第123話 旅先で最も優先すべきもの
旅行で一番大切なのは宿の確保です。衣食住では住の確保。これがままならないととてもじゃないですが、旅なんて出来ません。
服が足りなければ買うか洗えば良いんです。お気に入りの服で街を歩くのは気持ちが良いですが、忘れたとしても和服とかではない限り類似品はお金を出せば手に入ります。また、レストランの予約を忘れても入れる場合はありますし、美味しいお店は沢山あります。どうしても行きたい人気店じゃない限りは無理して準備する必要はありません。
しかし、泊まる場所だけは忘れてはいけません。泊まる場所を確保出来なければ悲惨です。メルヘン街道(ただの道端)に車を停め「ここをキャンプ地とする」とディレクターが決定し、タレントが王子の恰好のまま極寒の車中でまんじりともせず寝れない夜を過ごす羽目になることもあるのです。(※1)
ゆっくりと眠れる場所がある。それがどれだけ大切なことか、関西から北海道への自転車旅行で身に沁みました。全ての費用を合わせて一日三千円の予算だったため、野宿以外の選択肢はありません。本州ではテントを張れる場所も少なく、公園のベンチの上だったり、駅裏の軒先だったり、人に迷惑が掛からず雨を凌げる場所で寝ます。
地べたに銀マットを敷いて寝るのはすぐ慣れるのですが、慣れないのは物音。風の音や、何かの動物の鳴き声。野犬や猪に襲われる可能性が頭をよぎります。しかし、何よりも怖いのが車と人の足音です。寝る時は無防備ですから、何をされても後手に回る。先手を打てるのは特殊な拳法を身につけた人だけです。
あの夜を過ごしたことがある人なら、建物の中で寝ることがどれだけ安心するかお分かりでしょう。もし興味があれば実践あるのみです。実感を伴って日常の幸せを噛み締めることが出来ます。
職務質問を受けてしまった時は胸を張ってこう答えましょう。
「幸せを噛み締めるためなんです!!」
お巡りさんも幸せを考え直す契機になるかもしれません。責任は取りません。
※1 ここをキャンプ地とする
北海道の番組「水曜どうでしょう」内の企画「ヨーロッパ・リベンジ」にて発せられた名言。飯を優先したがために宿が無くなったというケーススタディを提供してくれました。大泉君が車内から恨めしそうに見ていたのは笑えませんが、大笑いしました。
ちなみに、ドイツに住んでいる友達が聖地巡礼をしたのですが、普通に走っていたら間違いなく見落とすほど何もないただの道端だそうです。そこで写真を撮っている日本人はドイツ人から不思議な目で見られたことでしょう。ただ、僕はその写真をみて腹を抱えて笑いました。
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