六月 過去(2)
時を戻す装置
泰介はそれを「タイム」と呼んでいる
時を戻す方法はこれまで数多くの学者たちが証明し続けただろう。
しかしそれを実行したことは一度もない。
何故なら
時を巻き戻すには、簡単に言うと光より速い速さに耐えなければならない。
それでは現代の科学技術のものや人間では身体が耐えられない。
そこで泰介はその他の方法を考えている真っ最中だった。
時を戻すというものは世間では夢のまた夢かもしれないが、その夢を実現させようと泰介は時を戻す方法をまた新しく考えている。
彼は天才だ。
けれどその才能は周りにはまだ公開していない。
彼の両親も天才だった。
父は大学の教授で、
東大卒の頭の良い人間だった。
しかしそれをこえているのが母だった。
母は中学で高校を飛び級し、ハーバート大
学に五年間留学した。
お陰で母は優秀な科学者になっていた。
その間にできた息子の泰介は、
I.Q200超えの天才人間だった。
なので幼稚園生のころ、分度器を一瞬みただけで図形の角度がすぐ解けた。
脳内で分度器と図形を組み合わせて、角度を答えているらしい。
小学校1年にもなると、中学3年の問題をスラスラと解けるほどだったらしい。
小学校の受験に見事合格した彼は
小学校に入ってすぐに
あまりの頭の良さに周りの人間は彼に嫉妬を覚えた。嫉妬した人間は嫌がらせを始めた。最初は少しだけだったけれど、
小学6年にもなると、次第に嫌がらせが
もはやいじめになっていった。
ハブられたり、菌扱いされたり、
無視されたり、
餃子の筆箱を割られたり、
ハンバーガーのメモ帳に落書きされたり、
ランドセルの中に紙くずをいれらりと
次第にひどくなっていった。
けれど泰介は母に
「そんな相手はいつか後悔する、だから相手にしたら終わりよ」
と、言われ続けられたのだ。
そんな日々を送っているある日、
泰介は昼休みに本を読んでいた。
するといじめっ子の加藤と快晴が紙くずを頭に投げて、的中した。
かしゃかしゃと転がる紙くずの音は小さかった。
クラス中が泰介に目をむけた。
すると快晴が
「ごっめーんついつい手がつるんって滑っちゃって
滑ったからわざとじゃないよな!」
「おい生きてるかぁ?もしかして当てられてしんじゃった?」
クラス中の生徒は笑った。
泰介は疑問に思った。
何故こんなめんどくさいことをするのか
何故こんな時間の無駄なことをするのか
何故こんなに構って欲しいのか
理解出来なかった。
そして考えたのちにある結論が出た。
泰介は立ち上がって快晴の方向へと歩いた。
「あ、生きてた!」
「すげぇ!お前立てたんだな!てっきり一生椅子の上に座って本しか読まない人生を送ってくんのかなぁって思ったよ!」
クラス中に笑いは止まらない。
「お前の机の周りゴミだらけじゃん!
今日からお前ゴミ人間じゃん!よかったな!
そーれゴミ人間!ゴミ人間!ゴミ人間!」
快晴らは笑いながらコールを始めた。
泰介は快晴をにらんだ。
「あ、なんだその目きっしょぉ!」
泰介は次の瞬間誰だかはわからない席の椅子を持ち上げて快晴の頭に一発食らわした。
「いってぇ!」
「きゃぁ!」
「うわぁ!」
クラス中に悲鳴と快晴の断末魔が窓の外のイチョウの木や廊下の雑巾までに響き渡った。
泰介は椅子を床に置き、そして自分の席の方へと歩いて、紙くずの転がっている椅子に座った。
クラスの生徒は全員唖然としていた。
そして数秒後くらいに、担任と他のクラスの先生、そして沢山の他クラスの人間が、チャイムの音なんてきこえないくらいのざわめきをしている。
泰介はポケットに手を入れた。
後日、
泰介は面会室に呼ばれて、快晴の母と快晴、そして泰介の母が呼び出された。
「どうしてくれるの!?
もしうちの子が死んだらどう責任とるつもりなの?!」
「すみません」
母は立ち上がってお辞儀をしている。
「全く致命傷だったのは不幸中の幸いだったもののどういう教育をしたらそんな子供に育つのかしら。」
「まあまあ奥様落ち着いて。
保険金の免除は全て学校が払いますから」
「そう言う問題じゃないでしょ!」
泰介は口を開いた。
「おばさん。僕の行動は間違ってないよ。」
「はぁ!?」
快晴の母は機嫌の悪そうにいった。
すると泰介はポケットから盗聴器らしき機械を取り出した。
「お前そんなもの持ってきていたのか!?」
先生が怒っているがそれを無視して
盗聴器らしき機械を再生した。
内容はあの出来事についての事だった。
全て流し終わると、泰介は言った。
「これはいじめです。
だからこの根元を潰しました。」
面会室は静かになり、快晴の母は口を開いた。
「…こ、こんなの流したってうちの子が全部やったてことにならないでしょ!
そもそも嫌われるようなことをしたあなたがいけないんじゃない。」
「それはいじめっ子の発想です。
僕はただ学校という空間に生きていただけなのに、いじめを受けました。
理由はあなた方にあると思います。
ただ単に自己満足のためだけに生きてる人間がいじめっ子になりやすいタイプです。
快晴くんはまさしくその通りの人間でした。だから一から正すべく僕はあえて頭の致命傷になる部分を叩きました。」
「…」
「その後快晴くんはどう生きていくのかはどうでもいいですが、
どうして僕に教育ができて、おばさんには出来ないんですか?」
「それは…」
「言葉は軽くないんだぞ。
ゴミ人間が。」
泰介は笑顔で言った。
泰介の母と快晴の母は唖然とした表情で泰介を見ていた。
帰りは車で帰った。
車の助手席で泰介はあの出来事で読んでいた本をまた読み返している。
「どうして盗聴器なんか持っていたの?」
母が言った。
「家内にはそんなものないよ?もしかして買ったの?」
泰介はいった。
「作った。」
「え?」
「この本通りに作った。材料はお年玉つかった。」
タイトルにはスパイグッズ作成!と書かれた本を母に見せた。
母は驚きのあまり、前が青信号だなんて気付かなかった。
クラクションの音が聞こえないほど驚いたらしい。
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小学校をでたあと、
私立中学に入学した。
私立中学は今の町よりはるかに遠く、電車ではいけないので、引っ越すことにしたらしい。本当は母と父がこの町に泰介いすわせたくないと思ったのだろう。
国立の中学にも行けたがめんどくさいのでやめた。というか、特別扱いをされたくなかったのだ。
そして庭が昔より広くて、家も快適な、この今の家に引っ越してきたという。
(ああまた違うな)
ゴミ箱には沢山の紙くずがすてられていた。
ゴミ箱に失敗作を入れた瞬間、
部屋のガラスが割れた音がした。
そんなこと無視して、泰介は次の設計図を書き続けた。
1時間後に休憩しはじめた。
泰介はガラスの方向へと歩いていった。
割れた原因は石が包んである紙が
家のガラスに投げてきたのだ。
包んである紙を開けて読むと、
{おまえころす}
と雑な字で書いてある。
強い字だ。
濃くかいてあり、すこし汚れている。
石はすこし大きめのサイズだ。
泰介はすぐに犯人がわかった。
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