魔女と魔物釣り4
「私は同じ水属性だから、奴とは純粋な力比べとなるわね。あの硬い体表を打ち抜けるかどうか……」
ウォルタは釣り糸の先のギラフィッシュに向けて銃を構えると。魔法の弾を発射した。
しかし、その弾はギラフィッシュの体表によって、はじかれた。
「なんだよ、ウォルタも出る幕ないじゃん」
フレイが口を尖らせてウォルタに言った。
「うるさいわね! これから攻略法を考えるのよ!」
ウォルタは顔を真っ赤にしてそう返した。
「やれやれ、どうやら釣りだけでなく、魔女としてのキャリアもわたくしが上のようですね」
二人のやり取りを見かねたフウが言った。
「申し訳ありませんがウォルタさん。わたくしが釣り上げた方のギラフィッシュ、わたくしが仕留めても構わないでしょうか?」
「……ええ、まかせるわ」
「では」
ウォルタの了承を得ると、フウは左手に釣り竿を持ち替え、右手のひらを広げた。
そこには魔法陣が描かれており、その魔法陣が発光すると、手のひらの上に大型の槍が出現した。
「なんだ! 何もない所から武器が!」
フレイは釣り竿を支えながら驚いた。
「あれは、収納魔法陣。上級の魔女が魔導具を携帯するためのものよ。それを使えるなんて、フウ、あなた……」
「ええ、ただものではありませんよ、わたくし」
そう言うと、フウは槍に魔力を込めた。
柄に刻まれた魔法陣が発光し、槍頭が小さくも勢いのある竜巻をまとった。
「湖に住む魚たちのために、消えてもらいます」
フウは左手で釣り竿を振り上げ、ギラフィッシュを槍の射程内まで引き寄せると、右手で構えた槍で、その眉間から胴体を貫いた。
ギラフィッシュは一瞬で光の粒子となって消えた。
「す、すげー」
フレイは開いた口が塞がらなかった。
「ウォルタさん、これで分かりましたよね、ギラフィッシュの弱点」
フウがウォルタの方を振り向いて言った。
「ええ、眉間ってことね」
「正解です」
ウォルタは再び銃を構えてフレイに言った。
「フレイ! 確実に弱点を狙う為にも、もっと奴を引き寄せるのよ! いける?」
「ああ、フウみたいに片手だけでとはいかないけど!」
フレイは両手で釣り竿を思いっきり振り上げた。
「よし、この距離なら!」
ウォルタの構えた銃から放たれた閃光が、ギラフィッシュを貫いた。
「戦闘は一瞬だったけど、長い待機時間のせいで、無性につかれたわね」
ウォルタは腰に手をあてながらそう言った。
「まあ、戦闘がすぐ終わったのも、フウがヒントをくれたおかげだけどね」
フレイが言った。
「そうね、フウ、ありがとう。助かったわ」
ウォルタはフウに手を差し出した。
「礼には及びません。それより、勝負が引き分けで少し残念でしたが」
ウォルタの手を握り、フウはそう言った。
「なぁに、勝負ならまたしようよ。今度は普通の魚釣りでさ!」
フレイが笑顔でそう言った。
「それは面白いですね。いつでも受けて立ちますよ」
フウはフレイと握手をした。
「では、わたくしはこれで。今日はとても楽しかったです。お二人とも、またどこがでお会いしましょう!」
そう言うと、フウは二人に手を振って去っていった。
二人もその背中に手を振り返した。
「また会えるといいな」
「会えるわよ、同じ魔女なんだし」
「へへ、そうだな……なあ、ウォルタ」
「何よ?」
「釣り上げた椅子、持って帰って、家に置いてもいいか?」
「……ちゃんと洗うのよ」
二人はヒカ湖を後にした。
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