1章
崩される日常
──次はぁ秋葉原ぁ秋葉原ぁ。
今日も来てしまったな。全く……そろそろ定期でも買ってやろうかな。まぁたまに来るから楽しいって理由で渋ってるんだがな。
──プシュー
俺は1人、秋葉原で降りた。まぁ本当は数人で行きたいんだけど周りにフィギュア好き……というかヲタク系がいないから1人なんだよな。
俺は駅の改札を出て電気街の方に向かった。とりあえず今日はゲームセンターのクレーンゲームで取れそうな台がないかハシゴする予定だ。
……まぁ取れそうな台は制覇してしまったのだけど。はぁ、やったことの無い台でもやってみるか。
何だか急にめんどくさくなったがとりあえず駅から外に出た。すると駅前に珍しい……コスプレイヤー?が4人ぐらいいた。
特殊メイクというか……足が異様に短いのに腕が凄い厳ついな。それに武器なのかゴツゴツとした棍棒を持っているやつもいる。それでいて全員俺より身長が小さいし……何かのゲームの敵キャラなんだろうな。
俺はあまりコスプレに興味はなかったし、この敵キャラのゲームを知らないが……素直にリアルで関心していた。結構周りでも足を止めて見入っている人もいるぐらいだしな。
「わー、写真撮っていいですか?」
すると1人の女性がコスプレイヤー?集団に近ずいていった。
その時、事件がおきた。
コスプレイヤー?集団の1人が女性の頭を
握りつぶしたのだ。
辺りは騒然とはならなかった。……俺の勝手な考えだが、恐らく人間は理解できる範疇を超えてしまったらフリーズするのだろう。もしくは俺みたいに場違いな考えをするやつもいるだろう。
それにコスプレイヤー?集団に目もくれずに目当ての店やゲームセンターに行く奴らもいるからか辺りは騒然とはならなかった。
しかし、それも束の間。
「いやぁぁぁぁ!!」
……俺以外の誰かがこのおかしな自体を理解してしまったのだろう。
悲鳴を上げた。
「@adtpj6tdjwjwjwjw!!!!」
コスプレイヤー?……いや化け物から英語とか外国語とも思えない、理解できない言葉を叫ぶ。
それから時が動き出したかのように化け物は無差別に人を襲うようになった。それにどこからもなく数が増えている気がする。……最初は4人のはずだったのに……今では10……いやそれ以上はいる……!
「助けてくれぇぇぇぇぇ」
俺は他の人が襲われている中、駅の中ではなく大通りの方に逃げ出した。なぜかと言われると……まぁ直感的なやつだ。
直感が正しかったのかは分からないが、駅の方を振り返ると人で溢れかえっていて身動きが取れなくなっている。その代わり大通りの方は比較的に空いていた。
「うあぁぁぁ!! こっちにもきたぁぁぁぁ!!」
化け物は駅だけではなく俺達が逃げているのを追ってきているみたいだ。
ただ化け物は思ったより足が遅いのか、俺が一応運動部だからなのか、化け物の追っ手からは逃げ切ることが出来そうだ。
ただ大通りに出たからといって都合よく助けがある訳でもなかった。
……それどころか俺達が知っている秋葉原が崩壊していくのを目の当たりにした。
休日なら歩行者天国になっている道路も今日は平日なので関係なく車が通っている。
……いや通っていた、だ。
あの化け物に襲われたせいか車が事故を起こしていた。
例えば、急ブレーキの跡が道路にいっぱい作られているとか。
例えば、建物にぶつかったからか。車同士でぶつかったからか。車が原型をとどめないほどにスプラッタになっていたり。
例えば、ガソリンに引火したのか火災が起きていたり。
……何より死んでしまった人達を食べている緑の化け物達。
俺がよく通っていた秋葉原が地獄へと変わっていく様子をただ呆然と眺めることしか出来なくなっていた。
「@jmukvjuwmj!!!!」
「うお!」
俺が地獄へと変わっていく秋葉原を眺めていると後ろから化け物が棍棒を振り下ろしてきた。……俺が咄嗟に避けなければ危なかった。……化け物の叫び声がなかったら正直当たってたかもしれない。
すると化け物は振り下ろした棍棒をまた振り上げ、今度は縦横無尽に振り回してきた。……1回いっかいが風を切る音が聞こえる。
一撃でも当たったらヤバそうだ。
「いやぁぁぁぁ!!だれかぁぁぁぁぁ!!」
俺は化け物の攻撃を後退しながら避けていると、真横ぐらいで女の子が地を這いながら助けを求めている。
今の俺に他人を心配するほどの余裕なんて……ないんだけどなっっ!!
そう考えるが俺は女の子の方に走る。何ができるかなんて分からないがな。
「グッ!!」
縦横無尽に振り回していた化け物の棍棒が右足にかすってしまった。だが痛みはないから……致命傷ではないな。
「うおぉぉぉぉぉ!!」
俺は地を這う女の子に棍棒を振り下ろそうとしている化け物の腹に1発、全力で殴った。
これで効かなかったら俺も……笑えないな。
「@jmtk5u……」
化け物は腹を抑えて少し体勢を崩す。
「たてる!?」
俺は女の子に手を差し出す。
「……はいっ!!」
女の子は俺の手を取る。それからはただ全力で前に走った。前は店や壁がある訳ではなく、たまたま裏路地のような狭い道があったのでそこを走っていく。
別に計算して細い道に入った訳では無い。本当にたまたまだった。とはいえ細い道の方が大勢に囲まれる心配などないので不幸中の幸いではある。
車のクラッシュ音や人々の悲鳴が聞こえる。そんな中、俺達は細い裏路地を静かに歩いていた。どうやら化け物は人が多い所しかまだ居ないようだ。
……俺は女の子を助けた。まぁ下心がなかったと言えば嘘になるだろう。
それにこんな状況だからきっと誇らしいことなはずだ。
だが……ここから聞こえてくる悲鳴を聞く度に俺は、その分他人を見殺しにしたような。
……後悔とも何か違う。罪悪感からなのだろうか、何かやり切れない気持ちに蝕まれていた。
「……あのっ!」
「なっ! ……どうしたの?」
ついつい驚いてしまった。……まぁ今は仕方の無いことにしてくれ……
「その……助けてくれ……ありがとうございます。でもなんで助けてくれたんですか?」
女の子が感謝と戸惑ったような表情で俺の事を見る。
「……たまたまだよ」
別に下心がないと言ったら嘘になる。だけど……こんな時だからこそ、漫画の主人公みたいになれるかもと思ったからだ。
そんなこと恥ずかしくて言えないけど。
「……そうですか。こんな時にあれですけど……なんだか漫画みたいな人ですね」
「あっそう言えば名前言ってなかった……俺は
「あっ私は
宮良さんか……黒髪のショート系でなんだか運動部って感じだな。運動部の女子とは関わりはあるけど……こんなに整った顔の人はいないな。
「それじゃあ見上さん。 これからどうしましょうか」
「そうだね……とりあえず身を隠せそうな所とか……後は武器みたいなのが欲しいな」
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