魔女と幻の実3

「嘘でしょ……」


ウォルタは目の前の木を見上げて絶句した。


「……や、やった!」


同じく、フレイもその木を見上げて言った。


その木には、朱色に光沢をおびた木の実、キランの実が一つなっていた。


「間違いないよ! キランの実だ!」


フレイが頭上の木の実を指さして言った。


「まさかホントにあるなんて……この地図、いったい何なの?」


ウォルタは木の実を発見した喜びよりも、呆れのほうが勝っていた。


「何でもいいじゃん。とにかく実は見つかったんだ、早く採って持って帰ろう!」


フレイはそう言うと、木によじ登り、実を採ろうとした。


「……なんか、釈然としないわ、何かあるんじゃ……」


ウォルタの勘は当たっていた。


フレイがその手に木の実を掴んだ瞬間、木の上から小さな毛虫のような生物が数十匹落ちてきたのだった。


「わっ!? 何だこいつら!」


「フレイ、魔物よ! 早く降りなさい!」


フレイは木の実を右手で握りしめたまま木から飛び降りた。


すると、毛虫型の魔物たちはフレイに向かって襲い掛かって来た。


「うわっ! 何なんだよ!」


「フレイ! 伏せて!」


ウォルタの構えた魔法銃から放たれた弾丸が、魔物たちを貫いた。


「ふぅ。サンキュー、助かった」


「まだ、安心はできないわ」


ウォルタの言葉通り、木の上から再び数十匹の毛虫型の魔物が降りてきた。


そしてそれらは、二人の周囲を逃げ場を閉ざすように囲った。


「……どうやら、こいつらを倒さないと採取できないから、幻の木の実ってことらしいわね」


ウォルタは構えた銃に魔力を込めた。


「おいおい、何だよ。こういうときは、ウチ一人でなんとかするんじゃなかったのか?」


フレイはウォルタに笑みを向けた。


「……ただの成り行きよ。行くわよ!」


「ああ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る