第12話 水曜日の夜、久々の我家へ
実家に帰ってきて3日が過ぎた。
昨日と一昨日は特に用事もなく鈴羽と家でゴロゴロとしてから冬期講習が終わって帰ってきた緋莉と遊んで過ごした。
緋莉はすっかり鈴羽がお気に入りでべったりとくっついて離れようとしない。
鈴羽も鈴羽で年の離れた妹が出来たみたいにかまい倒している。
お兄ちゃんはちょっと寂しい。
昼からは駅前に出て商店街を歩いたり地下で買い物をしたりとのんびりと過ごした。
実家に帰ってきて5日目、そろそろ帰ろうかと考えていた、というのも父さんは相変わらず忙しいみたいでずっと仕事に行っているし母さんは、はてさてどこで何をしているのやら、姿を見せない。
緋莉が鈴羽を離さないので中々帰るタイミングがないのだが、正直僕がやることがない。
「ねぇ鈴羽」
「なあに?」
「そろそろ帰ろうかと思うんだけど、どうかな?」
6日目の夜、僕のベッドの中で鈴羽にそう聞いてみる。
「そっか、もう明日で1週間だものね。そろそろ帰ろうか」
「うん、こっちにいても然程やることがないんだよね」
「ふふふ、緋莉ちゃんの相手くらいですものね」
「その緋莉も鈴羽にべったりだからなぁ」
「可愛いじゃない、緋莉ちゃん。妹みたいで」
「まぁそのうち妹になるんだけどね」
「・・・最近、皐月君そういうことをさらっと言うようになったわよね」
「そうかな?」
「そうよ」
鈴羽は僕の頭を胸のあたりに抱き寄せて嬉しそうに笑っている。
「どうかした?」
「うふふふ、なんだか何回もプロポーズされてるみたいな気分ね」
「どこかのドラマじゃないんだから」
抱き寄せられた胸から顔を上げると鈴羽はふにゃっとした笑い顔で僕を見ていた。
「幸せよ」
「うん、知ってる」
「皐月君って案外自信家よね?」
「どうして?」
「幸せよって聞いたらいつも知ってるって言うでしょ?もし幸せじゃなかったらどうするの?」
「鈴羽は幸せでしょ?」
「え?うん、もちろん」
「だって僕は鈴羽を幸せにしてあげるっていつも思ってるからね。だから知ってるんだよ」
「・・・何かズルイ」
照れたような笑いを浮かべてぎゅっと抱きつく鈴羽を抱きしめる。
首筋から耳、頬、そして唇へとキスをする。
えへへっと笑う鈴羽は可愛くてついついここが実家だってことを忘れそうになる。
「お正月もあっという間だね」
「そうね、嵐のようなお正月だったわ」
「ははは、ホントご苦労様」
今年のお正月はきっと忘れられないものになるだろう。
僕と鈴羽は夜が更けるまで他愛のない話をしてゆっくりと眠りについた。
翌日、相変わらず父さんも母さんも不在だったので是蔵さんにそろそろ帰るつもりであることを伝えた。
緋莉は今日も冬期講習に行っていてお昼まで帰ってこないのでそれまでは家でゆっくりすることにした。
「お義父様とお義母様に挨拶しなくて大丈夫かしら?」
「いいんじゃない?2人共いつ帰ってくるかもわからないし」
「忙しいそうよね、お義父様もお義母様も」
「父さんはともかく母さんは忙しいのかどうかわからないよ、そもそも何してるか知らないし」
「お花の宗家だけじゃないんだよね?」
「うん、そうみたいなんだけど我が母ながら謎ばかりだよ」
リビングに2人でいると是蔵さんがタイミングよくお茶を出してくれる。
ホントいつもどこで見てるんだろう。
お昼を過ぎたあたりで緋莉が勢いよくリビングに駆け込んでくる。
「お姉ちゃ〜ん!もう帰っちゃうの〜」
「ごめんね、緋莉ちゃん。お姉ちゃんもお仕事があるからね」
「つぎ!次はいつくるの?」
「う〜ん、いつかなぁ?皐月君どう?」
「僕は鈴羽の都合がつくならいつでも大丈夫だよ、春まで学校もないしね」
「そっか、じゃあまたお休みができたら緋莉ちゃんに会いにくるね」
「うん!約束なの!」
鈴羽と緋莉が指切りをしているのを微笑ましく見ながらもちょっと寂しかったりもする。
是蔵さんや小林さんを始め立花の家に勤めているみんなに挨拶をして、ひとしきり緋莉と遊び終わる頃には日も暮れてすっかり夜になっていた。
「じゃあまた、父さんと母さんによろしく」
「お世話になりました。お義父様とお義母様にご挨拶出来ず申し訳ないとお伝えください」
「かしこまりました。皐月様、九条様もどうぞお元気で」
「是蔵さんも体には気をつけてね」
「はい。ありがとうございます」
見送りに出てくれていた是蔵さんにお礼を言って鈴羽の愛車に乗り込む。
ちなみに緋莉は遊び疲れてすでに夢の中だ。
こうしてあれやこれやと大変だった僕と鈴羽のお正月は終わりを迎えた。
母さんにも認めてもらえた様だしいいお正月だったかな。
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