第35回 舌バカ
自炊をしようと思い立って、半年以上が過ぎました。せっかく、キッチンすら無い狭い部屋から引っ越して、立派なキッチンがある家に住んでいるのに、作るのは炒め物と鍋ばかりですよ。昼とか毎日インスタントです。
料理が上手な人ってかっこいいですよね。僕は今の家で一人暮らしをするまで、自分で料理をする必要がありませんでした。寮で食事が出てきたからです。そうは言っても、なんやかんやで追い詰められたら出来るタイプだと思っていたんです。しかし、ふたを開けてみるとびっくりするくらい何もできない!
玉ねぎの切り方すらわかりませんでした。最初は切ればいいんでしょ、切れば! と意気込んで、まな板の上の丸い玉ねぎと向き合ったら、途端に路頭に迷いました。あれ、炒め物は繊維に沿うんだっけ、沿わないんだっけ?
迷いに迷いました。迷い包丁です。初めてしました、迷い包丁。
そして、めちゃくちゃ塩辛い炒め物が出来上がりました。なんだこれ、味自体は悪くないけれど塩辛すぎて、すぐに飲み物欲しくなる! びっくりするくらいめっちゃビール進む! っていう絶対、体に悪い料理が生まれました。あれは、絶対です。独立してます。
それから濃さはなんとなくわかってきたものの、レパートリーは増えません。だって、調味料使うだけで美味しいんですもん。今の調味料はすごいね! 科学の力!
ごま油に味覇、鶏ガラ、醤油みりん酒のどれかで大抵なんとかなるよ。時々、ホイシンとか、オイスター入れときゃ飽きないし。
そう考えると、僕は舌バカなんだろなぁー。毎回、実感します。
基本的に何食べても美味しいと感じるんですよ。ラーメン好きな友達と話題のお店に食べにいって、帰り際に「いまいちだったなぁー」と聞いても、そうなのかな、美味しかったけど……。と思うのです。何が美味しくて、何が美味しくないのかがラーメンでは分かりません。
この店のこれはマズい! と言われて恐る恐る食べた料理も大抵そうでもなかったりします。初めて作った見様見真似チャーハンより全然美味しかったです。
だから、自分の適当な料理とか冷食で満足なんでしょうね。そもそも、会社帰りにスーパーに寄るのが一番面倒なんですよ。特に今は車通勤かつ、一本道なので。――あぁ、このまま真っすぐ進めば家なのに、左折してスーパー寄らないとなぁ。と憂鬱になります。帰ったらそこにある料理が恋しいですね。
おかんのおいしい手料理がまた食べたいなぁ。
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