第49話
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「黒川拓磨と話したわ」お昼休みに美術室まで足を運んで、加納久美子は安藤先生に報告した。
「どうだった?」
「……わからない。言えるのは、あの子は普通の生徒とは違うということだけ」
「あなたのことを担任教師じゃなくて、異性として見ていたでしょう?」
「え、どうして知っているの?」加納久美子は安藤先生の言葉に驚いた。
「やっぱり」
「何で知っているのよ?」
「あたしのことも、そうだったから。間違いなく性的な目で見ていたわ」安藤紫は答えた。
「黒川拓磨と話をしたの?」
「探りを入れようとしたわけじゃないのよ。あの暗い絵を返す時に彼の方から話しかけてきたの。すごく居心地が悪かった」
「あたしも、そうだった」
「彼は何かを企んでいると思う。何か、すごく自信ありげだった。あたしなんか簡単にモノに出来そうな態度なのよ。信じられる?」
「あの子は手に余りそう」
「主任の西山先生に相談したら?」
「この前だけど手塚奈々がアルバイトをしていることで、あたしに代わって彼女と話をしてもらったの。任せてほしいなんて言ったけど、上手く行かなかったみたい」
「でも主任という肩書きを持っているから、相談はしておいた方がいいと思う。もし何かあった時に、報告をしていなかったとなったら問題になるわ」
「わかった。そうする」
「ところで黒川拓磨が転校して来た理由は何だったの?」
「聞いていないわ」
「父親が去年の暮れに亡くなったから?」
「そうかもしれない」
「前の学校に電話してみたら? 無駄かもしれないけど、もしかしたら何か情報が得られるかもしれないし」
「うん。黒川拓磨の担任をしていた教師と話がしてみたい」加納久美子は言った。
「いい考えだわ」安藤紫が応えた。
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