第15回 宙の境界


 少し前の話。

 ドライブのときにいつも通る好きな場所があった。


 雲一つない快晴の日。

 こんな陽気のいい日だと不思議と外の空気を吸いたくなる。


 僕はその場所を通って少し離れた街に向かう。

 遠くの方に山が連なる、高い建物は無い田舎の片道一車線。


 その途中、平屋の家と家に挟まれた、少し大きめの一角。

 本当に一瞬だけれども、宙の境界がなくなる場所。


 快晴の日は、そこに張られた水に青い空が流れ込んでいる。

 綺麗だと思った。


 それから、そこは良く晴れた時のお気に入りの場所になった。


 ある気持ちのいい快晴の日。

 先輩と二人でドライブも兼ねて遊びに出かける。


 僕の好きなスポットがあるんですよー。

 好きな音楽を掛けて、ふんふんと二人で鼻歌を歌いながら運転席で言う。


 もう少しですー。ほら!

 塀が切れた一瞬、左手の道路の足元から空が続いている。


 その日も宙の境界は溶けて、綺麗だった。

 先輩は、おー。と感嘆の声を漏らした後に言った。

 

 えっ、田んぼ?

 驚いているうちに、お気に入りのスポットは流れていった。


 そうなんですけど! 綺麗じゃないですか?

 うん、まぁ、綺麗だった。


 でしょー。

 でも、田んぼじゃん!


 そう言って僕たちは笑った。







 P.S.

 沖縄出身かつ田舎暮らしが長い先輩には、こんな風景が日常なんだろなーと思っただけ。


 おわり

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