魔女と幻の実4
「くっ!」
魔物の一体の繰り出した体当たりが、ウォルタの右肩をかすめた。
「ウォルタ! 大丈夫か!」
「……ええ、平気よ。ちょっと木の実探しの疲れが出てきただけだわ」
ウォルタは左手で肩を押さえながら言った。
「しかし、こう小さくて、数が多いんじゃ中々、弾が当たらないわね」
「そうなのか? さっきウチを助けてくれたときは命中してたけど」
「……もしかして」
ウォルタはそう言うと、とっさにフレイのそばを離れた。
すると今までウォルタと対峙していた魔物たちがフレイのいる方向に体を向け、彼女目掛けて襲い掛かった。
「うわっ! 何だよ急に!」
フレイは突如、自分に襲い掛かった魔物たちにひるんだ。
しかし、その魔物たちは、彼女の後方から飛来して来た青い閃光によって、次々と貫かれていった。
「……やっぱりね。その魔物、木の実の近くにいるものを優先的に攻撃するようね。移動する地点が分かれば、簡単に当てられるわ」
「そ、そうか! ……って急に離れるなよ! びっくりしたじゃんか! 一言ぐらい言ってくれよ!」
フレイは口をとがらせて、地団太を踏んだ。
「悪かったわね。けどフレイ、攻撃は私に任せて、そのまま囮役お願いできる? 魔物どもを全員、引き付けて頂戴!」
「……やれやれ、分かったよ!」
そう言うとフレイは魔物たちを誘導するように駆け回った。
そしてその魔物たちは皆、フレイ目掛けて、移動した。
「……よしウォルタ! いいぞ!」
フレイは叫んだ。
「ええ!」
ウォルタの構えた銃から繰り出された銃弾の雨は、魔物たちを次々に貫いた。
魔物たちは消滅し、フレイの周囲に光の粒子が舞った。
そして、フレイは片手で剣を構えて、魔力を込めた。
「最後くらい決めさせてもらうよ!」
「ご自由に」
フレイの放った斬撃が、魔物の最後の一体を仕留めた。
「ふう……数こそ多かったけど、前のポカツリーに比べりゃ楽勝だったな」
そう言ったフレイの体は土誇りまみれだった。
「……そんな体でよく言うわ」
ウォルタは呆れた表情を見せた。
「へへ。言っただろ、ウチら二人の敵じゃないって」
そう言って、フレイはウォルタに右こぶしを向けた。
「……そうね」
ウォルタも右こぶしをフレイに向けた。
そして、それをフレイのこぶしと打ち合わせた。
「……さてと。色々、疑問は残るけど、取り敢えずキランの実の採取は成功ね」
「やっぱり前に来た誰かが、ここの魔物たちを倒せなくて、場所だけ書いた地図を残してくれたんだよ」
「はぁ……そういうことにしときましょ」
目的を果たし二人は森を後にした。
しかし、その二人の姿を遠くの木の陰から覗くものがいた。
「ふふ、流石私が見込んだウォルタ様。鮮やかな仕事っぷりでしたわ」
ザワの森は日が暮れた。
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