第3話 裏サイド 死神Ⅲ
彼らの存在はその身が持ちうる強力な能力を用いて世界の運営を阻害するものを排除する抑止機構そのものだ。
その存在を知る人間からは世界のシステムを管理する為『管理者』などと総称されている。
そして彼らにはもう一つ特徴があり、それが『協力者』である。
効率良く世界の敵を殺すため彼らは人間に契約を交わすことにより力の一部を譲渡し『協力者』という存在に書き換える。
そして手駒として社会に溶け込ませる。
そして『管理者』の一体個体名称、<グリムリーパー>。藤原黒都は両手にパンパンに詰まったスーパーの袋を持ちながら千咲の隣を歩いていた。
「ごめんなさい。騒がせてしまったようね」
「ん?ああ。別にいいさ大したことじゃない」
「そう、ならいいのだけれど」
「それに一緒に住んでいるんだから、これぐらいは手伝って当然だ」
黒都と千咲は一緒の部屋に住んでいる。
『協力者』だからという理由もあるが、千咲のとある事情によるものもある。
しばらく歩くと黒都たちが住んでいる四階立てのマンションが見えてきた。
借りている部屋は三階なのでエレベーターで上がった。
部屋の前まで来ると千咲は学生鞄から鍵を取り出し開けて扉を開け黒都も中に入った。
部屋の中はそこそこ広い2LDK。
一先ず、買ったものをしまい黒都は自分の部屋に入る。
部屋の中はかなり簡素であり、ベットに本棚、クローゼットが一つに勉強机の上にノートパソコンが置いてあるだけだった。
リュックを机の横にかけベットに横たわる。
明日の事を考えると少し億劫になる。
(まあ、こんなどうでもいいような悩み抱えられるだけ恵まれているとも言えるか)
その時扉をノックする音が聞こえると同時に千咲の声が聞こえた。
「黒都、少しいいかしら」
――――――――――――――――――
四月十日深夜十一時半。
そこは廃れた廃工場跡だった。
辛うじて残った建物は吹きさらしで柱の所々にひびが入っている。
そんな場所に黒都――<グリムリーパー>はいた。
端がボロボロの黒いマントを羽織りフードを目深くかぶり、不気味な笑顔の意匠が掘られた白い仮面をつけていた。
その光景を見て一言。
「これは一体どういう事だ?」
赤い瞳に映っていたのは、大量の血だまりを作っている人間の死体だった。
しかもただの死体ではなく上半身がえぐられたようになくなっており、地面には同じく何かにえぐられたような放射線状の溝が出来上がっていた。
まるで巨大な掘削機でえぐられたような明らかにただの人間には不可能な現象。
グリムリーパーは周りを見回した。
辺り一帯はほぼ全壊していたからだ。
建物だったであろうものは最早瓦礫の山と化しており、あたりの地面や辛うじて残ったコンクリートの柱には鋭い傷跡が深々と残っていた。
「精霊か、同業者か、はたまた例外か」
そうは言ったものの同業者ならば同じ管理者である死神である自身がわからないはずがない。
だとすれば残る選択肢は
例外の方だった場合は自らが動く必要はないが、精霊だった場合は始末しなければならない。
「少し調べてみるか」
そう言ってグリムリーパーは霞の様に消えていた。
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