第44回 おしりダンスをしたので敷居が高いんです


 僕は保守的コンサバなので、本来の意味合いで使われていない言葉をみるともやもやします。「言葉はいきものだ」と言われますが、本来の意味をに異なる意味で使いたくないなぁと思います。


 典型的ですが「ちょっとそのお店は敷居が高いなぁ……」と言われると、彼はあの雰囲気の良いお店で、半裸でおしりを叩きながらダンスでもしたのだろうか、と心配になります。「不義理をしてその人の家に行きにくい」という状況がなかなか無いので、使いどころが難しい表現ですよね。


 間違えて女子トイレに入ってしまって、女子に「確信犯でしょ!」とからかわれたときとかもびくっとします。僕はなにを信じていると思われていたのでしょうか。女子トイレに入るんだという信念なんか持っていません。誤解です! むしろ、故意犯よりも傷つきます! はっ、それが目的なのか?!


 ちょっと極端に表現してみましょうか。


 うがった意見が出て会議が煮詰まったので、潮時だと思い、おもむろに結論を言い放った。

 いいですね、こんな会議に出てみたいものです。


 

 こんなことドヤ顔で語っていますが、もちろん僕も間違いを指摘されてはっとすることが多いです。顔から火が出るほど恥ずかしいですが指摘は大歓迎です。


 もしかすると「お前は何さまなの?」と思われるかもしれません。自分はちゃんと使えているのかよ、と。はい、コメントなりなにか袖の下を頂ければ多少の間違いには目をつぶります。はい、お代官様です。

 

「ご相談とはなんでしょうか、お代官様」

「この前、気に入っていたお店で酩酊して思わずおしりダンスをしてしまってな。敷居が高くなってしまったんだ……」

「そうですか、ではあえてもう一度ダンスをして失笑を誘うのはいかがでしょう」

「むむ、成功して爆笑が起こればいいが、憮然とされたらどうしようもない」

「それでは姑息な手段ではありますが、にやけて誤魔化すというのはいかが?」

「流石、世間ずれをしているだけある。それでいこう。それで、この見返りはなにを所望か?」

「いえいえ、ただ、役不足の同僚を更迭こうてつして頂きたいのです」

「ふむ、私の下に役人がいるにもかかわらず……。お主も悪よのぉ」

「いえいえ、お代官様ほどでは……」


 後日、女装をしてお店に現れたお代官に失笑は起きたものの、あえなく出禁となった。その横で、重役に抜擢されたかつての同僚とともに、側近が「やりすぎですよ」とため息をついていたとさ。

 


【用語紹介】 コトバンク 主にデジタル大辞泉より引用

・確信犯  :道徳的、宗教的または政治的信念に基づき、本人が悪いことでないと確信してなされる犯罪。


・うがった :人情の機微に巧みに触れる。物事の本質をうまく的確に言い表す。

・煮詰まる : 討議・検討が十分になされて、結論が出る段階に近づく。

・潮時   :物事を始めたり終えたりするのに、適当な時機。好機。

・おもむろに:落ち着いて、ゆっくりと行動するさま。


・失笑   :思わず笑い出してしまうこと。おかしさのあまり噴き出すこと。

・爆笑   :大勢でどっといっせいに笑うこと。

・憮然   :意外な出来事に驚いて茫然とするさま。また、失望したり、どうしようもなかったりしてぼんやりするさま。

・姑息   :一時の間に合わせにすること。また、そのさま。一時のがれ。その場しのぎ。

・にやける :男が変にめかしこんだり、色っぽいようすをしたりする。

・世間ずれ :実社会で苦労した結果、世間の裏に通じて悪賢くなること。

・役不足  :力量に比べて、役目が不相応に軽いこと。

・更迭   :あらためかえること。あらたに入れかわること。特に前任者がやめて新任者がその位置につくこと。いれかわり。異動。交代。



 言葉って面白いですね。

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