第13話 木曜日にリョータと学校で
時間が経つのは早いものであっという間に1月も終わり2月も半ばのある日。
僕は自由登校になっている学校で久しぶりにリョータと会っていた。
「久しぶりだなぁ皐月」
「うん、リョータも久しぶりの学校なんじゃない?」
「おう、最近忙しくて大変だったからな。やっと少し落ち着いたところだ」
「大工さんも大変だね」
リョータは大工になるために修行中で今年に入ってから本格的に棟梁のところで働いている。
「まぁ大変だけどやりがいがあるからな」
「いずれ僕の家を建ててもらわないといけないから頑張ってもらわないとね」
「ははは、そうだったな」
学校の中庭で僕らはそんな話をしていた。
「そういえば皐月は正月に実家に帰ってたんだろ?どうだったんだ?」
「うん、まぁそれなりに・・・何というか・・・」
「なんだ?上手くいってないのか?」
「いや、そうじゃなくて・・・上手く行き過ぎた感じ?」
「なんだそれ?」
「母さんが集まった人の前で鈴羽を僕の結婚相手だって紹介しちゃったんだよね」
「・・・わはははは、そっか!そっか!いやぁ皐月!ご結婚おめでとう!!」
「ちょ、ちょっとリョータ!!声が大きいよ!」
リョータが大声で言ったものだから周りの学生たちが何事かと注目しだす。
中には同じクラスの女子もいたりして駆け寄ってくる。
「今のほんと?皐月君、結婚するの?いつ?誰と?」
「学生結婚!?卒業したら?」
「いやいや、ちょっと待ってよ、リョータ!説明してよ!」
「うんうん、皐月はなんとお正月に彼女をご両親に紹介しに実家に帰っていたのだ!後は・・・想像に任せる!」
「おいっリョータ!説明になってないよ!それ!」
きゃあ〜っと黄色い歓声が上がる中、僕は頭を抱えて弁明に追われた。
「リョータのおかげで酷い目にあったよ」
「そうか?俺はおもしろかったけど?」
「リョータさ、僕のことをそうやって楽しんでるけど自分のほうはどうなんだ?」
「お、俺?俺は、ほら、なぁ?いつも通りだな。うん。いつも通り」
「リョータ・・・目が泳いでるよ」
「ははは、そんなことないさー」
明らかに挙動不審なリョータをジーッと見てやる。
「なぁリョータ。とぼけても鈴羽に聞けばすぐにわかるんだけど」
「ああ〜っそうだった!俺、今日ちょっと用事があるんだったー」
「うんうん、リョータ。ちょっとお茶でもしながら詳しく聞かせてもらおうかな」
いつもと立場が逆になった僕達はいつもの喫茶店に入っていく。
「へ〜知らない間にそんなことになってたんだね」
「なぁ皐月、そのニマニマ顔やめてくれないか?」
「あれ?僕そんな顔してる?」
「はぁだからイヤだったんだ・・・」
「ふふっリョータがそれでいいならいいんじゃない?」
「そりゃそうなんだけどよ・・・」
しばらく会わないうちにリョータは杏奈ちゃんと梓ちゃんが暮らす部屋に連れ込まれているらしい。
つまりはハーレム同棲なわけ。
多分こうなるんだろうなぁとは思っていたけど予想より早かった。
きっとリョータが本格的に大工の修業をしだしたからだと思うけど・・・
「それでリョータは結局どうするの?2人のうちどちらかを選ぶの?」
「いや、そんなこと出来るわけないだろ?贅沢かもしれないけどよ、俺は2人とも同じくらい好きなんだ」
「そっか、じゃあ当分は3人で暮らすんだ?」
「そうなるな」
リョータはコーヒーのグラスをカラカラと回しながら照れたような、それでいてどこか嬉しそうに笑った。
「へ〜じゃあリョータ君は杏奈ちゃんたちと一緒に住んでるんだ?」
「うん、リョータもリョータで2人とも同じくらい好きだからこのままでいいって」
「ふふふ、贅沢さんね」
「ホントにね」
仕事が終わった鈴羽が帰って来て晩御飯を食べながら今日のリョータとの話に花がさいていた。
「まぁ僕は鈴羽がいれば充分だから」
「ふふっありがと」
「そういえばいつこっちに越してくるか決まった?」
「ううん、まだなの。荷物の整理もあるし皐月君が大学に行くまでにはって思ってるんだけど」
「そっか、僕の方はいつでもいいから決めたら言ってね」
「うん」
鈴羽のお父さんが鈴羽と僕が一緒に暮らすことを許してくれたので僕が大学に通い始めるまでには同棲を始める予定になっている。
まぁ今も一緒に暮らしているみたいなものなんだけど、ちゃんと荷物も全部ってなるとまた違った感じがするわけで。
「その節はよろしくお願いします」
「ははは、こちらこそ」
顔を見合わせて笑いソファでひとしきり抱き合って想いを確かめあう。
「好きだよ」
「知ってるわ」
そう言って笑いかける鈴羽は今日も可愛かった。
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