第58回 僕はただの猿なんだよ


 僕は音楽が好きです。好みは結構偏っているのは分かりますが、ひたすら好みの曲を紹介するエッセイを書こうかと思っているくらいです。いや、先に小説書けよ。


 ともかく、創作に関わるきっかけとなったフレーズがあります。


 消して、Rewriteするだけじゃないんです。

 彼らの曲は退廃感と無力感が良いんです。以下、歌詞より引用。

 

 


 息を吸って 生命いのちを食べて

 排泄するだけの猿じゃないと言えるかい?


 ――新世紀のラブソング(作詞:後藤正文)




 ASIAN KUNG-FU GENERATIONの名曲ですね。この曲は好みが分かれると思いますが、この部分の破壊力は凄まじかった。


 僕はこう問われたら、面と向かって”Yes”と言える自信がありません。

 

 新しい生命いのちを生み出している訳でもない。

 ただ毎日ご飯を食べて

 美味しいお肉を食べて

 ただ一人で息をしているだけだ。


 毎日誰でもできる仕事をして

 たまに友達と遊んで

 二日酔いと便意に襲われて

 便意のゼロサムゲームを考えているだけ。

  

 僕は生き物に、あなたを殺します。と感謝して毎日消化しています。それに何の疑問も持ってませんし、持とうとも思いません。でも、じゃあそれ以外に何をしているんだと言われると、何もしていない気がします。ただ、生きているだけ。それだけで僕は大量の生命を消化していく生き物なんだな、と理解しているだけです。


 この曲を初めて聞いた時、僕はまだ青い青い学生でしたが、この食べた生命で一体何が出来るんだろうとその時感じた疑問は今でも残っています。


 それはお酒が飲めるようになっても、仕事を始めても何も変わりませんでした。

 

 でも、疎遠になっていく知り合いや、遠方からでも遊びに誘ってくれる友達を見て。たった一回だけでも親切にしてくれた方や、来ると思っていなかった別れを経験して。こうすればただ生きているだけではないのかな、とおぼろげながら思えるものが持てるようになってきました。

 

 また、こうして何かを残しているときには、この問いに向き合える勇気が湧きます。


 僕は今はただの猿ですね。

 でも、書くことで、ほんの少しだけ人間に近づける。そんな気がするんです。

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