第十三病院所蔵文書:咬犬病患者611号のカルテ
咬犬病患者611号
男性 19歳 大学生
感染の経緯
当該患者が公有地である公園を通過時、野生のイヌに上腕部を襲われ負傷。地元病院の紹介により当病院に搬送された。なお、当該地域のイヌは地元住民からの抵抗はあったものの、全匹の駆除が完了している。
咬犬病の症例は1950年の予防法を境に減少し、国内では根絶されたとされてきたため、野生種のイヌから感染が確認されるのは50年ぶりとなる。
原因としては昨今のペットの密輸の増加が原因として挙げられるため、感染経路を突き止めると共に野生種への感染が拡大していないか確認する必要があると思われる。
発症後は致死率がほぼ100%であるため、洗浄後にワクチンを速やかに注射し発症を防御する必要がある。
4月7日
症状:外傷(上腕部) 多少不安感
ラビット筋注用ワクチンを注入
……
4月30日
症状:一時的な錯乱 うつ 高熱
咬犬病発症確定
ご家族には説明済
……
5月10日
症状:錯乱 うつ 高熱 恐水症状
身辺整理完了
……
5月15日
症状:全身痙攣 高熱 呼吸障害
ご家族立ち会い
5月16日5:30
永眠
<添付……当該患者の手記>
4/7
医者が入院中はひま潰しだからと日記をすすめてきた。なんでも日記を書くためにやることを見つけやすいからとか。なんか犬に噛まれただけとはいえ、妙に仰々しくて怖い。
そういえば今日は注射があった。やっぱ注射はこの年になってもあんまりいい気はしない。
病院食は味がうすい。さっさと退院して味の濃いメシ食いたい。
……
4/30
熱がおさまらない。たまに手がふるえて文字が書きづらい。医者が妙にやさしいのが逆にへんに思えてくる。
……
5/10
もじ あたま い
かけ ない いた うごけん
5/11以降
判別不能により破棄
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