第14回 好きな言葉

 苦手な言葉があれば、好きな言葉もありますよね。


 僕は「適当」という言葉が好きです。


 適当 (コトバンク 大辞林より)

 ①ある状態・目的・要求などにぴったり合っていること。ふさわしいこと。

 ②その場を何とかつくろう程度であること。いい加減なこと。


 あぁ、全然違う意味が同居している……。

 その使いやすさと矛盾の気持ちの悪さ。魅力的ですね。

 悪い意味で使われることが多いですが、良い言葉ですよ。これ。


 この言葉が好きになったきっかけは、スタジオジブリ「ホーホケキョ となりの山田くん」です。この映画の公開当時、僕はとても小さく、ポケモン映画(多分、ミュウツーの逆襲)を見たいと主張しました。ですが、姉と母との多数決に負け、しぶしぶ別のシアター席に座ったのです。しかし、100分後まんまと山田君の世界にドはまりしました。映画館で全集セット(全3巻)を買ってもらい、何度も何度も擦り切れるまで読んだ覚えがあります。


 その中でも、印象的なシーン(※1 15秒程度なので暇があればどうぞ)


 今年の決意を書初めする小学生たち。「仲良く」「勉強」「健康」という文字が並ぶ教室で、藤原瞳先生が子供たちに聞かれます。


 ――先生の決意は何ですか?

 ――結婚ですか?

 ――転職ですか?


 藤原先生は真剣な顔つきですらすらと決意を書いて、黒板にばーん。

 それを見た、生徒たちは思わず「おぉー」と感嘆する。


 そして一言。


 ――適当! てきとうにね。


 僕はこのシーンを見ると胸が軽くなるんです。ちょうどいいくらいで良いんだよ。頑張りすぎなくて良いんだよって、あの時先生は言ってくれていたんだ、とジーンとなります。そして、藤原先生はある意味ダメ人間でもあり、それがダブルミーニングになって笑えます。やっぱり、いい加減だなって。でも、どちらも凝り固まった肩の力をすっと抜いていってくれるんです。


 ジブリの中でもこの作品の影響は大きかった。今でも、このシーンは覚えていますから。主題歌の「ひとりぼっちはやめた」も聞いたら泣きそうになりますね。



 苦手な言葉の時は自家撞着じかどうちゃくが嫌と言ったのに今回は好き? どういうことだよって思われるかもしれません。でも、「絶対」にはもっと適当な使い方があると思います。と、てきとうに言っておきます。


 あぁ、やっぱり好きだなぁ。








 ※1 映画のトレーラー (一番最後 TVスポットBタイプ 15:50~)

 https://www.youtube.com/watch?v=-ilFHCY82p0&t=16s

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