魔女と魔物釣り3
「……全然、釣れない。ウチもなんか持ってくればよかった」
フレイが退屈そうに釣り竿を握りながら言った。
三人が釣りを始めてから数時間が経過していた。
「あなた、最初に釣りが楽しい、どうこう言ってなかったけ?」
ウォルタが本を読みながら突っ込んだ。
「この時間を楽しめないようでは、フレイさんもまだまだですね」
フウは平然な顔をしてそう言った。
「そんなこと言っても、退屈なんだからしょうがないだろ。ホントに魔物なんているのかな?」
フレイがそうこぼしたとき、三人から少し離れた地点で、大きな水しぶきと共に、巨大な生物が水面から飛び出し、再び水中に潜っていった。
「今のって!」
フレイは目を丸くしてそう言った。
「ええ、間違いない、ギラフィッシュよ。ホントにいたようね」
ウォルタは本から目を離して言った。
「なるほど。もう少し、遠くを狙った方がいいですね」
三人はより遠くのポイントを目掛けて、釣り竿を振り直した。
そしてしばらくして、フウの握る釣り竿が大きくしなった。
「かかりましたね!」
フウはしなやかに、釣り竿を振り上げた。
それと共に湖に大きな水しぶきが発生し、釣り針の先には、先ほど姿を見せたギラフィッシュが食いついていた。
「しまった!」
フレイはそう叫んだ。
「ふふ、勝負は私の勝ちのようですね!」
フウは勝利を確信し、そう言った。
「いえ、まだのようよ!」
そう言ったウォルタの声にフレイとフウは振り向いた。見ると、ウォルタの釣り竿も大きくしなっていた。
「まさか!」
フウは驚いた。
「ええ、そのまさか……とは思いたくないけど!」
ウォルタが釣り竿を振り上げると、水中から、もう一匹のギラフィッシュが釣り針をくわえながら、姿を現した。
「二匹目!?」
フレイはそう叫んだ。
「馬鹿な、ギラフィッシュは一匹という情報だったはず……これは参りましたね」
流石のフウもこの光景に身じろぎした。
「約束通り、退治は私たちに任せてもらう……」
ウォルタがそう言いかけたとき、その横をフレイが勢いよく通り過ぎた。
「ウチが仕留める!」
フレイは炎をまとった剣を振り上げながら、ギラフィッシュ目掛けて跳躍し、その体に斬撃を浴びせた。
しかし、剣から放たれた火炎は、ギラフィッシュに当たる直前で、鎮火し、フレイはギラフィッシュの硬い体表によって剣もろともはじき返され、水中に落下した。
「なんでぇ!?」
「なにやってんのよ! 相手は水属性の魔物なのよ。炎のあなたじゃ不利に決まってるでしょうが!」
ウォルタは水中から顔を出した、フレイをしかりつけた。
そして、地上に戻ってきたフレイに釣り竿を預けて言った。
「はい、あんたは釣り竿係よ。今回の戦闘、あなたの出る幕はないわ」
「ガーン!」
フレイは釣り竿を持ちながら、その場に崩れ落ちた。
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