第41回 「いただきます」は、あなたを殺します、みたいな。

  

 ――自分の中での食材に対する「いただきます」は、「お命頂戴つかまつります」って感覚が近いかもしれない。あなたを殺します、みたいな。

 荒川 弘 (2014) 銀の匙 Silver Spoon 単行本11巻 折り返しコメント


 僕は荒川 弘さんが好きです。鋼の錬金術師と、銀の匙しか読んでいないミーハーですが……。


 その中でも、冒頭のこのコメントには非常に感銘を受けました。荒川さんが小さいころから畜産とともに生きてきたからこその発言であり、作品のテーマそのものだと思います。


 僕は牛も豚も鶏も大好きです。塩タンも豚カツも鶏モモ串でもなんでも、おいしいおいしいとお箸がとまりません。特に鳥肉が好きですね。鴨とか最高です。あの可愛らしいおしりに、よちよちとついていくすがた。畑のなかでせっせと害虫を食べてくれる僕たちの可愛い味方。あぁ、食べてしまいたい。


 うん、食べるんですよ。僕は。

 

 食べちゃうほど可愛いんです。


 先日、近くの牧場へ足を伸ばして、馬に乗って散歩してきました。銀の匙で馬のことを少し知ってからずっと乗ってみたいと思っていたのです。実際にまのあたりにしてみると、なんて大きくて、愛らしいのでしょう。すらっと伸びた四肢に、優しそうな目。初めて会う見知らぬ男性の手綱にもしっかりと応える賢さ、かぽかぽとのんびり歩く穏やかさ。


 馬って可愛いな。


 背中にゆられながらずっと思っていました。

 同時に、僕は彼の背中をさすりながらこうも思っていました。


 それでも僕は馬を食べるんだなぁ。もしキミが肉になるしかなくなったら、僕が食べてあげたいな。


 

 この考えに賛否両論あるのは分かりますが、ここでは倫理の話をしたいのではありません。荒川さんのコメント読んで、ひどく感動したということだけです。

 

 小学校の自由発表で、「生きた鶏のさばき方」を調べて発表したのを覚えています。モザイクでしたがご丁寧に画像とともに、絞め方から各部位の切り離し方までを解説したウェブサイトがあったのです。その時はおもしろ半分でしたが、それがきっかけで次第に大好きな鶏をさばいてみたいな、と思うようになりました。

 

 自分でさばいたら、全てのお肉はもっとおいしいと感じるに違いない、という確信があります。


 そして、もっと心のこもった「いただきます」が言える人になりたいのです。

 



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