第124話 民宿(民泊)派かホテル派か


 旅は宿泊が大事と前回述べましたが、宿泊先選びも大切です。なぜなら旅行体験が全く異なったものになるからです。


 その意味で僕は民宿を推します。海外のような広大なラグジュアリーホテルなら良いのですが、日本のビジネスホテルで一息つくなら民宿に泊まりましょう。


 経験は10回にも満たないですが民宿での経験は外れたことがありません。特に真冬の下呂温泉(岐阜)と、真夏の五島列島(長崎)で泊まった民宿は素晴らしかった。

 岐阜では雪の中で道に迷い宿に電話すると、タクシーを呼んでくれた上、ご厚意で代金も頂きました(当時は学生だったので大変有難かった)。民宿前でエガちゃんスタイル(半裸ヒートテック)でかまくらをつくり、エガちゃん軍団で雪合戦をして、凍えながら相撲を取っても、暖かく見守ってくれ、素泊まりだったにも関わらず温かいおにぎりと朴葉ほおば味噌を振る舞ってくれました。ツアーバスから外国の方々が僕たちを見て手を振ってくれたりしたのですが「日本人は雪の中でも半裸で相撲を取る」と誤解されてないかだけが心配です。

 長崎では近場の釣り場と穴場の海水浴場を教えてくれ、毎日美味しい海の幸とビールを楽しめました。バルコニーに水着をみんなで干す作業が地味に好きです。暮れ往く山と海の前で、涼しい海風を浴びて眺める空。ぽたぽたと落ちる雫と共に、僕らの背中に乗った日常の重みも落ちていくようでした。綺麗な畳の間で心地好いけだるさを感じながらごろごろしていると、夕餉ゆうげの匂いが漂ってきます。どこかで虫が鳴き、鳥が飛ぶ。既に三十を過ぎた先輩たちと僕の6人は、この時少年に戻れました。唯一の宿泊客だったので、無駄に女将さんに話しかけ、ビールを何本も頼みます。楽しい食事でした。


 民宿の良い所は、人とのふれあいがあり、おばあちゃんの家のような安心感があるところです。これはホテルでは経験出来ない僥倖と言えるでしょう。思いがけない出来事があるので、ホテルよりも思い出深いものになることが多いです。


 さて、海外旅行中の宿泊ではAirbnbエアビー(民泊サイト)を利用します。ホテルに比べて料金が安いことが大きな理由ですね。事実、オクトーバーフェスト時期のミュンヘンはホテル代が高騰し、一泊200~400ユーロほどしたのですが、僕たちはAirbnbで一泊60ユーロほどの所に泊まれました。

 値段はもちろんですが、僕が民泊を好むのはやはり「現地の生活を感じられる」からです。


 Airbnbの宿泊タイプは大きく二つに分かれ、その中でいくつかのスタイルがあります。

 

 ・ホストが同居するパターン

  - 家の一室貸し

  - 共有スペース有りの別棟貸し

  - 一軒家のゲストルーム(離れ)貸し切り


 ・ホストは別の所に住んでいるパターン

  - 家の一室貸し(その他旅行者とシェア)

  - 共有スペース有りのアパート一室貸し

  - まるまる貸し切り

 などです。

 

 ホストの居住に関わらず、それぞれ下に行くほどプライベートが確保されています。


 ただ民泊の場合は、衛生観や文化が違ったりするので、相当な生活感を醸している家も多々見てきましたけどね。冷蔵庫に食材が詰まっていたり、クローゼットに服が掛けてあったり、棚の上にホコリが溜まっていたり、部屋の隅に髪の毛が溜まっていたり……。人のベットで寝るのは無理!! という人は向いていないと思います。もちろん綺麗で素敵な部屋もあるのですが、直前だとホテルと変わらない価格だったりするのでタイミング次第です。ただ、経験上ホスト同居型は綺麗です。現地でもてなす形になるからでしょうね。

 民泊は生活感が気にならない人は選択肢が増えて良いと思います。ドイツでは友達と家にあったギターを弾き鳴らし、浴槽にバスボムを入れて優雅に暮らしました。自由なのも(貸し切り)民泊の良い所です。


 旅先で日常を振り払うには民宿(民泊)が一番。僕が保証します。それ以外の保証はありませんが、日常を振り払う保証が欲しければ野宿をオススメします。あなたが特殊な拳法家ならなおさらオススメします。

 

 


 そして、僕はスイスで民泊の神髄を経験することになるのです。

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