第8回 死ぬかもしれないから、飛ぶ瞬間が好き
初めての作品「おはよう。捻挫少年」の中で、ふと長文で佐藤さんが語りだす場面があります。「飛行機が離陸する時、この飛行機が落ちるかもしれない――そう考えられるからこの瞬間が好き」と佐藤さんは言います。
みなさん小説を通して伝えたい感覚や思いがあると思います。でも、今作において、僕はそれをどうやって表現したらいいのか分からないまま、勢いで書きました。この場面で佐藤さんの人生観の一部が垣間見えるのですが、僕の感覚と非常に近いものがあります。
「おはよう。捻挫少年」の登場人物は3人しか出てきません。主人公の僕、滑って転んだOLの佐藤さん、おちゃらかし友達の鹿島。そして、全員が全員、僕の記憶の誰か、もしくは僕の想像の人物、もしくは僕そのものがごちゃ混ぜになって出来ています。この小説の中で、僕にない感覚しか持っていないキャラが動き回ることはありませんでした。この小説では、それが僕の限界でした。
でも、僕の人生観を登場人物に喋らせることは自己満足なのでは……? と感じる時があります。でも、そうしなければキャラたちは口を閉ざしてしまうんですよね。
物語の人物たちが、自律的に振る舞い、言葉を語るように感じるまでは、長い鍛錬の期間が必要だと思います。それまで、どのくらいの強さで、濃さで、思いを込めるか。
この感覚は掴めるまで、手探りでもがいていくしかないみたいですね。
同じくして、似た人生観ばかりにならないように、現実・フィクション内の色んな人物に出会って、自分の中に育てていくのが初歩でしょうか。
物語をつくるということの難しさに、少し触れた気がします。
第25話 離陸の瞬間
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888166790/episodes/1177354054888236942
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