魔女と幻の実2

ウォルタとフレイの二人は、ポカの森からさらに東に位置するザワの森にやって来ていた。


「まさか記念すべき初仕事が木の実探しなんて……」


フレイがうつ向きながら言った。


「あんたが寝坊したせいでしょうが」


ウォルタが依頼書を眺めながら言った。


「今回の依頼は、この森の木になる希少な木の実、キランの実の採取よ。ここも、この前のポカの森ほどではないけど、危険な魔物が生息しているわ。油断しないことね」


「木の実採取かぁ。前回がでかい魔物退治だっただけに、簡単そうで気が抜けるなぁ」


その言葉をフレイは数分後に後悔することとなる。




「み、見つからない……」


フレイは疲れ切って近くの木の根元に座りこんだ。


「何よ、もう限界? 気が抜けるほど簡単なんじゃなかったの?」


そうやってフレイをたしなめたウォルタも、汗だくで息を切らしていた。


「我ながら、誤算だったわ。この木の実に関する情報が少なすぎて、どこを探したらいいのかわからないわね」


「そんなぁ。この森、全部探してたら、日が何回暮れるか分かったもんじゃないよ」


「……一回、街に戻って情報を集めた方がいいかしら」


ウォルタがそう呟いた次の瞬間だった。


「あっ、あれは!」


フレイがどこかを指さして叫んだ。


「見つけたの!?」


ウォルタは勢いよくフレイの指さした方向に顔を向けた。


「見ろよあれ、宝箱だ」


そこには無造作に置かれた厳重そうな一つの箱があった。


「どうっでもいい! 木の実じゃないじゃない!」


「でも、すげーよ、大発見だ!」


フレイはその箱を持ち上げた。


「なんでこんなところに箱が……気持ち悪いから触るのやめなさい」


「えー、そう言わずに開けてみようよ」


そう言ってフレイは宝箱をなんとか開けようとしたが、それは叶わなかった。


「……はぁ、仕方ないわね。どいて、錠の部分を軽く銃で撃ってみるわ」


ウォルタはそう言うと腰のホルスターから魔法銃を取り出し、箱の錠の部分を撃った。


すると箱はいとも簡単に開いた。


「ん? 中に何か入ってるな……紙?」


フレイは箱の中から一枚の紙を取り出した。


「なにか書いてあるわね……地図?」


ウォルタもその紙を覗き込んだ。


そして、ウォルタは紙に書いてある文字を読み上げた。


「この地図の場所に幻の木の実、キランの実あり…………はぁ!?」


「……何だよ、これ。ウチらにとっての宝の地図じゃん!」


フレイはさっきまでの疲れはどこへやら、その場に立ち上がりガッツポーズをした。


「いや、いや、どう考えてもおかしいわ! なんでこんなところにある謎の箱の中に、しかも探してる実のありかを記した地図が入っているのよ!」


ウォルタはその場から後ずさりをした。


「きっと、前にこの森に来た誰かが、こっそり地図を残しといてくれたんだよ。いやぁ、ありがたいなぁ」


「……随分とポジティブな解釈するわね。こんなの怪しさのかたまりじゃないの」


「でも他に手がかりもないしさ、とりあえずこの場所に行くだけ行ってみようよ。なんか面白そうだしさ!」


そう言うフレイの目は好奇心に満ち溢れていた。


「……なんかの罠とかだったら、どうするのよ?」


「例え、どんなことが待ち受けていようと、ウチら二人の敵じゃないよ」


フレイはウォルタに右こぶしを向けた。


「……いや、責任もって、そんときは一人でなんとかして」


ウォルタはフレイを無視して歩き出した。


「おい、そこはノってくれよぉ!」


二人は地図に示された場所へ向かった。

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