第73回 気付かなきゃ無いのと一緒
昔からしばしば考えることがありまして。
それは「気付かなきゃ無いのと一緒」ということなのです。
僕には霊感も特別な力も無いので、自分が気付かないものは関わりのないものだと思っています。概念として受け入れてないものは、という意味にもなりますね。空気とかは見えないですから。
この考えを導くのは、ちょっとした妄想からです。
僕は節足動物が苦手です。足が長いやつといっぱいある奴はほんとだめです。特に蜘蛛は身近なだけにキツイ。
この前も近くの国立公園でトレッキングしていたら、手のひらサイズくらいのね、毛がわさわさ生えた8本足のアイツが地面をスタスタ横切ったんですよ。心臓が止まるかと思いましたね。だって水族館とか動物園のアマゾンコーナーとかでしか見たことなかったんですから。
うわー、ほんとに野生にいるんだなーと理解すると、ごつごつした石と乾燥地帯の植物が生えた山自体が少し怖くなりました。
――あぁ、特別な能力があればなぁ。
半径10mの気持ちの悪い生物の息の根を止める能力
半径30m以内に不快と思う生物が入ってこない能力
とかね。
いやいや、それはご都合主義すぎるだろう。
じゃあ――全く気付かない能力とかならどうだろう?
考えてみてください、例えば、そうですね、虫は気持ち悪いのでアルパカにしましょうか。あなたの後ろをずっとアルパカが付いてきます。それは家の中でも、映画館でも、温泉に入っている時だって、あなたの近くにはいつもアルパカがいるのです。
しかし、そのアルパカにはある能力がありました。
それは「あなたに絶対に知覚されない能力」です。
視覚はもちろん、五感や論理的思考を用いたとしても、あなたは絶対にアルパカの存在には気付きません。周りの人は「あいつはいつもアルパカを連れているな」と思います。会社でも「アルパカに関する就業規則」が作成され、法律でもアルパカには不可侵の独立が認められました。しかし、周りの人間はそのことをあなたには絶対言いませんし、素振りも見せません。あなたはアルパカマスターの名を思うがままにしていますが、当人は至って普通の社会人と同じように過ごしているのです。
アルパカはあなたにとって、完全に客観的に存在し、あなたに何の影響も及ぼしません。アルパカという概念は知っていても、その存在を知覚できないのです。
僕はこう考えるにつけ、存在はしても本人が全く気付かないのであれば、無いのと一緒じゃないかなぁ、と思ってしまうのです。
だから僕にとって、幽霊や霊魂は無いのと一緒です。
まぁ、こんな考えはすぐに矛盾をはらんで破綻するのですが……。
だって、僕は地球外生命体はいると信じていますし、お腹がピンチでどうしようもなくなったら何らかの神に祈りますからね。それに、幽霊とか、見えないものが見えるお話は大抵切なくて大好きです。
でもね、やっぱり気付かなければ、その人にとって無いのと一緒だと大まかには考えています。物理的なものではなく、言葉とかもそうですね。うん、いつぞやの繰り返しになっちゃったな。言葉にしなきゃ伝わらないってやつ。上の例のアルパカを「想い」とか「誰かの感情」とかにして読み替えて貰ったらいいですね。
自分からするとあるんだけど、それは誰かにとっては無いのと一緒だ、ってことです。逆もまた然り。
――ん、だから? 何が言いたいの?
という至極もっともな意見が聞こえてくるようです。
じゃあ、〆に入りますか。
僕か言いたかったのはこれだ。
「男だからって僕に虫の退治を頼むんじゃない」
頼むよぅ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます