6-7
そう言ったのは田中だった。
二股をかけていたかもしれないと聞いて、清楚で一途なイメージが崩れたのだろう。
「でも、野神先輩の友達も亡くなっていたなんて……何か関係が……」
ミステリー脳の佐野が腕を組んで推理を始めたところで理恩がそれをぶった切った。
「相葉優花の事故と、野神沙耶香の事件は直接は繋がっていないだろうけどな。ただ、全てを知っていたであろう相葉優花がこの世にいないのは痛い」
偶然にしろ、真犯人にとって有利に事が運んでいるように思えて梢の肌は粟立った。
「俺はやっぱり小嶋尊だと思うけど」
「そうね、野神さんと言い争っていたことも考えると……一番怪しいわ」
大森と神楽坂は小嶋尊が犯人説を覆そうとはしなかった。
「僕は、その二股かけてた相手だと思うな。痴情のもつれってやつかも」
「おまえそれ鍵関係なくなってるし。でもその線も捨てられないか」
田中と佐野はもう1人の
「梢は? 昼に小嶋周と話したんだろ。何か事件に関係することは聞けたか?」
「特には。でもまた尊先輩と会わせてもらえることになった」
「そうか。次に会ったら実は野神沙耶香の友達の相葉優花と知り合いだったと言え」
「え……」
「相葉優花から野神沙耶香が二股をかけているという話を聞いていたと揺さぶってみろ」
その場にいる全員が息を飲んだ。
「それって危なくないか? 小嶋尊が犯人なら真相を知っているかもしれない小比類巻さんの口封じをすることだって考えられる」
佐野の言葉に理恩は「犯人ならな。でももう時間がないんだ。犯人に殺されなかったとしても、どのみち野神沙耶香の怨霊に取り殺される人間が出るかもしれない。もうその日は近い」そう言って理恩は窓へ顔を向けた。空は雲ひとつない青空が小さな窓いっぱいに広がっているというのに、梢と理恩には黒い靄がこちらへと伸びてきているのが見えた。
「……わかった。やってみるわ」
「俺も近くにいるから。何があっても絶対に守ってやる」
数日前、同じ言葉を聞いても半信半疑だった。けれど、その昔、自分の命を本当に救ってくれたのが理恩と知った今は、彼がいれば無敵のような気さえするから不思議だ。
今まで散々胡散臭く見えていた瓶底メガネも自分の命と引き換えに犠牲になった証だと思えば……やはり胡散臭かった。
「じゃあ連休初日の木曜日に」
鬼が出るか蛇が出るか。
梢はもう一度、四角い空を見た。
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