第6話 フレンズ
「何を、言ってるんだ?」
「何度だって言うわ。アイカさんに、今火山から噴き出しているサンドスターを当てる。動物にサンドスターを当てるとどうなるかくらいあなたもわかるでしょう?」
迷いなく、自分の意見をエゾシカにぶつける。
パァン!
頬に激痛が走った。
エゾシカが私の頬に向けて平手を振りぬいていた。
が、痛いだけだ。表面的な痛みだけで、顎が外れたりなどはしていない。
してもおかしくない衝撃だったが。
「お前・・・!彼女までおもちゃにするのか!?お前あの時の人と一緒で、生きてるものを道具にして、用が済んだら捨てるのか!」
「・・・捨てたりなんかはしないわ。ただ・・・」
「ただ?なんだよ。またいつもの『助けるために』ってことか!さんざん命をもてあそんで、何を助けるってんだ!もう・・・もうほっといてくれよ!」
「イワンや他の動物たちとこれからずっといがみ合い、時に殺しあうことになっても?」
もう、決断したのだ。冷たい言葉も、非情な現実も、投げかけ、受け止める。
そして、無理やりにでも、彼女たちを仲良く過ごさせる。
共通の敵にだってなってやる。
「・・・、そんな偽物、必要ない!もういい!二度と私の前に現れるな!」
あわよくばここでエゾシカと討論し続けて黙らせてもいい、と思っていたが、エゾシカの返答はあっさりしていた。
仮設研究所から出ていく姿を見送り、うつむいてため息を漏らした。
冷静になってきた。
偽物か。
少々言い過ぎただろうか。
何とかして彼女に協力してもらった方が良かったのではないか。
彼女は、昨日も言い合いをしたのに、私にチャンスを与えに来たのではないのだろうか。
彼女・・・エゾシカは、私に何を・・・
「何を伝えたかったんですかね。」
「!?」
心を読まれた?
声の主はムササビだった。
その横に続いて・・・登録された情報通りだと、ニホンザル、ニホンノウサギ、ヒメネズミがいる。
「ごめんなさい、リセさん。エゾシカちゃんは怒ると言葉が溢れちゃってまとまらなくなっちゃうの。」
「ヒメネズミ・・・あなたが謝ることじゃないわ。それに、私も言いすぎちゃった。」
「いや、リセさんの言葉は、少なからず本心なんだってわかりましたよ。確かに後半は悪意を感じましたけど。」
ニホンザルに痛いところを突かれる。
「そんなことより、さっきの話!サンドスターの!ね、ビーちゃん!」
「ああ、そうだった。エゾシカさんはいないですけど、手伝わせてください、私たちに。」
「手伝うって、あなたたち・・・。その事に関してはエゾシカの言ってた通りよ。命への冒涜だわ。」
「ですから、そのぼうとく?に私たちも付き合わせてください。・・・私たちも、なにも言わずにいなくなったアイカさんにもう一度会いたいんです。」
「・・・。」
「ヒトがこの島でしてきた事は知ってます。でも、アイカさんは私たちを第一に考えてくれた。色々教えてもらったりもしました。だからこうして、あなたとも語り合える。」
「・・・分かった。」
無意識に右手を差し出していた。
「・・・これは?」
「アイカさんは教えてくれなかったのね。これは、お互いの手を握って、『これからは
「『友達』・・・。分かりました。よろしくお願いします。」
全員と握手を交わした。細かくは違えど、同じ方向を向いた『友達』として。
「それじゃあ、頑張りましょ。」
「『はい!』」
・・・とは言ったものの、そんなに都合よくサンドスターが飛んでくる訳はない。
念のためヒメネズミとニホンノウサギには落ちているものがないか探しに行ってもらった。
待ち続けて10分くらい経っただろうか。
森の方から影が近付いてくる。
「エイちゃん?どうしたの?そんなに急いで。」
「イワン先生に言われて・・・助けて!リセさん!エゾシカさんが!」
「エゾシカ!?」
イワン以外の、そちら側のアニマルガールからその名を聞くのは初めてだった。
「エゾシカが、どうしたの?」
「ヒトがいっぱい来て、そのヒトたちと戦ってるの!」
どういうことなのだ。ヒトが来た?戦ってる?
「ムササビちゃん!ここを少し離れるわ!エイちゃん、今すぐ案内して!」
2人は駆け出した。
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