第87話
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「う……」意識が戻ると波多野は激しく咳き込んだ。「ごほっ、ごほっ」
家の玄関にいた。どうして、こんなところに? 自分の身に何が起きたのか分からなかった。息子の孝行が真横で倒れていた。思わず声を掛ける。「おい」
返事はなかった。寝息を立てながら眠っていた。
体全体が酷く痛む。特に首の回りがヒリヒリと痛んだ。そこに手をやった時、やっと状況が理解できた。
助かったらしい。死ななかった。操られていた息子は呪縛が解けたのに違いなかった。いつもの見慣れた寝顔だ。起こして部屋まで連れて行ってやりたいと思ったが、体に力が入らない。酷く疲れていた。せめて毛布でも掛けてやりたいが……。
強い眠気が襲ってきた。だめだ。しなければならない事がたくさんある。まず立ち上がって--。くそっ、体を動かせない。波多野は逆らえずに目を閉じるしかなかった。一瞬、加納先生のことを思い出す。大変だ、連絡しないと--。そこで意識を失った。
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