第118話 僕がエッセイを書く理由
今年の初めに気まぐれで登録したカクヨムでエッセイもどきを書き始め、早くも半年以上が経ちました。ここまでコンスタントに書けていることが驚きです。書きたいことって結構すんなり浮かんでくるものなんだなぁ、としみじみ振り返っています。
これが公開される頃にはウィーンで音楽とビールを、プラハで街並みとビールを、ミュンヘンでオクトーバーフェストとビールを、チューリッヒで自然とビールを存分に楽しんで来たことでしょう。そうした経験がまたネタを生み出すことを楽しみにしています。
さて、それにしてもツイッターでもなく、日記でも無く、連載型のエッセイをどうしてここまで気に入っているのか考えてみました。
間違いなく一番に挙がってくるのが、「口下手」だから。ですね。
僕は
だから、人との会話は基本的に何も考えないような他愛のないことばかりで、自分の考えや意見を伝えるのは苦手中の苦手としてきました。どうしても相手の顔色にビクビクして聞く方にシフトチェンジしてしまうし、そもそも相手が知らない話題なら話すことを止めますし。
しかし、文字を書いて公開するエッセイなら、その欠点を不器用ながらも埋める方法があるんです。語彙が貧弱ならば調べれば良い。内容があやふやならネットや本の情報で補強すれば良い。流れが悪ければ整えてやることが出来る。「しまった! ああ言えばもっと面白かった!」とか「この語句を遣えばもっと的確に言いたいことが伝えれたのに」という脳内反省会の頻度も減りますし、後から修正出来るのでスッキリするんです。
表現までの時間が取れるエッセイは性に合っているんでしょうね。
そして、一番大きいのは何を話そうが自由だということ。流石に友達や先輩との会話で「将来は犬になりたいんです」とか、「パンツは盗みません」とか、「落ち込んだらラピュタ王の真似をして自分を鼓舞してみて下さい」なんて話せませんから。どう考えてもヤバい奴ですから。そいつ。
僕は「趣味がぴったり合う人なんていない」もっと言えば「全く同じ趣味を持った人なんてこの世には存在しないのではないか」と思っているので、現実では広い話題を選びます。そうすると「木戸に立ちかけし衣食住」(※1)になりがちなんですけどね。
でも、ここでは恥ずかしげもなく全部話してしまっています。だって、読むかどうかの選択肢は読者の皆さんが持っているんですから、何を書いたって良いんです。性癖を吐露するだけで成り立ってしまいますから気負う必要がない。酷くピンポイントな僕の考えをばらまいても、その中から少しでも面白いと思って貰えるものがあれば成功なのです。色んな方がいらっしゃるので、大抵の人はスルーするであろう話題も拾ってくれるんです。人によって拾える場所がバラバラだとしても、僕にとっては満遍なく考えを見て貰っているのと変わりません。
だから、僕はエッセイを書くのです。
あ、一番大切なことが抜けましたね。言葉にせよ、文字にせよ、こうして何かを表現するのは自分を伝えたいからに他なりません。
僕を突き動かしているのは紛れもなく表現欲です。
僕はそれをエッセイに表しているというだけで、カフェでのお喋りだろうが、小説だろうが、音楽だろうが一緒だと思います。
イチローは欲にまみれている。
以前、引退会見のイチローを見てそう感じ、その姿に憧れましたが、ふと思いました。
僕は今、表現欲にまみれている。
だから、僕はエッセイが書けるのです。この表現欲に流されて行けばいつかは僕もイチローみたいに「欲にまみれた人」になれるのかなぁ。そうだったら良いなぁ。
そう願いながら、今日もキーボードを叩きます。
※1 木戸に立ちかけせし衣食住 (実用日本語表現辞典より引用)
――初対面の人やあまり親しくない人と会話する際の話題づくりに役立つとされ、記憶される「おまじない」の一種。「気象」「道楽(趣味)」「ニュース」「旅」「知人」「家庭」「健康」「性・セックス」「仕事」の頭文字を並べ、「衣食住」を付け加えた言葉である。「せ」を抜いた「木戸に立ちかけし衣食住」として記憶されることもある。
これ以外の話題は人によって地雷だったり、食いつきもしなかったりするので大変です。外れた時のダメージが大きいですからね、諸刃の剣と言えるでしょう。「連絡先教えて」と言ったら見事に自分に刃が刺さったことを思い出しました。
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