第41話 露呈
気づくと、俺達への攻撃は
魔物達の巨体は、すっかり小さくなり、俺の腰の高さほどまでに縮んでいた。先ほどまで俺達を見下ろしていた魔物達が、
その魔物達の後ろには、先ほどまではなかったはずの何かが並んでいた。
魔物達から視線をはずし、ふと前を見ると、やたらと見晴らしがいいことに気づく。魔物達の壁がなくなったとはいえ、なんだ、この開放感は。
遠くのほうに、町や森、海岸線まで見える。
再び、魔物達に視線を落としたとき、その後ろに並んでいるものが、家屋の屋根であることに気づいた。
魔物達が縮んだのではない。俺が巨大化したのだ。
嫌な予感がして周囲を見てみると、俺の
おそるおそる自分の手を見てみると、そこには、
変身が、解けている。
周囲の魔物達は、今もなお、無言のままこちらを見上げている。驚きのあまり、声も出ずに固まっているらしい。
そうだ。町はどうなった。
何体もの魔物が、町の奥へと侵入していったはずだ。どの程度の被害が出ているのだろう。
町の奥へと目をやると、そこには、想像以上に多数の魔物がひしめいていた。大通りも、家々の隙間も、魔物でぎっしりだ。人間よりも、魔物の数が多いといえるほどに。
こんなに多くの魔物が侵入していたのか。
驚きつつも、違和感を覚える。
おかしい。こんな数の魔物が侵入したとは思えない。しかも、大量にいる魔物のうち、大半が、まったく見覚えのない魔物だ。
その魔物達も、みんな、一様に驚き、声を出せずに固まっているようだった。おそらく、上空のシリアルキラーもだ。
いったい、何が起こったのか。
「トゥルーの鏡か」
俺のすぐそばで、真紅の魔物は、このときを待っていたかのように言った。
その魔物は、全身が真紅の
「あの、クレナイさんですか?」
「ああ。クレナイは偽名だがな。俺は、デスクリムゾン。元魔王だ」
「え! 元魔王!? 元勇者じゃなかったんですか」
「嘘に決まってるだろう」
ええー。どいつもこいつも、変身して嘘ばっかりつきやがって。
「フレーク。そういうお前こそ、勇者じゃなかったのか」
デスクリムゾンに言われ、自分も変身した嘘つきであることを自覚する。
「あ、あの、その、フルグラといいます。現魔王です」
「俺の後輩ってわけだ。最初にストラリアで会ったときから、こうなるんじゃないかと思ってたよ」
やはり、あのときも、今も、正体はバレていたのか。
いや、そんなことより、話にまったくついていけない。現状をどう考えたらいいのか。
敵側の魔物は、今は驚きで固まっているが、間もなく我に返り、俺達や町への攻撃を再開するのではないか。
いや、俺が勇者ではないことが分かった今、攻撃は止まるのか。
もし攻撃が再開された場合、戦力的にこちらが不利であることに変わりはない。
変身していようがいまいが、戦力に変化はないのだ。そして
「こうなった以上しかたない。反撃開始といこうか」
デスクリムゾンは自信たっぷりに言い放った。
この自信はどこから出てくるのだ。実際、ついさっきまで殺されかけていたのだ。戦力差は、そのときから何も変わっていない。
「安心しろ。あっちの魔物のほとんどは、俺の仲間だ」
俺の不安を読み取ったのか、町の奥へと視線を投げて、デスクリムゾンは言った。
「どういうことだ!」
上空からシリアルキラーが言った。
その気持は痛いほど分かる。俺だって、今まさにそう思っている。
「この町の人間の多くは、変身した魔物だったってことだ」
「ええ!」
俺とシリアルキラーの声が同時に響いた。
「誰かが、トゥルーの鏡で、
「な、なんのためにそんなことを」
俺は、まとまらない思考のまま、問うことしかできなかった。
「話はあとだ。まずはこいつらを
そう言って、デスクリムゾンは町の奥の魔物の群れに命令を出した。
「やれ!」
その声を合図に、町の奥では魔物達の乱闘が始まった。正直、俺から見ると、どの魔物がどちら側の軍勢なのかが分からない。
その乱闘の中、一部の魔物は、数少ない人間に戦禍が及ばないよう保護し、避難させるのに専念している様子だった。
「ちょ、ちょっと待て! お前ら、退けい!」
上空からシリアルキラーが慌てて指示を飛ばす。その声を聞き、一部の魔物達は町の外へと逃げ始めた。
デスクリムゾン側の魔物は圧倒的な数を誇り、逃げ遅れたシリアルキラー側の魔物達は、1 体残らず八つ裂きにされた。
ひとまず町を救うことはできたらしい。これで一安心といいたいところだが、理解不能の状況を前に、俺は途方に暮れていた。
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