第31回 恋人を射んと欲すれば先ず友を射よ


 耐え性が無い割には、機会を伺うことには万全を尽くす。これは数少ない美点だと自負しています。特に男女のような繊細な関係では猶更です。


 今日は、小・中で学んだ虎の子の一つをお伝えしたいと思います。気になる子と仲良くなる方法。僕はこれで実際に仲良くなれました。少しでもお役に立てれば光栄です。

 

 さて、何もない状態では動きようが無いので、まずは気になる彼女と仲が良い男友達との接触を図ります。ここでその男と馬が合わなければ、一旦距離をとります。無理に進める必要はありません。


 しかし、距離を取った場合でも、呆ける時間はありません。その男の良い所を探すのです。気の合うところがあれば、それを深堀りします。類は友を呼ぶといいますからね。気になる子と共通の話題になる可能性がある、先を見据えたタスクです。


 ある程度仲良くなれればそれで良し。既に玉は磨かれ、共通の話題の下地は出来ているはずです。次に狙うべきは彼女の女友達です。


 社会では地位があるだけで一定の魅力を感じます。そこで、狙うのは彼女を取り囲む社会、つまり友人間の評判です。仮に好みでは無かったとしても、周りに「あの人良くない?」と囁かれれば、不思議とそう思えてくるのが人心というものです。


 好みで無くとも魅力を感じるのですから、自分を磨きつつ、高名を得れれば正に獅子にひれ、虎に翼。それを利用するに越したことはありません。


 友達には愛想良く挨拶して、笑顔は絶やさないようにしましょう。彼女には精悍でキリッとした顔を見せます。誰にでも見せるような、ふよふよとした笑顔ではいけません。また、声をかければ良いものでもありません。軽薄さは命取りなのです。「あいつチャラい」というイメージがついたら最後、恐ろしい速さで拡散し、定着してしまいます。


 明るくて社交的、しかし、凛としている。悪いイメージの定着に気を付けて、態度を変えるのです。このギャップが大切です。


 デカルトが基本六情念で最初に挙げたように、「驚き」はすべての情念のトリガーになる原始的な情念です。


 ギャップは、驚きを生み出すものです。予想を裏切る現実に心は動いてしまう。悪い方向にも効く、諸刃の剣であることはご注意下さい。しかし、凛々しいが陽気であることのどこがマイナスでしょうか。


 そこまでたどり着ければ、後は必要ないでしょう。もう懐に入ったも同然です。





 しかし、教科書の通りに事が運ばないのは世の常ですね。


 義務教育を終えてから、僕はそれを身をもって知っていくことになるのです。


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