第10章  二人のバラガキ

114  二人のバラガキⅠ

 翌週のとある平日の昼――――



「おい……なんで貴様がまたここにいる?」



「あん? 別にいいだろ? そんなに俺の事が嫌いか?」



「嫌いだ。貴様みたいな自由人など俺は一緒にいるだけで虫気が走る」



 デミトロフは再び食堂で相席になったハウロックを見て、嫌そうな顔をしていた。



「それよりもお前が稼いだ金、俺に半分よこせ! あれは見物料として俺が半分、エミリーが半分ずついただく。相当な額を稼いでいたんだろ?」



「嫌だね。あれは俺が稼いだ金だ。お前が商売下手だから金が獲れなかったんだろ? そもそも金持ちが平民にたかるなよ」



 ハウロックは、パクパクと料理を平らげて、食器を山のように積んでいた。



「そもそも、商売というのは美味しいネタがあってからこそ儲かるものだ。自分の目と耳、全ての五感を感じ取ってからこそ、基礎から始めるのがいいんだよ」



「お前の場合は地獄耳だろうが‼ そんなのがあったら今頃、俺もお前以上に稼いでいる」



「言うねぇ。ボンボン坊ちゃん」



「喧嘩売ってんのか、貴様?」



「何のことだか?」



「今度は貴様に俺の錬金術でボコボコにしてやろうか? そうだなぁ、全治一ヶ月くらいはどうだ?」



「おもしれぇ‼ なら、俺はお前を氷漬けにしてやる!」



 二人は笑顔で言っているが、言っている言葉が笑っているとは思えないほどの無いようである。



 二人の間で静かに食べているエミリーは、黙々と何も反応せずに食べ続ける。



「じゃあ、今からやるか? どうせ、午後の授業など秀才にとっては予習などしているのだろ?」



「ああ、もちろん。俺には抜け目などない。魔法と錬金術の差を見せてやろう」



 エミリーは徐々に苛々してきて、頭に血が上ると、



 ダンッ!



 と、テーブルを思いっきり叩いて、立ち上がった。



「ジョン。うるさいですよ‼ 喧嘩するなら外でやってきて下さい!」



 エミリーはデミトロフを睨みつける。



「す、すまない……」



 デミトロフは、しゅんとなり、静かに椅子に座る。

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