現代に魔物……化け物が現れたら、きっと日常を破壊していくのだろう
ペグ
プロローグ
観測者と訪問者:1
自分は壁や床が真っ白で家具が気でできている…何だか神々しさが漂うアンティークな部屋にいた。
「おや? なんでここに人が? もしかして私がそっちに干渉した時にまぎれてしまったのかな? まぁいいや。
いらっしゃい訪問者君」
アンティークな部屋には肌や髪の色、服まで真っ白な女性が立っていた。
なんとも人間離れした……神々しい雰囲気があるはずなのに、どこか影が薄いような。……そんな矛盾しているような……何にも当てはまらないという印象だった。
「まぁ立ち話もなんだし座りなよ」
彼女がいつの間にか椅子を出してくれた。自分はとりあえず座ることにした。そのあとは少し喋りずらい空気が流れた。
「……訪問者君。 君はここがどこだか気にならないのかい?」
目の前の女性はこの空気に屈したのか、それともただ話したかっただけなのか。自分に問をなげかけてきた。
ただその前に礼儀上もあるし……名前を聞かないとな。
「ん? 私の名前かい? ……そうだね、神とは……違うしな。 うん、『観測者』が1番しっくりとくるかな」
名前と言えるのか分からないがとりあえず自分の名前も教えないと……あれ?自分の名前は?……不思議になってさらに質問した。
「君の名前かい? んー、教えてもいいんだけどね。面白くないから教えない」
見る人を魅了させるようなイタズラっぽい笑顔だった。何だか名前を忘れるなんてやばい状況なんだけど……それすらどうでもいいなと思えるような気にさせられた。
「とは言え呼び名がないと不便だね。うん。君は『訪問者』って呼ぶよ」
さっきもそういうふうに自分のことを呼んでいた気がしていたけど。それより自分は忘れるが『観測者』ってニックネームだろうけど本当の名前はなんだろう。
「名前かい? 名前ってそれは……私には必要ないからね。
なぜって?だって君たちが住んでいる地球を外側から観測しているのは私だけだからね。 同個体が私以外いないから名前を付ける意味はないからね」
『観測者』は得意そうな顔で説明する。ただ自分にとってはなんとも釈然としない答えだった。
しかし、同個体がいないと言ったが……『観測者』の姿は人間……人類そのものに見えた。
「ん? 見た目なんて当てにならないよ。……でも見た目が似ているってことは認めるかな。だってこの体は君たちをモチーフに作っているからね。
……なら本来の姿はって?それはもう忘れたよ。だってこの姿に変えてからもう何十年と過ぎてるからね。……まぁどうでもいいの事だけどね」
自分の中で納得出来ない所はあるが……まぁ飲み込むしかないのだろう。
そう言えばここってどこなんだろうか?出入口のトビラなども見当たらない。
「あぁ、そう言えばせっかくお客さんが来たのにお茶を出してなかったね」
そう言うと『観測者』は指パッチンをした。すると何も無い所からマグカップを出した。……中には紅茶も入っていた。淹れたてだと感じさせる湯気を上げている。……まるで魔法みたいだ。
「私がマジシャンだって?あれはあれで凄いけどそんなんじゃないよ。なら魔法使いなのかって?そんなのはいないよ。……なら神様なのかって?うーん……まぁそれに似たような感じだよ」
『観測者』からは煮え切らない答えしか帰ってこなかった。そう言えばどうして自分はここにいるんだろう。
「おぉ、やっとその話題に触れたんだね。ここは何を隠そう……月だよ」
……そんな突拍子のないことを言われてもな。窓から宇宙とか地球とか見えたりしたら話は別かもしれないが。……さすがにそんな話を信じるほど純粋さもないし。そこまでバカではないはずだ。
「まぁそうなるよね。でもこれは真実だから『訪問者』君が信じようが信じまいが変わらないんだけどね」
そう言うと『観測者』はケタケタと笑った。……なんだか独特な喋り方だし……面白い人だな。
「まぁここが月だよって証明できるけど……ちょっとめんどくさいし……それより私は人間と初めて対話するんだ。少しは私の話を聞いてくれよ」
初めてって大袈裟だな……もしかしてボッチだったのかな?まぁ何にせよ話を聞くぐらいなら全然構わないけど。
「なら聞いてくれよ。実はな、私。最近君たちの地球に少しだけ干渉出来るようになったんだ」
『観測者』は身振り手振りと演劇のように語りかけてくる。
「まぁその結果、君がここに来たんだけどね。でもこうして私は楽しいし、好都合なんだけどね」
そう言って『観測者』はまたケタケタと笑った。まるで何かイタズラに成功した時の子供のようだった。
「それでな。私は1つ面白いゲームを考えたんだ」
そう言うと『観測者』はまた指パッチンをした。するとテーブルにとてもリアルな地球儀とクリスマスツリーの下に置いてあるプレゼントボックスのようなものを何も無い所から出した。
「昔の世界って結構見ていて面白かったんだけどさ。今ってだいぶ停滞……というか面白さが無くなったからね。だから私からプレゼントを渡すことにしたんだ」
『観測者』は言い終わるのと同時にプレゼントボックスが開いた。随分と凝ってる演出だな。……なんだろう?中にはゲームの敵キャラのような人形が溢れんばかりにあるな。……一つひとつ形が少し違う気がするけど。それにしても随分とリアルに出来ているな。
「私は彼ら?彼女ら?そこまで精密に作ってないけど。こいつらを地球にプレゼントするんだ」
……そうするとどうなるんだ?別に人形が降ってきても……まぁこんな不気味な人形が降ってきたら驚きはするだろうけど。
「違うよ。私がそんな面白くないことするわけないでしょう。私は彼らを生物……敵としてプレゼントするんだ」
そんなことしたら……まるでRPGみたいじゃないか。
「そうそう。つまりこれで面白いものが見えるでしょ」
『観測者』はニヤニヤと笑いながら、リアルな地球儀にリアルな人形を一気にグッと押し込んだ。何だか悪魔のような笑顔に見えた。
しかし、なんで人形が地球儀の中に人形が吸い込まれるように全て消えていった。……本当に不思議だ。
「さて……これでどうなるのかな。面白くなればいいんだけどね」
そっか……ちょっと楽しそうだけどな。まぁ出来ないんだったら仕方が無いな。
……でもゲームみたいなら何か財宝とか手に入るのかな?
「そうだね……強いて言うなら。達成感かな」
それだけなのか。
「だってゲームの中で金銀財宝を手に入れてもリアルでは何も手に入らないでしょ?」
言われればそうなんだが……なんとも寂しいな。
「まぁ君を除けば強制参加みたいなものだからね。それよりそろそろ始まるかな?そうだね……君は日本出身なの?ならそこを映してあげるよ」
『観測者』は指パッチンをすると目の前にSF映画に出てきそうな未来的なスクリーンが現れた。
そのスクリーンには秋葉原が映っていた。
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