【詩】波打際のむろみ賛歌
泣きながらテレビを見ている
いま 心に余分なものはない
波打際にただようは
うるわしき乙女かな
金色に鱗はきらめき
碧の髪梳くむろみさん
海の水にただ独り
浴みせる美わしき水の精
白くめでたき、その腕、そのうなじ
ほのぼのと月の光に泛びたり
あたかも魔法の鏡の底に見えるごとく
むろみさんの姿がまたもやわが眼に見える
萌葱色の髪の人、堤防のかたえに坐り
懐かしいその身をめぐり静けさは漂っている
吹く風の音にはあらじ
人魚らが波に歌えり
わだつみに呑まれて死にし
わが姉ら人魚となりて歌えるなり
むろみ! ここだ!
大いなる愛のこの心に来れ!
心も消ゆ、海も消ゆ、空さえも消ゆ
ただ愛のいのちのみ拡がりて
大変だ! 大変だ!
やさしき眼よ、愛のともしびよ
わが祈りを嘉したまえ!
われを死なしめよ!
かくてむろみらと、
むろみらの天の総てを、われに与えよ!
おん声よ、あやしきさまに
わが胸の地平をみだし
幻に心もそぞろ
狂おしの哀れわれかな
ああ! かくておんみのなべて
忍び寄る楽の音さては
死に絶えし天使の後光、
色どりにしてまたかおり
ことごとくわれを虜に
死にたやな、おお恋よ、汝をおびやかし
あとさきの時のけじめも踏みにじり行く
この、世離れし死に方を、死にたやな!
死にたやな、この最終話に、行きつ戻りつ、ゆられつつ!
わが悲しみの良いゆりかご
わが休息の良いおくつき
さあお別れだ、たのしい番組よ!
さようなら、を君に告げる
なつかしき人の添い慣れている
聖なる海よ、お別れだ
初めてむろみさんに僕が会った
聖なる波打際よ、お別れだ
むろみに会いさえしなかったら
僕は今こうもみじめな悲しさを
味わうこともなかったろうに
僕の心のいとしい王女よ
さあ、お別れだ――あなたにはそれが分るまい
僕が泣きながらあなたから別れるということも
ああむろみさん、神さまがいつまでも
あなたに蓮っぱさと、そして生活の悦びとをお恵みなさるように!
夏休みよ さようなら
リヴァイアさんよ さようなら
ひとりの空ではひとつの季節だけが必要だったのだ
僕はもうアニメを歌わないだろう
僕はむろみさんやリヴァイアさんを歌わないだろう
あの夏の水を祖国とよんで 旅立った友らのことを
たったひとつのアニメのために僕のこころは痛かった
おお、神よ、おんみは愛をもてわれを傷つけたまえり
やがて海上の一群に平和が来よう
この涙の海上にさまようよき一群に!
その時僕のよろこびの眼は、あたら夜の
静かに晴れた空の下に
二人の人魚の姿とも見えるなり
僕は皆を赦しています
神よ、僕をもお赦しください
ようやく正しい道に戻った
愚かな僕のために、信と希望をお与えなされ
やさしい炎に燃える眼よ、リヴァイアさんに導かれ
おお、そこに僕の手のわななくであろう手よ、おんみらに手引され
苔むす滑らかな小道であろうと、岩と小石に閉ざされた嶮岨な道であろうと
ひた向きに進みたいと、僕はひたすら願うのだ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます