第17話 土曜日夜のひととき
「・・・という訳なんだけど大丈夫かな?」
僕はリビングで鈴羽に先日のリョータと高山君のことを話していた。
「えっと、ちょっと待ってね。スケジュール見てみないと」
鈴羽は鞄から、分厚いスケジュール帳を取り出してページをめくる。
「21日は。う〜ん、ちょっと厳しいわね。夕方に他社で会議があってそれについていくから結構遅くまでかかるかも」
「そっかぁ、空いてそうな日はあるかな?」
「近いとこだと、26日か28日くらいかな?28日が良くない?ちょうど金曜日だし」
「そうだね、じゃあ、それでリョータと高山君に連絡しておくよ」
僕は2人にメールを送っておく。明日学校で言ってもいいんだけど何事も早めにね。
「それで高山君だっけ?元カノとヨリを戻すの」
「うん。そうだね。なんだか家の事情で九州に帰ったって言ってたけど就職でこっちにくるらしいよ」
「へ〜遠距離恋愛だったんだね」
「詳しくは聞いてないんだけどね」
鈴羽は、僕に抱きついて頬を擦り寄せて僕を上目遣いで見上げる。
「遠距離はイヤよ」
「あはは、僕はどこにもいかないよ?それに・・・」
「それに?」
そっと鈴羽の唇にキスして続ける。
「それに仮に遠くに行くなら鈴羽も一緒にね」
そう言ってもう一度唇を重ねる。
「そう言うことをサラッと言うんだから」
真っ赤になってもじもじしてる鈴羽は可愛いなぁ、なんて思ってるとメールの返信が来たみたいだ。
『了解!楽しみにしとくぜ。』
高山君からだ。
「高山君は大丈夫だって」
「あとはリョータ君ね、杏奈ちゃんと梓ちゃんは私の方で調整できるし、土曜日有給取ってもいいしね」
「仕事してると有給があるんだよね。学校にもあればいいのに」
「うふふ、そうね。でも学生さんは春休みとか夏休みがあるじゃない?懐かしいわ」
「それもそうか。そういえば鈴羽って学生の頃はどんな風だったの?」
鈴羽の学生時代って聞いたことなかったなぁ。きっと可愛いかったんだろうなぁ。
「私?私は普通よ、普通」
「え〜、それじゃわかんないよ、部活とかしてなかったの?」
「部活?ええと、生徒会?かな」
「生徒会?もしかして生徒会長とか?」
「まぁ、その、そうとも言うわね」
「生徒会長・・・それってすごくない?やっぱり人気あったんだ?」
「なる人がいなかったから仕方なくよ、仕方なく」
仕方なくで生徒会長はできないと思うけど。
イメージ的にはしっくりくるよね。
僕はそれから鈴羽の学生時代についてあれやこれやと聞くにつれて驚くことばかりだった。
鈴羽の通ってた学校は、中塚女子。確か図書館で会った子が行ってるところだ。
2年から生徒会長をしてて、この時点でも驚きなんだけど成績は入学から卒業するまでずっと首席だったらしい。
大学は某国立大の経済学部。僕が受験する大学よりワンランク上の大学だ。
「は〜鈴羽ってすごい人なんだね」
「そんなことないよ。たまたま上手くいっただけ」
「今は普通のOLで、皐月君の彼女。それだけでいいの」
ソファにもたれていた僕に鈴羽がえいっとかぶさってくる。
「私は、そんな肩書きより、皐月君の彼女って肩書きがいい」
「鈴羽・・・ありがと」
えへっとはにかんだ笑顔を見せて胸に顔を埋めて抱きつく。
僕も、よしよしとサラサラの髪を撫でて抱き寄せる。
ぎゅーっときつく。
色々聞いたけど、やっぱり今の鈴羽が一番だし、大切だ。
鈴羽から漂ういい香りを胸いっぱいに吸い込んで僕は改めてそう思った。
「あっすっかりリョータの事忘れてた」
スマホを見てみるけど返信はなし。
「ははは、返信がなくてよかったよ。完全に忘れてたからね」
「ふふっ、そうね」
また明日にでも聞いてみることにしようかな。
「今日はどうするの?泊まってく?」
「うん。帰るつもりだったけどやめとく」
「明日仕事でしょ?」
「そうだけど・・・皐月君の彼女ってことを再確認したいから」
「ああ・・・えっと、お願いします?」
なんとなく改めて言われると照れくさくて、2人して笑ってしまった。
もちろん、この日の夜は再確認したんだけどね。
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