめくりに於いて妓王的な女子キャラが出ているかどうかをチェックしてそれが出ている漫画だけを拾い集めて読んでいたわけであるが、その高速チェックは全漫画に及んでおるからして結局日本の商業作品での全ての妓王的キャラを押さえていたということになるのである。たたひとつ、彼の日本の全商業漫画に於ける全妓王的キャラの完全チェックに於いて、妓王の強さがうんとではなくそこそこであるという点で一つの例外も見られないのは勿論であるものの、これが発行部数の少ないマイナー週刊誌に掲載されている漫画作品の中に於いては、概ねはメジャー作品と同一であるものの、詳細に目を向けるならばいささか異なった様相をも呈しておって、周一の胸をある種の期待感に「キュン♡」とさせてくれるような展開も作品中に極僅かながら見受けられたのである。例えば20数年も以前『ヤングプリンス』に連載されていた『クラブキシリトール』の主人公日暮美樹はもう限りなくそのものに近いともいうべき特上の妓王的純度を持つにも拘わらず、何と作中最強!という設定になっておって、当時まだ小学生であった周一は宿題もTVゲームもそっちのけでもうこの日暮美樹にむちゃくちゃ傾倒し、バイブルの如くにこれをむさぼり読んだのであった。では日暮美樹最強だったならば、当時子供心に芽生えかけていた性的むらむら感もその時点で満たされたかと言えば、全然そんなことはなくてスタートラインにすら立つこと適わなかったのであった。ひとつにはこの作品には登場人物の種類が絶対数不足していてライバルに価するような相手がまったくいなかったこと。いわば美樹はザコしか登場しないほんの狭い世界での最強者だったというわけで、そのような限られた最強者であってはいかに子供ではあっても物足りぬと感じるのは当然のことであったろう。いまひとつは水泳部の主将日暮美樹は喧嘩でこそ一番ではあるが肝心な水泳対決ではふいに登場した典型的なヒロイン顔の少女に負けてしまったことである。勿論周一は当時から水泳よりも喧嘩にこそ重きを置いていたので、水泳の対決に敗れたこと自体そう大したことだとは思わなかったが、 ヒロイン顔に負けたということが、これはもう何とも悔しくて固く張り切った男根からアドレナリンが高圧でピシューーーーーーーーーーーーッ!!と噴き上がる程憤懣やるかたない思いであった。ヒロイン系ってのは、妓王系がもし負けると相手が仏御前系だった場合の次に周一が悔しく感じる視覚傾向を有するキャラであり、読んで字の如く大概ヒロインそのものであるがため各種表現媒体内での一種の社会的常識によって身を守られ、常に安全圏に身を置いておるが故に、これを妓王系が打ち破ることは並大抵ではなく、危惧していた通りに逆に打ち負かされたことは彼にとって「うああ、やっぱりいっ…もうっひいっ!!」と身震いするほどの男根潮吹的顛末であった。ヒロイン系は大概ヒロインであって、たとえヴィジュアルだけがヒロインで実際のヒロインではなかったとしても、最強というよりかは無敵の存在なのであり、これを妓王系のキャラが倒すなどということは視覚的に無理がありすぎるために仏御前系の次に妓王系にとって恐るべき相手であると周一は本能的直感的に位置づけていたのだった。ではこの、ヒロインが最強ではなく無敵であるとは一体どういうことなのか?これはまあ非常にわかりづらい難解な説明にはなろうが、漫画などの物語に最強として出てくる女子は、たとえヒロインが別に存在していたとしてもやはり仏御前系なのであり、ヒロイン系は一番じゃなくても作中に於いて絶対に負けることはないという意味に於いてなのである。それだから、一つの作品にヒロイン系と仏御前系が同時に存在している場合、常に仏御前的なるものはヒロインを導く者またはヒロインを陰ながら支援するものとして描かれ、勝ち目のない仏御前との直接対決などはあり得ず、また事実そのような対決は一度も描かれた試しはない。このように漫画での女性のポジションをその系毎にしつこく事細かく見ていけば、一見「このキャラがこんな行動を!?」と意外な展開に満ち満ちている漫画界であるが、その実いかにも見た目そのままの想定範囲内の非常に幅の狭い役割しか与えられていないことが見えてくるのである。しかも男子キャラに比べると、女子キャラは見た目による活躍の押さえ込みの度合いがこれ甚だしく、彼女等のポジションがその記号性を超える場合があったとしても、その逸脱のされ方はやはり想定の枠内なのである。
このように妓王系、仏御前系、ヒロイン系の各キャラたちは、厳格なヒエラルキーによつて作中の役割分担がカチカチッと固定されており、その強さのランクは仏御前系、ヒロイン系、妓王系の順であるのが通常というよりもまあほぼ全てなのである。その点に於いては『クラブキシリトール』は肝心要のところではメジャー漫画と同様の過ちを犯しているものの、妓王系を最強女子にした点、また妓王系をヒロインにしヒロイン系を脇役にした点などに彼の期待する類稀なる独自性が見られており、それだから周一はこの作者を一目も二目も脳内で高く評価しているのであった。
さらにもうひとつ別の例であるが、周一を束の間胸「キュン♡」とさせてくれたマイナー作品に女子格闘漫画『舞奴』がある。この作品のヒロイン本田舞奴は典型的なヒロイン系ではないもののやはり相当なヒロイン系のヴィジュアルを踏襲した行ってみれば準ヒロインを想定させる範疇に属する主人公であり、また憎たらしいことに類い稀なる才能に恵まれた天才空手少女というほぼ作中最強女子の触れ込みによって描かれていて、だがただそれだけならば周一はまず歯牙にもかけないほどの漫画であったのだが、何とこれに出てくる妓王系の相川綺って少女が本田舞奴との戦いに於いて勝ってしまうってのだから、もはや当時の周一にとっては鬼気迫る人生最大の出来事に違いなかった。何しろ主人公が負けてしまうってのもそれまで一度も目撃したことのない前代未聞のことながら、そのヒロインを倒した少女が妓王系というのだから、これはまさに周一にとっては何とも天地がひっくり返るこの世の終わりに匹敵する驚愕すべき大事件だったのである。しかしながら周一はこの漫画に満足できない点が一点あった。なるほど、妓王系相川綺は確かに作中ヒロイン本田舞奴に勝ちはしたが、舞奴に勝ったのは何も綺ばかりではなく、エライネゴゼンってのもそうだったからである!ああ…エライネゴゼン、これはやや肌が浅黒くはあるがれっきとした仏御前系の完璧な強敵であり、周一の見立てでは仏御前系ではかなり下の部類に属するものではあるものの、しかし何といっても一応は仏御前系であるのだから、仏御前特有の揺るぎなさをそれはもうプンプン漂わせており、周一は綺とエライネゴゼンを長い時間見較べては、無性ないたたまれない思いに自分の股間を拳固で潰れるほど強く押しながら狂おしくのたうち回ったのである。そして物語の展開はヒロインに勝った者同、綺とエライネゴゼンとの戦いに当然至るわけで、もちろん話も実際そっちの方向に進んでいくと思うのだが、どうしたことか両者の対決を直前にしながら連載は突如として終了してしまったのであった…!まず、これはホントにどうしたことか?なのであった。ホントにどうしたことか……………?周一はいろいろと考えたのであった。そして考えた末に、どうもその展開は作者の意図的なものなのか、不本意ながらの自然の成り行き上のものであるのかはわからぬが、どうも綺の勝利っぽく終わる方向に話がはまり込んでしまいそうなので、 いくら何でも妓王系が仏御前系に勝ったりなどしたらこれまでの漫画の視覚的慣例上非常にマズいのではなかろうか?と危惧しての物語の突然の打ち切りか、それとも妓王系が仏御前系を倒すことはいくら何でも見た目無理がありすぎるわけで、作者自身どのように描けばいいのであろうかという脳内での処理がうまく行われず、つまり想像力の欠如による断念なのか、そのどちらかであろうと推測したわけではあるが、周一は、もう見た目無理がありすぎるからこそそれこそ読者の下半身を力一杯奮い立たせるてくれるわけで、そこにこそ人生最大の面白みがあり、もうほんとに百億の苦難を乗り越えてでもいいから、妓王系の勝利へと果敢に邁進して欲しかったのにっ!と、作者に対して激烈な不満の念を禁じ得なかったのであった。
このマイナー漫画最大の作品と周一が見極めた『舞奴』にしてからが、あと一歩というところまで迫りながらも実現に至らなかった、妓王的女子による仏御前的女子打倒という大テーマの達成はメジャー作品にいたっては以て知るべしで、それだからこそ恐るべき動体視力によって先ほど電車の中で彼が垣間見た仏御前の首が胴から切り離された見開き2ページに渡る大シーンは、それこそ地球の自転の向きが変わる以上にもはやあり得ない目撃実体験で、彼にとってはまことに驚愕!驚愕!驚愕!驚愕の瞬間だったのである。
その驚愕からまだ醒めやらぬ心臓のかす気かな鼓動を自覚しながらも、経堂印刷の正面出入り口にぼんやりと目を向けていた周一は、そこから出てきたグリーン系のポロシャツを襟を立てて着た中年男を見て何かちょっと、いや大いにピンと琴線に触れてくる節があった。50歳前後とおぼしきその男はA3サイズの濃いネイビーブルーの手提げを下げてほんのちょっと思い出し笑いともとれる笑顔を浮かべながら楽しげに登場したのであった。年齢の割に腹は出ておらず、やや細身の尻のラインが一度会ったことのある稚絵の父親のそれにもよく似ていて、妓王系の女子ってのはこういう男親の遺伝子から具合よく発生するのかも知れないなどと、そのどこかに連想させる雰囲気を感じて、もはや質問をすべき人間は彼しかおらず、そのタイミングはいまこの時であると、周一は確信した。
彼は車の来てないのを確認して早足で道路を横切ると、歩幅をうんと広げて歩いて男との距離を縮め頃合いの距離まで迫った時、最後のためらいを破れかぶれともいえる強靱な精神力で捨てて声を掛けたのだった。
「あのー…ち、ちょっと、いいっすか?」
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