第3話 火曜日から年越しで


結局、鈴羽がうちに来たのは11時を回るころだった。


「ごめんね、皐月君。お父さんが中々離してくれなくて」

「全然構わないよ、お父さんなら確かに離したがらないかもね」

「でしょ?皐月君によろしくですって。それにしてもこないだまで立花君って呼んでたのにどうして急に皐月君になったのかしら?」

「さぁ?」

鈴羽がジーっと疑いの目を向けてくる。

「そんなことより御節と年越し蕎麦食べない?」

「そのうちちゃんと説明してね」

「あ〜、うん。そのうちね」

僕はそう言ってキッチンに御節と年越し蕎麦を取りにいく。

まさか、義理の父と母に挨拶しにきますなんて言ったなんて照れくさくて今更言えないよ。


御節と年越し蕎麦をテーブルに置いて鈴羽と一緒に食べ始める。

「お〜結構美味しいかも」

「ええ、最近のコンビニってすごいのね」

「何でも某有名シェフの監修で作ってるらしいからね。パンフレットに書いてあったよ」

「へ〜お値段もリーズナブルだしよく出来てるわね」

最近のコンビニは大手のスーパーや百貨店に負けないくらいのクオリティがあるもんなぁ。

御節もそうだけどデザート系なんて特に力を入れている感じだし。


2人で感想を言いながら食べていると時刻はもうすぐ12時になろうとしていた。


「鈴羽、ちょっと寒いけどベランダに出ない?」

「どうしたの?」

「ベランダに出るとね、除夜の鐘の音が聞こえるんだ」

僕らはベランダに出てみる。

「寒っ!」

「ホント、流石に大晦日の深夜ね」

鈴羽を後ろから抱きしめて部屋から持ってきた毛布を被る。

「これでよしと」

「うふふふ、暖かいね」

顔を見合わせて笑っていると、ゴーンゴーンと鐘の音が聞こえてくる。


「明けましておめでとう、鈴羽」

「うん、明けましておめでとう。皐月君」

当然初めて2人で迎える新年なわけで、何となく照れくさかったりもする。


ゴーン、ゴーン。


毛布にくるまってしばらく鳴り響く鐘の音を聞いてからあまりの寒さに部屋に撤収する。


「寒かったぁ〜皐月君、お風呂入ろ?お風呂」

「うん、そうだね。ちょっと冷えちゃったね」



「はぁ〜〜あったまるねぇ〜」

「ほ〜んと冬場のお風呂は極楽だね〜」

いつものように湯船に浸かってお風呂を満喫する僕ら。

「でもいっつも鈴羽はのぼせるまで入ってるからなぁ、程々にしないとね」

「え〜っ皐月君があんなことやこんなことするからのぼせるんじゃない」

「そうだっけ?」

「そうよ、全くもぅ」

と言いつつ湯船で抱き合ってキスする僕と鈴羽。

そりゃあのぼせるまで入っちゃうよね。


せっかくのお正月なので今日はのぼせるまでに上がってリビングで一息つく。

そこで僕は2日からの僕の実家で起こりそうな出来事について鈴羽に簡単に説明した。


「そっか皐月君の実家って結構な家柄なのよね」

「家がってわけじゃなくて母さんがって感じだね」

「なんか納得・・・」

「でしょ?」

「久しぶりに緋莉ちゃんにも会いたいし楽しみだなぁ」

「楽しみはいいけど楽しいかどうかはわからないけれどね」

「う〜ん、それもなんだか納得出来るね」

実家についてあれこれ話していると鈴羽が大きな欠伸をしだす。


「そろそろ寝ようか?」

「うん、お腹いっぱいでお風呂に入ったら眠くなっちゃうよね」

ふわぁと欠伸する鈴羽をよっと抱き抱えて寝室へ。


「ふふふ、今年初めて皐月君に抱っこされちゃった」

「あははは、何でも今年初めてになっちゃうね」

ベッドに倒れこんで抱き合いながら唇を重ねる。

「今年初めてのキスだね」

「うふふふ、そうだね」

今年2回目・・・3回目。

笑いあいキスを繰り返す。


「・・ん・・・んふ」

「大好き」

「ふふっ、知ってるよ」

鈴羽がとびきりの笑顔を見せてくれる。


僕の今年は鈴羽最愛のひとの最高の笑顔から始まった。







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