ワーウルフスレイヤー
「狩猟解禁です」
テーブルに置かれたのはA4用紙が1枚。
そしてソードワールドのルルブ(全3巻)と拡張版(サプリメント)。
「1ページTRPGね」
「人狼(ワーウルフ)狩りか」
○ストーリー
満月の夜に人を食べる人狼(レベル8の蛮族ワーウルフ)が村に忍び込んだ。
しかし現在のレベルでは倒すことができない。
周囲の森で狩りをしてレベルを上げ、金を稼ぎ、満月の夜までに人狼を退治せよ。
先生の用意したサンプルキャラ(弓矢で攻撃するシューター)だと冒険者レベル2なので、レベル8のワーウルフには絶対勝てない。
制限時間内にいかに効率よくレベルを上げるかが重要になる。
「満月まであと10日。1日は朝と夜にわかれており、敵と戦うと時間が経過します。それ以外は前にプレイしたトロール狩りとだいたい同じです」
「何回でも死ねるの?」
「基本的に死んだらそこで終わりですね。一応、神殿に1万G払えばリザレクションで蘇生できますが、現実的ではありません」
「……ソロだと厳しいな」
1からルールを把握するのは効率的ではないので、先生の指示を仰ぎながらゲームを進めていくことにする。
「戦闘を行う場合、まず1dを2回振って敵の種族とレベルを決めてください。剣のかけらは任意で入れられます」
「はーい」
○種族の出目
1動物 2動物 3幻獣 4植物 5アンデッド 6アンデッド
種族を決めたらもう一度1dを振り、敵のレベルを決め、そしてやっと戦闘だ。
敵の種族決定 → 敵のレベル決定 → 戦闘 → 半日経過
種族決定で動物とアンデッドが2つあるのが気になる。
蛮族や魔法生物、妖精でもいいはずなのに、なぜ動物とアンデッドなのだろう。
先生のことなので何か意味があるはずだ。
……嫌な予感しかしない。
ころころ
「ぎゃー!? いきなりレベル6!?」
「終わったな」
「戦わずに逃げることもできますよ? 半日経過してしまいますが」
「死ぬよりマシね」
ころころ
「ん、俺は動物のレベル1だな。楽勝だ」
戦うモンスターを選ぶため、パラパラと『バルバロステイルズ』をめくる。
ルールブック1・2・3にもモンスターは載っているのだが、3冊あるということはモンスターデータが3分割されているということ。
こういうランダム要素のあるシステムだとルルブは使いにくい。
バルバロステイルズはモンスターが350体載っているので、敵を探すのには最適だ(ただしサンダーバードのように、2.0と2.5ではパラメータが変わっているモンスターもいるので注意)。
ラスボスはワーウルフだからウルフを狩ることにする。
「今回は戦闘システムが2つあります。1つは通常の戦闘。もう1つは狩りです。行為判定に成功すれば遠距離から敵を射撃できます」
「……足跡追跡、尾行、魔物知識判定、射撃、隠蔽(いんぺい)、隠密(おんみつ)。なんか面倒くさいわね」
「狩りをTRPGのシステムに落とし込むと、どうしてもこうなってしまうんです」
狩りの流れ
足跡追跡 → 尾行 → 魔物知識(弱点を判定) → 射撃 → 隠蔽 → 隠密 → 射撃 → 隠蔽(以下繰り返し
まず足跡追跡で敵の足跡を見つけて追跡。
足跡を辿って敵を見つけたら気づかれないように尾行。
敵を射撃できる場所まで尾行したら(射撃に邪魔な遮蔽物がなく、こちらからは敵がよく見えて、敵からはこちらが見えにくい場所を見つけるまで尾行する)、魔物知識判定をして敵の弱点を判定。
そしてようやく射撃を行い、命中判定とダメージ判定。
そういう流れらしい。
「隠蔽ってなに?」
「この場合は敵に気づかれないように痕跡を消すことです。射撃をしたら敵はこちらの存在に気づきますよね? でも攻撃してきた方向はわかっても、PCがどこに潜んでいるのかまではわかりません」
「森の中だしな」
「はい。なのでPCは隠蔽判定で自分の存在、たとえば足跡や臭いを消し、樹や草むらなどで体を隠します。隠蔽に成功したら敵はこちらを発見できません。ただし敵はこちらを発見できないだけで、移動することはできます」
「え、隠蔽に成功してもこっちに来るの?」
「来ます。たとえば20mの距離で射撃し、隠蔽判定に成功しても。敵はこちらへ移動してきます。ですがPCを発見していないので、同じ座標にいても攻撃はされません」
「……見つからないように息をひそめるわけか」
「こわっ」
「正しく狩りですね」
○その1 射撃
敵
↑距離は20m 射撃をしたら敵に攻撃が当たらなくても気づかれる
PC
○その2 隠蔽と移動
敵
↓隠蔽判定の成功・失敗に関係なく、敵はこちらへ移動してくる
PC
○その3 移動後
PC 敵 ←このようにお互いが同じ座標にいても、敵がこちらを発見していなければ攻撃されない
「隠密はなに?」
「これは敵に気づかれないように行動することですね。尾行は動いている相手を追うのに対し、隠密は静止している敵に気づかれないように行動します。隠蔽に成功しても敵は至近距離にいるわけですから、その状態で射撃すると位置がバレてしまいます。隠密行動で敵から離れてください。敵はこちらを発見するまで移動も攻撃もしません」
「隠密で敵から距離を取ったら、もう一度射撃。そして隠蔽、敵の移動、隠密、射撃の繰り返しか。……判定の回数が多いから、レベル差があってもいずれ失敗するな。遠距離から射撃できる回数は多くても2~3回か?」
「そうですね。ちなみに足跡追跡・尾行・隠蔽・隠密判定に失敗すると、即座に通常戦闘へ突入します」
「……でもサンプルキャラだとスカウト技能もレンジャー技能もないわよ。狩り系の判定できなくない?」
「たしかに」
狩りの行為判定はだいたい『スカウト(あるいはレンジャー)技能レベル+能力値ボーナス+2d』で判定する。
目標値は敵のレベル+7だ。
スカウトやレンジャー技能を持っていない場合、能力値ボーナスも加算できず、平目(2dだけ)で判定しないといけない。
1レベルのウルフでも目標値は8。
2dの期待値は7なので、技能レベルと能力値ボーナスがないと苦しい。
「狩人(ハンター)、精肉業者(ミートパッカー)、商人(マーチャント)の一般技能を10レベル分まで習得してください。最大レベルは5です」
「これか」
A4用紙に一般技能の解説がある。
【狩人(ハンター)】技能
動物と幻獣の魔物知識判定が可能。
足跡追跡・尾行・隠蔽・隠密・罠設置判定が可能。
倒した動物や幻獣の死体から『最大HPの半分だけ肉を獲得』できる(1HP=5Gで売却可能)。
先制判定はできない。
【精肉業者(ミートパッカー)】技能
敵から入手した肉をハム、ベーコン、ソーセージなどに加工し、通常より高値で売却できる。
通常価格5G → 1レベル10G → 2レベル20G → 3レベル30G(以下略
【商人(マーチャント)】技能
値引き判定(目標値12・商人技能レベル+知力ボーナス+2d)に成功すると商品が半額になる。
値引き判定は1日に2回(朝と夜に1回ずつ)しかできない。
まとめ買いでも値引きは可能。
「えーと、狩人がセージとスカウト技能の代わりになるのね」
「死体から『最大HPの半分だけ肉を獲得』できるのもいいな」
「イノシシは体重の半分の肉を取れるそうなので、それを参考にしました」
「動物と幻獣からしか肉は取れないの?」
「取れません」
「……どの技能にするか迷うな」
取れる一般技能は10レベル分。
狩りをしないとクリアできそうにないので、判定に必要な狩人技能はレベル5にしておいたほうがいい。
問題は精肉業者と商人だ。
肉を高く売るか、商品を安く買うか。
それが問題だ。
値引き判定の目標値は12。
サンプルキャラだと知力ボーナスは2。
商人技能レベル3にすれば、知力ボーナス2と2dの期待値7で目標値に到達する。
これ以上あげる必要はない。
冒険者レベルが1上がるごとに、一般技能のレベルも1上げられるらしい。
本格的に金に困るのは中盤から後半になるはずなので、商人技能は冒険者レベルと一緒に上げたほうがよさそうだ。
とりあえず狩人5、精肉4、商人1にしておく。
「これでよし」
一般技能を取ったのでゲームを再開。
狩人技能でウルフを狩る。
相手はレベル1なので楽勝だ。
経験点1000を獲得(能力値の成長もできる)。
そして最大のお楽しみは肉。
ウルフの最大HP12の半分なので6HP。
精肉業者レベル4なので、狼肉をハムやベーコンに加工すれば1HPあたり40Gになった。
合計240G。
貴重な収入源である。
「ちなみにお店でクロスボウと矢を購入すれば、罠を設置することもできますよ? クロスボウと矢は再利用可能です」
「1つ買えばずっと使えるのはありがたいな」
「ただし罠発動後に敵から逃げると、罠に使ったクロスボウと矢は回収できません」
細かいところでプレイヤーに厳しい。
ころころ
「アンデッドのレベル2だからゴーストかゾンビね。どっちと戦えばいいのかしら」
「同じレベルに敵が複数いる場合、『プレイヤーの戦いたくない敵』を優先してください」
「……なにそれ、どういう基準?」
「たとえばレベル2のアンデッドの場合、『通常攻撃無効』のゴーストを優先してください」
「ええ!?」
「サンプルキャラだと『銀の矢』で攻撃するしかありませんね」
「……なるほど。だから種族決定の1dでアンデッドが2つあるのか」
「はい。動物が2つあるのもお金を稼ぎやすくするためですね」
○種族の出目
1動物 2動物 3幻獣 4植物 5アンデッド 6アンデッド
銀の矢は一本5G。
一発で敵を倒すのは難しいので、だいたいまとめて買うことになる。
一部位に装備できる矢の数は最大12本。
60Gだ。
HP回復のためのポーションや装備も買わないといけないので、序盤では痛い出費である。
「……ちょっと待って。ワーウルフも通常武器無効なんだけど」
「おまけに防護点9。確実に倒すんなら『魔力の矢』がいるな。魔法ダメージだから防護点を無視できる」
「一本1400G!? しかもこれ、敵に当たったら壊れて再利用できないじゃない!」
「半額なら700Gだ、ギリギリいける」
「ちなみに冒険者レベル×1000Gでフェローを雇えます」
「高すぎっ!」
「フェローは値引きできますか?」
「できます」
「よっしゃ!」
「ただし買い物とフェローの雇用は同時にはできません」
「割引さえできればこっちのものよ!」
魔力の矢、クロスボウの罠、フェローを駆使すれば制限時間内にワーウルフを倒すことも不可能ではない。
……金を稼げればの話だが。
「げ、最終日は満月の夜だからワーウルフの命中・回避判定が+1になるぞ!」
「いやー!?」
「そのかわり朝は命中・回避が-1です。戦うなら最終日の朝ですね」
「ワーウルフとはいつでも戦えるの?」
「ワーウルフは人間に変装してるので『真偽判定』をしてください。成功したら戦えます」
真偽判定は冒険者レベル+知力ボーナス+2d。
普通にプレイすればワーウルフのほうがレベルが高いので、判定の成功率は低そうだ。
とことん意地の悪いゲーム設計である。
……結局、初プレイでは二人ともワーウルフに食われてしまった。
無念。
クリアできる気がしない。
「では一息入れましょう。チョコビスケットとコーラをお願いします」
「あいよ」
刑務所ではチョコビスケットとコーラで映画鑑賞会をやるらしい。
映画会に参加できるのは模範囚だけであり、チョコビスケットとコーラは甘味に飢えている囚人にとって垂涎の的なのだ。
ちなみにチョコビスケットとは何も関係ないが、ソードワールドの世界には『アルフォート』という王国がある。
繰り返すがこのチョコビスケットとアルフォート王国は何も関係ない。
「ソロプレイでは厳しそうなので、2人でセッション方式にしますか?」
「セッションにしたらどうなるの?」
「狩るモンスターを自分で選べます。狩りたいモンスターの足跡が見つからなかったらランダムになりますが」
「冬眠してる熊を狙ってもいいってことですか?」
「問題ありません」
「経験点は?」
「冬眠中とはいえ、熊なので2000点です」
「よし!」
冬眠中の熊ならレベル差があっても、比較的安全に狩れるはず。
これならいけそうだ。
「ではキャラメイクしてください」
「はーい。……ふふふ、銃と魔法さえあればこっちのものよ。遠距離から狩りつくしてやるわ!」
「魔法は声を出さないと発動しませんし、銃を撃つと自然界には存在しない臭いが発生するので、弓矢より気づかれやすくなります」
「ええ!?」
「ならクロスボウにします」
「クロスボウは金属部分が多すぎますね。モンスターは金属の臭いに敏感なので、判定でマイナス修正になります。金属を使用する場合は『地面に1日埋めて消臭』してください。もちろん隠蔽判定に失敗すると、地面に埋めたアイテムは盗まれてしまいます」
「そういえば人間が埋めた物をイノシシが掘り返すって狩り漫画でもいってたわね」
「……いやなところでリアルだな」
「あくまで選択ルールなので、面倒ならこのシステムは無視して構いませんよ?」
「やります」
そのほうが雰囲気も出る。
基本的に矢じりも金属製なので、弓矢でも新しい矢を買ったら地面に埋めて消臭しないといけない。
もちろん銀の矢と魔法の矢もだ。
……隠蔽判定に失敗して魔法の矢が盗まれたら死ねる。
「オススメのキャラ構成は?」
「もちろん人間です。種族特性の『運命変転』で1日に1回、行為判定のサイコロの目を引っくり返せますから。それとプリースト技能を2にすれば、『ミルタバル』の特殊神聖魔法『リトライ』で1日に1回技巧判定を振りなおせますよ? このゲームシステムで振りなおせるのは隠蔽判定と罠設置判定だけですが」
「時間経過の激しいシステム向けのキャラね」
「……さすがに2人プレイでこれはやりすぎだろ」
タイムリミットは10日だから、種族を人間にすると10回サイコロをひっくり返せてしまう。
2人とも人間なら20回だ。
……1回のセッションで20回はありえない。
ソロならともかく2人だと完全にバランスブレイカーだ。
とりあえずミルタバルを信仰するだけにしておく。
「さすがにグリズリーはレベル差がありすぎるから、最初は弱いやつを中心に狩ろう」
「じゃあウルフね」
ころころ
「番(つがい)らしきウルフを発見しました」
「ばーん!」
射撃であっけなくメス狼が落ちる。
「オスはメスに駆け寄ります」
「え、こっちに襲い掛かってきたり、逃げたりしないの?」
「一部の動物や幻獣は、仲間が撃たれたらそれを助けようと駆け寄ります。似たような例だとミッテルというカモがいますね。ミッテルはオスとメスがつがいで行動しているんですが、メスが撃たれたらオスは駆け寄るそうです」
「オスが撃たれたら?」
「もちろん逃げます」
「ひどっ」
「なので、こういう場合はメスから撃つのがセオリーですね。今ならオスを撃ち放題ですよ?」
「後味わる……」
「……スナイパーになった気分だな」
スナイパーは殺せる敵も殺さない。
生かしておけば、その兵士を助けるために救援が駆けつけるからだ。
助けに来なければもう一発撃つ。
致命傷にならないように、敵に悲鳴を上げさせ、助けに来るように仕向ける。
こういう残虐な戦術を使うため、捕虜になったスナイパーは悲惨だ。
楽には死ねない。
仲間の恨みを晴らすため、ありとあらゆる拷問をされて殺される。
ころころ
……2人がかりで哀れなオスウルフを射殺した。
南無。
「これ、高所に陣取って撃つこともできるの?」
「登攀(とうはん)判定に成功すればできます。ただ場所によっては昇り降りするときに敵から丸見えになりますし、PCが自分の手の届かない場所にいると判断したら敵は逃げます」
「ですよね」
「樹の上に登って撃つぐらいなら特に問題はありません。野生動物は地面に残った臭いを追跡しますから、意外と樹の上は死角なんです」
「へー」
その後も地道にレベルを上げるため、狩りを続けていく。
ころころ
「げ、1ゾロ」
「『バックトラック』ですね。敵に先制を取られました」
「あ、それも漫画で見たことある。足跡をごまかすやつでしょ」
「『留め足』ってやつだな」
バックトラックは野生動物が『後ろ向きに自分の足跡の上を歩き』、横にジャンプして足跡をごまかすことだ。
足跡が途中で途切れてしまうので、足跡を頼りに追跡していたハンターは相手を見失ってしまう。
○バックトラック
狼……………
←進行方向
※…は足跡
○
↑ジャンプ
……狼………
進行方向→
後ろ向きに自分の足跡の上を歩き、横に飛んで逃げる
後ろから追いかけてきたハンターは、足跡を追うため狼を見失ってしまう(消えた足跡の延長線上に狼がいると思ってしまう)
この場合、バックトラックで足跡を偽装したモンスターが、後ろから追跡してきたハンターを逆に後ろから襲うという展開なのだろう。
相手が低レベルなので、先手を取られても大してことはなかった。
サクッと殺して皮を剥ぎ、解体してハムに加工する。
ころころ
「グリズリーの足跡を発見しました」
「出た!」
足跡追跡して巣穴を探す。
「巣を発見しました」
「クマを誘い出して、巣から出てきたところを一撃で脳天を撃ち抜こう。クマ猟の基本だ」
「……さすがに一発で倒すのは難しいですね。ただレベル差があっても狭い巣穴ですから、そこに足止めして『狙撃』すれば倒せないこともありません」
狙撃は戦闘特技の1つ。
目標値+3以上で命中判定に成功すれば、ダメージが倍になる強力な技だ。
回避判定がマイナス修正されているので、格上のグリズリーにも攻撃は当たるはず。
この場合、目標値+3以上の達成値になったら一撃必殺になるのだろう。
「たしかハグする習性があるんだよな。それで足止めしよう」
「ベアハッグのこと?」
「ああ」
巣穴の奥にいると、外からでは狙い撃つのが難しい。
クマを巣穴の外に出す必要がある。
だが外に出すぎるとこちらが危険だ。
だから必要以上に外へ出してはいけない。
「巣穴の前に邪魔なものを置いても、クマはそれを前に吹っ飛ばしたりしない。ハグしようとするんだ。つまり巣穴から飛び出すまでに時間がかかる。そこを狙い撃つ」
「へー」
隠密でそーっと巣穴の前に柵のような木材を設置し、気づかれないように狙撃ポイントへ戻る。
これで準備は万端。
「クマー!」
大きな音を立ててグリズリーを巣穴から誘い出す。
「グリズリーが巣穴から顔を出して、仕掛けをベアハッグしました」
「狙撃(ソゲキ)!」
ころころ
「目標値+3ですね。矢がグリズリーの脳天を撃ち抜きました」
「やった!」
事実上のイベント戦闘とはいえ、まさか本当に一発でやれるとは思わなかった。
恐るべし狙撃。
「では判定を」
「ここで2d?」
なんの判定かわからないながらも2dを振る。
ころころ
「お、6ゾロ!」
「残念ながらこれは生死判定です」
「げ!?」
「6ゾロが出たのでグリズリーは『死んだふり』をしていたことになります。HP1で復活しました」
「ぎゃー!?」
HP1とはいえレベル差がありすぎる。
しかもここからは通常戦闘だ。
ころころ
「ひらり」
……こちらの攻撃は当たらない。
絶体絶命だ。
「こうなったら最後の手段よ!」
「何する気だ?」
「オスをオトリにして逃げる」
人間界も自然界も男に厳しい。
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