閑話 とある会社の喫煙室にて



ここは、とある会社の喫煙室。


「いや、ほんと。びっくりしたのなんのって!」

「マジか?」

「マジ、マジ!おおマジだって!あんな顔、見たことないって!」

「そっか・・・社内でもちょっと噂はあったけど本当だったのか」


喫煙室では、4人の男が缶コーヒー片手に談笑している。


「なんつーか、華が咲くような笑顔っていうやつ?あ〜だめだ。思い出したらドキドキしてきた」

「ははは、重傷だな?お前まえから狙ってたもんな」

「でもよ、彼氏なんだろ?そいつ」

「俺もよ、てっきり弟か何かだと思ってたんだけどよ、ありゃあベタ惚れだわ」

「高校生のガキにか?」

「信じられるか?こう腕に抱きついて。ぎゅーだぞ!」

隣の男に、その時の再現をしてみせる。


「信じられん・・・」

「そんないい男だったのか?そいつ」

「いいや、普通だな。普通。見た目はな」

「見た目はってことはほかに何かあったのか?」

「何かってほどじゃないけどよ、なんつーか、こう、雰囲気のあるやつだったな。ガキっぽくないつーか」

「へーお前が言うくらいだからよっぽどだな」

「そいつを見る目が、なんつーか、恋する乙女の目?みたいな感じでさ」

「俺も見られたい・・・」


「いや、でもさ、そいつ。今日も泊まって帰るって言ったんだろ?」

「そう!そう!それだよ!お前、泊まって帰るってことはつまり・・・」

「ああ、アレだ」


ゴクッ


4人は、互いに顔を見合わせて唾を飲み込む。


「そーいうことだよな?」

「そーいうことだな」

「あ〜マジか!マジなのか!ってことはあんなことやこんなことを!」

「・・・鼻血出そう」


「でもよ、あんな顔で言われたら、俺、何も言い返せないわ」

「最近よく笑うようになったって営業の連中が言ってたしな」

「高嶺の花どころかもう天上の花じゃねーか」

「一緒にメシ食うだけでもどんだけハードル高いか」

「家で一緒に作って、一緒にメシ食うんだぞ、あいつ」


「で、その後は・・・」


「あのワガママボディーを・・・」


・・・・・


「なぁもうやめないか?俺悲しくなってきたわ」

「俺もだ」

「そうだな。俺、ミジンコになりたい」

「そこまでじゃねーだろ!」


4人は大きな溜息をついて、喫煙室を出て行く。


ここはとある会社の喫煙室。

悲哀交々、彼等は今日も働く。




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