第4話 星宮桜乃③
いつもどおりの朝が来た。
部屋に差す光で目が覚めた。
行く準備をして朝食をとり玄関を開ける。
けどそこだけは、いつもでは無かった。
「あ、おはよ。」
「お、はよ。」
目が合うと向かいの男子は挨拶を交わしてきたので思わずこっちも返してしまう。
「待ってるなんて一体どういう風の吹き回し? 」
「別に好きで待ってるわけじゃないって。」
「じゃあ何でさ? 」
「昨日は言い過ぎたから謝ろうと思って。悪かった。」
「それを言いにわざわざ待ってたの?」
「・・・悪いかよ。」
「アハハハハ!可笑しい」
「笑うとこ!?」
「まぁ私も空に言うことあったし、行きながら説明するよ。」
空と桜乃は昨日と同様横並びで登校し始めた。
お互い無言になって五分かそこらで桜乃が口を開く。
「私、主役やっぱり降りるのやめるから。」
「そりゃあ一体どういう風の吹き回しで」
「どうもこうも、空に言われぱなっしっていうのも納得いかなかっただけだし」
「俺のせいかよ! 」
「そうそう、君のせい! てなわけでこれから私、本気出すから
文化祭当日は絶対役見に来てよね! 」
「本番でコケないことを祈ってるよ。」
「誰がコケるか! 」
そんな話をしているうちに、あっという間に学校へと着いた。
「じゃあ私、朝練あるから。」
「おう。」
—―その日の放課後
この日は昨日と違って熱が入ってた。
それも星宮桜乃によって引き出された、
部員のやる気。
それでも彼女のやる気は、ほかの部員の
頭一つ抜き出ていた。
「今のところもう一度お願いします! 」
「いいけど、少し飛ばし過ぎじゃないかな? 」
私の言葉に楓先生は心配そうな表情を見せたが、
そんなもの、今はいらない。
他の部員からも私のやる気が凄いだの聞こえてくるが、
いちいち反応していられるほど、余裕はない。
私には時間が残されていないのだ。
彼女のやる気に感化されたように他の部員も
やる気が満ちている。
しかしながら場は殺気だってなどいなく、
むしろ演じるのが楽しくて仕方がないと
言わんばかりの雰囲気だ。
—―こうして怒涛の練習から、
あっという間に文化祭まで残り1カ月というところまできていた。
今日も普段通り練習を行っていたが、
問題というのは本人が気にしていない時にこそ起こるもので、
それは何の前触れもなく訪れた。
バタンッ!
その音と共に周囲の部員は一瞬反応が遅れた。
というよりも何が起きたのか理解が追いつかなかったのだ。
キャアアアアアア!
一人の女子部員が悲鳴を上げると同時に全員、
今の状況を理解する。
一早く動いたのは顧問の楓だった。
「星宮さん! しっかりして! 皆は他の先生呼んできて! それと救急車!
急いで!」
—―あれ、どうして周りが真っ暗なの?
私、練習してたはずなのに。
誰かが叫んでる声が聞こえる。
体が動かない、何が起きたんだろう。
いつしか周りの音が消え、
彼女の意識も途絶えた。
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