夏の日の想い出 SIDE《九条鈴羽》


 夏の終わりが近づいたあの日、私は皐月君と旅行に出かけた。


 両親、特にお父さんは怪しんでいたけど、会社の同僚と行くと言って押し切った。

 ふふふ、お父さんに正直に話したら倒れちゃいそうだし。



 旅館は話に聞いていたよりも遥かに素晴らしいとこだった。

 ここを紹介してくれて、予約までしてくれた会長にお土産をちゃんと買わなくっちゃね。



 初めて2人で旅行したこと。

 老夫婦に尋ねられて、夫婦ですって答えたこと。

 彼の困った様な照れた様な横顔。


 2人で入った露天風呂。

 彼とお風呂の中で抱き合ったこと。キスしたこと。

 好きじゃなくて、愛してるって言われたこと。



 そして・・・彼にたくさん愛してもらえたこと。



 私はきっと一生この日の事を忘れないだろう。



 明日からまた、日常が始まる。

 だけど、私には少しだけ違った景色に見える。


 私は思う。

 彼に逢えて本当に良かったと。

 好きになって、愛して。


 先のことはまだわからないけど、私はずっと彼の隣を歩きたいと想える。


 そう思った夏の日の夜。


 あなたを愛しています。






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