要らないことばかり知って往く

第120話 透明な鼻水より黄色い鼻水


 僕は透明な鼻水より黄色い鼻水が好きです。ほら、あの壊れた蛇口からぽたぽたと流れ落ちる水のような鼻水ではなく、薄黄緑のジェルのような鼻水ですよ。


 皆さんはさらさらした鼻水とプルプルした鼻水、どちらが好きですか。と問われたらどちらを選ぶでしょうか。まず、こんな設問がおかしいと呆然とするでしょうか。それがまともな反応だと思います。嬉々として「プルプル!」とか答える人を知っていれば教えて下さい。僕と友達になれます。


 僕は重度の花粉症(アレルギー性鼻炎)持ちです。スギ・ヒノキはもちろん、ネコ皮屑、蛾、ハウスダストなどが駄目です。そのため花粉症のシーズンは辛い。くしゃみが止まらなくなります。5~6回連続でくしゃみをするのは当たり前。一日30回以上はしていると思います。ちなみに、くしゃみは一回で100mを走ったほどのカロリー(約4kcal)を消費します。(※1) つまり、インターバルを挟んで5~600mを小刻みにダッシュしながら仕事をしているのです。そりゃ、仕事も捗りません。

 そして、ぽたぽたと滴る鼻水。これが憎くて仕方がない。東京では朝からマスクをして通勤ラッシュに揉まれますが、マスクの下ではティッシュが鼻に詰められています。電車の中では鼻をかめないので苦肉の策で鼻血が出た時のようにティッシュを詰めます。乗り換えの度に新しいティッシュに替えますが、乾いていたティッシュはお浸しのようにその身に水分を吸い込ませています。ティッシュ消費量はスギ・ヒノキシーズンは爆上がり。一日一箱は当たり前。タバコか。鼻にホースを挿して一日中鼻水を採取し続けたら500mlのペットボトルはひたひたになるのではないか、と思えるほどに、とめどなくさらさらの鼻水が出続けるのです。

 

 何かの拍子にマスクが外れて、そこにティッシュを詰め込んでいる人を見かけても同情こそすれ変態とは思わないで下さい。必死に自らの肥満細胞が出すヒスタミンと闘っている戦士なのです。あ、笑っても良いとは思います。

 ちなみに、僕は変態なので変態と思っても間違いではありません。


 さて、翻って黄色の鼻水ですね。これは風邪を引いた時に特徴的だと思います。奇しくも僕は先日の旅行中、プラハの友人宅で突如39℃の高熱を出しました。旅程の貴重な一日を休養に充てざるを得なかったのですが、友人が日本から持ってきていた薬とパスタの元(※2)のおかげで、翌日の昼にはビールを楽しみ、10㎞ほど歩き回れるほど回復しました。

 

 そんな時に出るのが、粘度の高い黄緑の鼻水です。これはとても良い。何が良いか。


 一つ。鼻をかんだ時の爽快感。鼻の中の違和感がずるっと抜けていく快感。鼻が通る気持ち良さがある。


 二つ。ティッシュの消費が少なくて済む。透明度の高い鼻水は一度に大量には出ないので、必然的に何度もこまめに鼻をかむ必要が出る。対して、黄色い鼻水は一度抜けるとしばらくかむ必要が無い。この違いは出先では特に重要。


 三つ。回復の証左である。透明な鼻水はアレルギー反応、つまり免疫系の勘違いによるもので、必要以上に頑張って結果空回りしているだけ。対して、黄緑の鼻水になるのは細菌やウイルスと闘った白血球や免疫細胞の死骸によるもの。つまり、免疫が正常に働いている証。良くなっている証なのです。


 このように黄色い鼻水は透明な鼻水に比べて良いことが多いのです。


 花粉症の重さと症状は人によって違うので、鼻水の好みには様々な意見があるでしょう。ただ僕はこの旅の中で、黄色い鼻水が好きなのだ。と気付きました。


 海外にまで行ったのに、めちゃくちゃ人生の役に立たないことに気付いてしまって、他に何かないのか、と焦っています。





※1 くしゃみはとてつもないカロリーを消費します

くしゃみの雑学|健康の雑学|元気通信|養命酒製造株式会社

https://www.yomeishu.co.jp/genkigenki/trivia/140228/index.html


※2 風邪を治した、たらこパスタの元

友人が仕事から帰った時点で体温は38.7℃。とても外に食べに行ける状態ではなく、しぶしぶ近くのローカルレストランは諦めて、友人宅にあったペンネをたらこパスタの元で頂きました。幸い食欲はあったのでそれを平らげ、薬を飲んで、ポカリを飲んで静養していると、翌日の朝には36.7℃まで熱が下がっていました。

これはひとえに日本の味を食べたことで、体が「あれ? ヨーロッパの見知らぬ菌と闘っていたつもりだったけど勘違いだったわ!!」と思ったからに違いありません。たらこパスタの元と薬を分けてくれた友人には感謝です。

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