第121話 メイド喫茶体験――初めてのメイド喫茶
先日、日本に少しだけ顔を出した。最終日は午前中が空いたので、先輩と秋葉原に寄ることにした。
朝と呼ぶには少し遅い十時ごろ。小腹が空いた僕たちは吉野家に入る。牛丼(小)つゆだく、生卵、ビールを注文。しばらくして目の前に出てきたのは、美味しそうな匂いを立ち昇らせる丼ぶり。茶色く染みた牛肉と玉ねぎの上に紅ショウガを乗せ、唐辛子を振りかけ、卵を落とす。しとしととつゆを染み込ませた温かいご飯と一緒に肉を口へと掻き込み、ビールでくいっと喉を潤す。
「美味い」
思わずそんな言葉が重なる。言葉に出るほど美味しい。感動すら覚えた。
改めて思うが、日本の食文化は例を見ないほど高度でコスパに優れている。欧米ではこの美味しさのものがビールをつけて数百円なんてあり得ない。イタリアンでも、カレーでも、ラーメンでも、寿司でも、居酒屋でも、定食屋さんでも何でも、日本の食はレベルが高い。世界でもトップレベルのコスパの良さ。日本の食は美味しさに対して安い。これは間違いない。
牛丼の美味しさに満足した後、ブックオフでコミックを、ドンキでお土産用の食料と酒を買った。荷物をコインロッカーに詰めて向かったのは秋葉原でも人気のメイド喫茶「
そのメイド喫茶はビル全体がお店となっていて、7階迄の各フロアの空き具合を見て、自分で選んで入るのだそうだ。メイド喫茶初心者の僕達はエレベーターで一緒になった出勤中(?)のメイドさんにシステムを教えて貰って二人で「へぇー」と間抜けな声を出した。
教えて貰った通り、一先ず7階に上がり、待っている客の様子を確認しながら下の階へと降りていく。4階迄降りると待っている客がいなかったので、その階に入ることにした。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
目の前でメイド服を来た女性にそう迎えられると大抵の人はどうすれば良いのか分からなくなり、一抹の恥ずかしさを胸に軽く会釈するようになる。中では所狭しとメイドさんがご主人様たちをもてなしていた。盛況である。この喫茶は基本一時間の時間制で、注文に応じてメイドがもてなしてくれるほか、ドリンクや記念撮影などを含めたセットメニューも人気のようだ。
全体のシステムが分からない久しぶりに帰宅したご主人様には最初にメニューやコースを丁寧に説明してくれる。しかし、つどつど「萌え萌え」の言葉が入ったり、ゆめかわいい言葉で現物を表現しているので、分かったような分からないような不思議な感覚に陥った。これがトリップというものか。
僕らはモーモー
汲んできてもらった「萌え萌えウォーター」を飲みながら、ドリンクが来るのを待つ。改めて店内を見回すと、小ぶりな喫茶内には男性の客はもちろん、女性の二人組や海外の旅行者の姿もあり、様々なメイドさんがご主人様と盛り上がっている。前方には小さいお立ち台がある。記念撮影の時は名前を呼ばれて、そこで気に入った女の子と写真が撮れるらしい。写真を撮るのはまだしも、お立ち台に挙がってご主人様たちの視線を浴びながら撮影されるというのはお米の国から久しぶりに帰宅したご主人様にはハードルが高かったので、その光景を眺めながら「凄いですね」と先輩ご主人様と話していた。
しばらくするとメイドさんが注文した品を運んできてくれるのが目に入った。
お盆に載ったその姿はとても綺麗だと思った。
続く
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